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近代住宅は健康を破壊している

ハウスメーカーの住宅は健康を蝕んでいる

●利益追求の住宅産業  「資本主義社会だから、金儲けのために商品をつくり、売る」というのがこれまでの 発想の基本でした。今もこの立場からの企業活動が大勢を占めています。
 戦後に急成長した企業のほとんどはこのような姿勢だったと言っていいでしょうし、 戦後の新興企業もまた同じでした。その中にあって、日本に生まれた特異な業種がハウスメーカーでした。
   家づくりの企業だけをとれば、世界的にも珍しいことではないでしょうが、日本の場 合は、戦後復興の柱のひとつとして都市部の焼け跡をはじめとして、大量の住まいをつ くるという課題がありました。
 その歴史的事情を利用し、行政の強力なバックアップを得て生まれたのが新興ハウス メーカーで、いつのまにか住宅産業という業種がつくられました。
 そして、1990年代に至るまで、「この産業にはまだまだ美味しいところがある」と言 って新規の住宅メーカーの誕生や異業種からの参入が相次ぎました。新規参入を含めたこれらの住宅産業界を構成する企業のほとんどは、生活者が求めて いる、良質で適切な価格の住まいを提供するという社会的使命よりも、金儲けの対象と しての住宅づくりであったことは明らかです。
 1960年代に入っての新設住宅着工数の急増は著しいものがあり、68年には120万戸 を突破し、80年代後半には160万戸を、90年には170万戸台を記録しています。この急増した新築住宅着工数の大部分は、大手を中心とするハウスメーカーによるも のでした。
ハウスメーカーの進出は、従来からの地域に根づいた家づくりをしてきた大 工・工務店の仕事も奪い、大工職人が年々減少する原因ともなりました。
工務店は、経 営を苦しくして廃業を余儀なくされたり、路線転換で、メーカーの系列下に入ったり、 下請業化するところも数知れずありました。
 こうして家づくりは、住宅産業化を中心に作り変えられ、行政が強烈にハウスメーカ ーを後押しし、メーカーに有利な規制を強め、地場産業を押し潰そうとしたのです。
●ハウスメーカーによる家づくりの変化 建てる家から買う住宅へ  ハウスメーカーの進出によって、日本の家づくりがどのように変わってきたかを見れ ば、否応なしに「住宅」と呼ばれるものの問題点が見えてきます。
 第1の変化は、建てる家から買う住宅になったことです。
 本誌第18号特集Ⅱ「誰のため誰が家をつくるか」で示したように、住宅産業の主 役はハウスメーカーであり、住宅は商品として買う消耗品とされたのです。
 どの商品がよいかを競うためにモデルハウスが宣伝され、住宅展示場で品比べをして 買う商品を決めるというケースが増えました。
 ハウスメーカーの洋風住宅が宣伝され、木の家は古くさいと意識づけられた人たちが オシャレな住宅にあこがれを持ち、新婚夫婦をはじめ、こぞって商品選びに熱をあげた のが高度経済成長期以降の一般的な姿となったのです。
 家づくりから、商品としての住宅を買う時代になると、そこには施主と建て方という 関係は生まれませんから、施主の要求や希望が生かされることがなくなります。
その要 求を通そうとすると高額なオプション価格を突きつけられるか、「それは出来ません」 と断られるかになります。
 最近は、個別の注文住宅も増えてきていますが、その場合でも、ハウスメーカーを決 めれば、どのタイプを選ぶかが基本で、間取りや材料の選択肢は限られたものになり、 建て売りよりも高額になるのが通例です。
 これが、住宅産業が進出したことによる最大の変化です。
 商品であっても、中身さえ良ければ多少は納得できるでしょうが、以前にも書いたよ うに、商品は買った時から年月とともに劣化するのが常識ですから、木の家のように、 住む人とともに成長するということはないと考えなければなりません。
 商品としての住宅を買うということが広がれば、当然のこととして、地場での家づく りが減少し、技術と技術者が押し除けられることになってしまいます。
 ハウスメーカーの台頭と勢力の拡大は、日本の伝統技術を衰退させ、木の家づくりを 押し潰す狙いがあったのです。
軸組真壁から大壁へ  第2の変化は、軸組み真壁から、パネル化をはじめとする大壁化へという構法が主流 となったことです。
 大壁化によって施工が簡単になり、木組みなどの技術が不要になりました。
従来、家 の質を示すひとつの指標であり、構造の要であった柱や梁が、壁の中に隠されることに なるとともに、耐力構造の中心が壁に移され、柱類の低質化が広がったのです。
 これまでのような、大地に直結した柱の構造材としての役割りを薄められると、融通 の効かない壁に耐力構造を任せるために、基礎はコンクリートのベタ基礎と布基礎にし なければならず、建築基準法でこれを法制化したのです。
 ベタ基礎、布基礎の問題は改めて論ずる予定ですが、大地に根づいた柱立てという日 本の伝統であった建築様式が拒否され、建物が箱のような器の建築物になってしまいま した。
これは、土の力、大地のエネルギーの拒絶でもあったのです。
 また、大壁化することで発生したのが結露の問題で、見えない躯体の腐朽を早め、地 震等の災害時には予想外の被害を見ることになります。
 この大壁構法が、高気密・高断熱化を抱き合わせで普及させたことも見逃すことがで きません。
また、これによって従来からの柱間が問われなくなり、畳の大きさに合わせ た部屋づくりも考えなくてもよいようになりました。
まさに、二重三重の意味で和風住 宅を排斥する内容を持っていたと言えるのです。
内装の様変り  第3の変化は、大壁化や高気密・高断熱とも深い関連を持った内装の様変わりです。
 土壁の上の化粧塗りや板、化粧合板の壁面に変わって、コンクリートやパネルの上に 化粧をすることが主流になり、クロスや塩ビシートが主材料になりました。土や木は、自然の風合いを持っていますから、化粧や塗装をしても、そのままでもよ かったのですが、クロスやシートが使われるようになるとデザインが問われるようにな ります。
 カラーコーディネートが強調されるようになった背景もここにあるのですが、建材類 も含めてカラー化が強まります。
そのカラー化も、素材が見分けられないような厚いコ ーティング塗装まで出てきますから、化学塗料が室内に塗られたようになってきます。
 欧米のようにペンキを塗りたくるようなものではないにしても、人工的な塗料で室内 をカラーコーディネートするようになったのも大きな特色です。
現場加工から部材の規格化へ  第4の変化は、部材の規格化です。
   木造住宅のように、現場で削ったり切ったりすることが必要でない規格化された部材 を組み立てることで、省施工とコスト削減に貢献することになります。
 ハウスメーカーの住宅が、いくつかの基本パターンに定められているのも、構法の画 一化と部材の規格化があるからです。
 規格化された部材は、鉱業資材をもとに工場で安価に大量生産が可能ですから、メー カーの利益率を一層高めることに貢献することになります。
 アルミや鋼材、樹脂類などがその主なもので、これらを使うことによって、より高気 密を実現できることにもなったのです。
 手工業的な技能も要求されなければ、狂いや割れ、収縮の可能性を持つ木材や土を使 う必要もないということで、ハウスメーカーと行政の洋風化の意図が、この面でも浸透 することになったのです。
●短命の商品化住宅  日本らしい木の家が、戦後の洋風住宅に取って替わられたことによる主な変化をあげ てみました。
 これらは、変化と言うよりも、住宅の洋風化を押しすすめ、ハウスメーカーや関連メ ーカーの利益追求のために仕組まれたものということができます。
 それは同時に、木の家づくりの思想を否定するとともに、主材料である木材を供出す る林業や木材業を衰退させ、地場の家づくりの担い手たちを干上がらせることで、日本 の住文化を喪失させ、日本のこころを見失わせるための変化でもあったのです。
 ここには、家を求める人々の気配りもなければ、住む人への思いやりもありませんで した。
 いかにカッコ良くて、買い意欲をそそることができるか、いかに利益をあげることが できるかということが出発点にあったにすぎません。
 それをなしとげるために、販売価格の3分の1以上を宣伝費や営業費などの間接経費 に使い、それでもなお空前の利益をあげていたのです。
 実態は、どれほどの低コストで仕上がっていたかは容易に想像のつくことです。まさ しく騙されていたと言っても過言ではないでしょう。
善意の購入者の願いを逆手に取り 民族性を売り渡すものと言うべき内容がここに潜んでいるのです。
 最近のハウスメーカーは、いろいろ欠点を繕って装いを考えたり、材料を「木質系」 に変えたり、注文住宅に力を入れるなどはしているようですが、基本姿勢が変わったわ けではありません。
 なぜかと言えば、依然として家づくりの主人公も家の主人公もつくり手であるメーカ ーにあるからですし、利益主義と洋風化の推進が基調にあるからです。
 買う人、住む人を主人公にできない住宅は、売り手の思惑でつくられるという無責任 さがつきまといます。
 その端的な例が、性能保証や瑕疵担保などの保証期間を持てば良いとするところにあ ります。それは、日本の住宅が平均26年の耐用年数であり、プレハブ住宅の平均耐用年 数が15年前後とされているところに表われています。
人生80年時代に3回以上、住宅 を買わされる計算ですが、ローン期間は30~35年です。この不合理性は何と説明すれば いいのでしょうか。
 ハウスメーカー批判で少し横道に外れましたが、住む人を主人公に考えない住宅が生 んだものこそが健康破壊であることは、疑う余地もありません。
 当初は、高気密・高断熱や無機質材が健康破壊につながると考えた人は少なかったか もしれませんが、それが、健康を保たせてくれた木の家に伝承される日本の伝統、日本 らしさを否定するものであることは、少なからずの人たちに理解されていたはずです。
 しかし、これほどまでにシックハウス症候群が急増し、社会問題になることは想像外 だったかもしれません。それよりも、後に健康被害が生ずることは考えもしなかったか 無視したかだったのかもしれません。
●健康破壊の住宅は許されない  本特集の前稿で述べた通り、戦後の洋風化された住まいが、健康破壊の重大な原因の ひとつであることは否定しようもありません。
 まして、安らぎと英気を養い、健康を育てるべき所である住まいが、逆に健康を破壊 しているのですから、これは重大な犯罪行為です。
 ハウスメーカーの誕生と住宅の産業化によってもたらされた変化を見れば、この住宅 こそが健康破壊住宅と言うべき代物であるはずです。
 資本主義発展の中には、国民・消費者を欺いた商品がゴマンとあります。危険を承知 で売りつけるものや、後の危険を顧見ずに販売するもの、厚生労働省や農林水産省とグ ルになって安全を言うものなど数え出せばキリがありません。
 これが利益主義の姿なのですが、もっとも高い買い物である住宅もまた住み手の願い を欺いているのです。
   中には良心的な家づくりをしている中小のハウスメーカーがあるにしても、家づくり の原点は、施主の要望と条件に基づいて設計され、材料が選択されることから始められ るものです。
初めにモデルパターンがあり、材料選択の余地のないもので、買わされる に等しい住宅は、問題ありと考えるべきでしょう。
 まして、高気密・高断熱を標榜し、大壁構法を取り入れた住宅は、日本の伝統技法を 拒否しているというだけでなく、日本の気候風土や日本らしい生活習慣を考慮したもの ではないと言えるでしょう。
 ハウスメーカーの進出によって持ち込まれた変化こそが、自然と断絶することで、自 然のエネルギーを遮断して免疫力や抵抗力を弱め、気密化した室内での化学物質やプラ スイオン、電磁波による被害を大きくするものだったのです。
 住宅の洋風化を先導し、住宅を商品化したハウスメーカーの住宅そのものが健康を蝕 むものでした。
 戦後の発展につれて、一人ひとりが自然のエネルギーを得て保っている免疫力や抵抗 力、自己治癒力が低下したことで脆弱化し、病気にかかりやすく、治りにくい体質にな ったのです。
 特に自律神経の不調がもたらす現代病などの病気、内臓疾患、皮膚疾患の増加、難病 奇病の増加は、現代社会が生んだものと言えます。  その大きな一因に、洋風化された住宅があり、ハウスメーカーがそれを主導してきた ことは厳しく問われなければならないはずです。
 健康被害を少なくすることで言われる「健康住宅」などではなく、健康を育てる家づ くりこそが求められているのです。
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