2025年5月30日
【万博カタール館のご紹介】 今回は、建築家・隈研吾さんが手がけた「カタール館」をご紹介します。 このパビリオンは、カタールの伝統的な帆船「ダウ船」と、日本の伝統的な指物技術からインスピレーションを得て設計されたものであると、万博協会の公式案内にも記されています。とくに木工技術がどのように生かされているのかに注目しながら見学しました。 順番待ちの間は、大きな帆の内部で過ごすことができ、陽ざしや雨を避けられるよう工夫されていて、設計の配慮が感じられました。 外装には、国産スギの羽目板が使われており、他のパビリオンに多く見られる簡素で仮設的な造りとは異なり、非常に丁寧かつ緻密に施工されています。「突きつけ」ではなく、本実(ほんざね)加工された羽目板を使用し、しかも小節のない無地材が用いられており、質の高さが際立っていました。 塗装は施工後に行われたようで、ビスの頭にも塗料がしっかり塗られていました。スギ材の貼り方にも工夫があり、ブロック単位でパターンを変え、色も3色使い分けられていて、全体としてとても洗練されたデザインに仕上がっています。 鉄骨の継ぎ目など一部の仮設部分はあえて露出させており、これがかえってコストダウンとデザイン性の両立につながっていると感じました。 このような国産スギの使い方は、今後の都市建築や商業施設にも広がっていくのではないでしょうか。上質で温かみがあり、とても魅力的です。
2025年5月24日
今回は、ドイツ館をご紹介します。 ドイツパビリオンのテーマは「循環経済(サーキュラーエコノミー)」です。 外観には「わ!」という文字が大きく掲げられていますが、これは「輪(わ)」=循環の輪、「和(わ)」=調和、「わっ!」=驚きや感動という、三つの意味を込めた表現です。 館内を実際に訪れてみると、コンセプトがよく反映されており、展示内容も工夫に富み、非常に興味深く見学できました。 入館の際は、日本の樹木や草花が並ぶ小径を通って進みます。順番を待つ間も、緑に囲まれた空間が心地よく、来場者の気分を和らげてくれます。 設置された樹木には「レンタルです」と記された樹名板が添えられており、仮設でありながらも丁寧な管理が行われていることが伺えました。 建物は、円形の木造建築が7棟並ぶ独特の構成で、レストランも併設されています。敷地奥には、曲線を描くウッドデッキが樹木の間を縫うように配置されており、来場者の動線にも配慮された設計となっています。 使用されている木材は、ドイツ国内産のCLT材、日本産の杉、合板など多様であり、木材の国際的な活用を象徴しています。設計は、ドイツの建築設計事務所「LAVA」によるものです。 特筆すべきは、この建物が万博閉幕後に解体され、その木材を他の場所で再利用する計画があるという点です。 単に建てて壊す「使い捨て」ではなく、素材を循環させるという姿勢は、まさにテーマに即した取り組みであり、深い感銘を受けました。 建物内部は自然光の取り入れが巧みで、随所に大きな開口部や吹き抜けが設けられています。 日中は人工照明に頼らずとも十分に明るく、環境負荷への配慮が建築面にも反映されています。 展示の中でも印象的だったのは、「サーキュラーと私」と題された体験型エリアです。 ゆっくりと回転する円形スペースに座り、頭上に設置された360度の大型スクリーンに映し出される映像を鑑賞します。 森林を駆け抜けたり、未来都市で資源がリサイクルされる様子が映し出されるなど、臨場感のある映像と音響によって、まるで別世界を旅しているような没入感を味わえました。 順路の終盤では、木材を活用した什器や装飾を見ることができます。特に印象的だったのは、斜めに設置された重そうなディスプレイが、細い木材で組まれていたことです。構造上の安全性は十分に確保されていると思われますが、その繊細な見た目には驚かされました。 屋外の庭では、曲線を活かしたボードウォークが設けられ、自然との一体感が演出されています。ただし、この部分はあくまで仮設構造であり、本格的なウッドデッキとは異なる短期使用を前提とした設計です。 最後に、出口近くの階段(鉄骨と木材の複合構造)を下りると、イベントが開催されていました。内容は英語でのトークセッションで、環境分野に関わる3名による対話が行われていました。時間帯によっては、音楽やパフォーマンスなども実施されているようです。 このように、ドイツ館は一般の来場者が見学することで、環境への意識が高まり、また木材という素材の価値を再認識できる、大変優れたパビリオンであると感じました。
2025年5月21日
【大阪・関西万博 木の建築めぐり】 大阪・関西万博では、木材がさまざまな場面で多用されています。木に関わる仕事をしている人間としては、1970年の万博と比べても、まるで夢のような光景です。 会場へはすでに何度も訪れていますが、行くたびに心が高ぶります。 このページでは、私が訪問した各国のパビリオンや構造物などを、写真アルバムのように少しずつ紹介していきたいと思います。 今回は「ポーランド館」をご紹介します。 建物は、オーストリア館のように遠目でも目を引くデザイン。近づいてみると、無数の小さな木片が組み合わされた外装になっており、圧倒されます。 ファサードのデザインコンセプトは、日本の高品質な木工技術を活かし、日本の伝統に敬意を表すこと。また、木材は再生可能で、従来の建材よりもカーボンフットプリントが少ないことから、未来の建築材料としての可能性も表現しています。 さらに注目すべきは、使用されている木材がなんと国産のスギであること。これは、ポーランドで製造・輸送するよりも、日本国内で調達したほうが環境負荷が少ないという理由から、現地調達にこだわったそうです。 併設のレストランでもランチをいただきましたが、木をうまく活用した心地よい空間でした。 https://wood.jp/12-product/expo70wood/expo2025.html
2025年5月7日
フェイスブック担当者が8日間のスペイン旅行に行ってきました。今回はマドリッドとバルセロナを中心に、トレド、ジローナ、フィゲラスにも足を伸ばし、各地の文化や建築、美術に触れる充実した時間を過ごしました。 特に、マドリッド王立植物園とバルセロナ植物園では、さまざまな樹木の写真やデータを収集してきました。街の建物に目を向けると、各ビルが他と差別化された個性的なデザインを持っており、オリジナリティを重視している印象を受けました。費用はかかるものの、それが街全体の魅力につながっているようです。 木製品の使用状況については、他のヨーロッパの都市と比較して少ないと予想していましたが、日本と比べればはるかに多用されていると感じました。ただし、仕上げや作りは全体的にラフな印象で、日本のような精密な造作とは異なります。やはり、日本の職人技術は世界一で、コストや生産効率の面でも際立っていると再確認しました。 今回の写真は、バルセロナで宿泊したホテルの1階にあるイタリアンレストランです。全面ガラス張りの内装に木材が大胆に使われており、独特な雰囲気を醸し出していました。ただ、ガラスに接着剤で貼り付けられた小さな板は少しぐらついていて、ちょっと心配になる部分もありました。
2025年5月30日
前回万博を訪問した際、ぜひ見たいと思っていたパビリオンのひとつがカタール館でした。隈研吾さんが手がけた建物ということもありますが、三角帆の木造帆船「ダウ船」のイメージが、木材の使い方にどう反映されているのかに興味があったからです。 順番待ちの列に並んですぐに帆の中に入ることができ、太陽の強い光を避けることができました。建物の外壁はスギ材で覆われており、木材業界でいう「羽目板」が使われています。他のパビリオンとは異なり、非常に緻密に、まるで日本的な几帳面さで貼りつけられていました。 単に板を突き合わせていく「突きつけ」ではなく、「本実加工」と呼ばれる施工方法が使われており、これはオス実(凸側)とメス実(凹側)に分かれた板を組み合わせて固定する方法です。しかも使われているスギ材は、節のない「無地材」。かなり厳選された材料であることがわかります。施工後に塗装されたように見えました。 スギの貼り方にも変化があり、塗装も単色ではなく微妙に異なる色合いが施されていて、全体としてのデザインがとてもすばらしいと感じました。建物の外壁としては相当の費用がかかったのではないかと思われます。 なお、鉄骨の継ぎ目などはあえて露出させていますが、この方がコストを抑えられるうえ、全体の見た目のバランスとしても、むしろ好印象を与える仕上がりになっていると感じました。
2025年5月26日
前回も書きましたが、万博の魅力のひとつに「建物」があります。この建物、何度見ても本当に面白い。これまで見たことのない、不思議なデザインです。スピーカーと壁が一体化したような形で、内部の音楽の低音が外に漏れ出し、壁が音に合わせて振動しています。 何度か予約を試みましたが、すべて落選。やはり人気が高いようです。 これはシグネチャーパビリオンのひとつ、「null2(ヌルヌル)」という名前だそうです。 私は趣味で木や木材に関するデータベースを作っていますが、その中で「null」という命令文をよく使います。意味は「データが存在しない」・「未設定」といったものです。 それに「2」がついているこの名前、「null null」という意味なのか、「nullの2乗」なのか……私にはわかりません。 今日も午後から会場を訪問しますが、この館には今回も入れそうにありません。
2025年5月25日
何度か万博を訪れましたが、その魅力のひとつは建物の「面白さ」にあると感じています。1970年の大阪万博や花博と比べると、建築のあり方が大きく変わってきました。 これまでの建物は、「見せる部分」と「見せてはいけない部分」を分けていました。しかし筋交や取付金物が露出していたり、あえて壁を設けず、天井裏をそのまま見せる設計にするなど、従来の常識にとらわれないスタイルです。また天井板を省略したり、2階の床が天井を兼ねていて、配管、配線が見えていたりするパピリオンもあります。 これは建物の構造や材料、解体方法に至るまで、環境への負荷を最小限に抑える工夫のひとつでしょう。 最も安価な国産スギ(節あり材)があちらこちらで利用されています。口の悪い人は仮設ハウスと言うかもしれませんが、それなりにうまく仕上がっていて、なによりあたたかく、やさしく感じます。 とくに木材の利用が大きく前面に出ている点は、業界にとって嬉しい変化です。ようやく「木」の総合的な価値が社会的に認められたと感じています。 建築の作り方も半年程度の仮設的なスパンを前提としており、「強度や用途が満たされれば外観にはこだわらない」という合理的な考え方が主流です。これは、日本建築の丁寧な造作と、アメリカのツーバイフォー住宅の違いにも通じるものがあります。完璧さを求めないぶん、コストも抑えられているようです。 とはいえ、どのパビリオンも個性的なデザインを追求しており、ユニークな仕上がりになっている点は見ごたえがあります。 写真は、いくつかある木造建築のひとつ、ドイツ館。館の構造材から館内の展示什器、屋外のガーデンに至るまで、ふんだんに木材が使われていました。 ホームページに多くの写真を入れています。 https://wood.jp/12-product/expo2025/germany.html
2025年5月23日
場所を知ると、この写真がただの風景でないことに驚かれるはずです。 昨日も半日、万博会場を歩きました。木造リングを半周して、改めてそのスケールと美しさに感動しました。昼でも夜でも圧倒される迫力。上にあるトイレは、国産杉の香りが漂い、とても清潔。各国パビリオンの個性的なデザインを上から眺められるのもまた格別です。 さて、この写真。地上の風景に見えますが、実はここ、地上12メートルにある木造リングの上なのです。このエリアではリングが2層構造になっており、さらに高い部分はなんと地上20メートル! 芝生も本物で、柔らかくて葉が長く、思わず寝転びたくなる心地よさ。実際、多くの人が横になって空を見上げていました。 万博会場に行かれたら、ぜひこの「空中の庭園」にも足を運んでみてください。
2025年5月21日
前回はイタリア館でランチをいただきました。 このパビリオン、最初は鉄骨にCLTなどの木材を取り付けた構造かと思っていたのですが、なんと純粋な木造3階建てで、驚きました。 3階がレストランになっており、室内と屋外の両方で食事が楽しめます。室内には天井がなく、木材の構造がそのまま見える設計。筋交いや、柱と梁をつなぐ火打材までもが意匠として堂々と露出されていました。 添付の写真は階段の様子です。木造建築の構造がよく分かると思います。ただ、階段だけは鉄骨製で、それもまた興味深いポイントでした。 この3階から1階までの階段、建築関係や木材関係の方はぜひ通ってもらいたいです。というのは1階の天井裏の構造がそのまま見えるからです。今までこんなにオープンな建物はなかったですね。 これからは、このような構造と意匠を兼ねた木造建築が増えていくのかもしれません。何といっても、鉄骨やコンクリートに比べてコストが抑えられるのが大きな利点です。 当社の紹介ページに掲載しています: https://wood.jp/12-product/expo2025/Italy.html それにしても——ランチで16,000円はやはり高めですね。料理は美味しかったのですが、ワインは正直ふつうでした。
2025年5月19日
前回万博に行った際、コモンズA館に入りました。そこにはエスワティニ王国というアフリカの国があり、案内看板には同国の位置が赤丸で示されていました。思わず日本人の女性スタッフに「あの地図、間違っていませんか?」と声をかけてしまいました。正確な位置は覚えていなかったものの、エスワティニは南アフリカの上にあり、内陸の国で海に面していないことは知っていたからです。すると、スタッフの方も「ええ、そうですね。もう少し内陸寄りです」との返事。それならどうして修正しないのかとも思いましたが、帰宅後に改めて調べてみると、地図上で丸印を付けると、確かにその位置になることが分かりました。仕方ないか、というのがその時の感想です。 では、どうしてエスワティニを知っていたのかというと、私のホームページ「木の情報発信基地」で樹木や木材を描いた世界の切手を掲載しているからです。エスワティニは2018年までスワジランド王国と呼ばれており、切手にも反映されているように、多くの有用材があり、木材も輸出しています。どんな切手か気になる方はこちらをご覧ください(エスワティニの切手 https://wood.jp/11-design/stamps/swaziland.htm )。この切手収集のおかげで、国旗や各国のことにも自然と興味を持つようになりました。
2025年5月16日
昨日は6回目の万博訪問、9時からの入場です。オーストラリア、インド、ウズベキスタン、イタリア館でランチ、ハンガリー、マルタ、バーレーン、フィリピン、マレーシアの各館を廻りました。歩き過ぎてマレーシア館でまさかの両足が揃ってツって(コムラガエリ)しまい、館員や同行者に迷惑をかけてしまいました。 写真はバーレーンで木造四階建てです。交易船を模したデザインで複雑な木組みで組んでいます。また柱が微妙に傾けてあります。とにかく木にこだわった建物で階段手摺やカーテンレールまで木製です。
2025年5月12日
今日は2025大阪・関西万博記念国際フォーラムに参加しています。といっても、万博の木製リングやパビリオンに使われているSGEC/PEFC森林認証材についての報告や議論を聞くだけなんですが。 そのあとは、インドネシア駐在時代の先輩や友人と、何十年ぶりかに再会する予定です。楽しみ! 写真は、マドリッド植物園で撮った“ユダの木”こと“愛の木”。遠くから見ると、ちょっと桜みたいに見えませんか?
2025年5月7日
今回のスペイン旅行は、所属する大阪木材工場団地の恒例事業に参加したものです。フリーの2日間を利用して、マドリッド王立植物園とバルセロナ植物園を訪れました。 多くの方からご心配いただいた大停電についてですが、ホテルやレストラン、ショップなどに影響がありました。特に危うかったのは、マドリッドからバルセロナへの高速鉄道で、到着直後に停電が発生したことです。もし少しでも到着が遅れていれば、線路上を歩くことになっていたかもしれません。 今回の旅を通じて、多くのことを学びました。街並みや建築デザイン、美術館での写真撮影、植物園の人気と構成、木材の使い方、人々の気質、そして自分の体力など、どれも新たな発見がありました。何度もバルセロナを訪れる人がいるのも納得です。 写真はダリ美術館の中庭にて。