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木を生かす木を育てる

ユニークな木構造施設


●木構造で11m四方の空間をつくる 

次に「現代軸組架構ゾーン」であるが、ここでの構造の最大のポイントは、本瓦葺屋根(平方m当り180㎏)の荷重を柱なしで11mの大空間のスパンをとばしていることにある。
説明が行われている時は、ところどころに管柱が立ち、11m四方の無柱空間を見る感じはなかったが、そこにミソがあった。
見学会の途中で、全員2階に上がるようにとの要請があり、九坪もない2階に約70人が昇り、実大荷重実験となった。
ところどころ2階部分を支えるように立てられていた4本の仮設柱が大工さん達のカケヤで取り外された。
すると2階を支えているはずの部屋内に1本だけの独立柱が宙に浮いたように、土台との間に数㎜の隙間をつくっている。
支柱を外す前から比べると約1㎜下がってはいるが、依然として浮いた状態のままであった。
70人以上が昇っても約1㎜しか下がらずに隙間をつくらせているところに、この建物の綾がある。
つまり、2階床以上の水平・鉛直構面を全て一体化させて、桁上部分の2階・屋根全体が巨大な立体構造の梁となって1階外壁周辺部の柱へ荷重を伝達しているのであった。
前述の柱が宙に浮いたままになっているのは、計算上あの柱あたりでたわみが約0.9㎝程度予測されたので、建方時に2階梁及び床へ逆にたわみ程度のむくりをつけておいたためであった。
田原さんは、これについて「鉄骨でしか出来ないのではなく、木造でも構造設計をきちんとやればスパン12mでも可能であることを学んでほしい」と語る。
鉄骨ではこの建物の意味がなくなるということと、伝統素材の特性を考え、木の組み合わせを中心にしてこそ意味があるとの考えがあった。
一般の木造建築物ように、鉛直荷重を支持する「柱・梁」、地震・風に抵抗する「壁」で構成されているのではなく、柱・梁・壁・床・屋根を一体化し、鉛直荷重に風・地震荷重も建物外周に力を伝え流す構造と考え、この構造体がつくられているところに特徴がある。
「大空間がとれたのは、2階の外壁が梁(階高約3m約梁成)になっているから11mのスパンが可能になった。
また外周の耐力壁に力を流すための水平構面が特に重要となり、2階床においては居室・物置でない範囲にも床をはり、屋根面と共同で、力を流すための水平的ブリッジの役割を担っている」と田原さんは言う。
また難しくなったので、田原さんの「現代軸組架構ゾーン」の構造説明を引用させてもらう。


長期荷重に対して… 「本瓦葺の屋根荷重(平方m当り180㎏)でスパン約11mの大空間を構成する為に単純計算すると、米松では梁幅150㎜、梁成1000㎜以上の断面がとなるが現実的ではない。
しかし鉄骨梁を組み込むのであれば、隣接する「伝統架構ゾーン」との取り合いや基本計画とした意味がなくなる。
そこで本建物の一部には2階が配置されており、その2階の外壁を耐力壁とすると同時に腰壁・垂壁を利用した合成梁を構成した。
その為、X・Y方向とも階高分の梁成(約3M)となり、近畿大学理工学部村上雅英助教授の『せん断パネル理論』を参考に構造解析をし、各応力度とも十分安全であることが確認された。
なお、計算値によるたわみはスパン中央部でX・Y方向とも最大値約0.9㎝程度であり、品確法レベルで検討した場合でも最高レベルをはるかにしのぐ性能があると思われる」 (図4) 水平荷重に対して…(壁量、許容応力度計算は伝統架構ゾーンと同じ) 「屋根の野地板による水平構面と1階軒桁レベルの水平構面をフランジとし、小屋裏内の耐力壁をウェッブとしてダイヤフラム構造となっている。
屋根が一体化されているので、1階の外壁耐力壁への力が均等に伝達されるシステムとなっている」●随所に耐力をつくる工夫 ついでに耐力壁については、次のように説明されている。
「本建物は構造用合板(t=12)+CN65@75の両面貼で構成されており、この仕様は通常の仕様の1.5倍程度の性能がある。
また、本建物の構造性能は、Co=0.35の性能を持ち合わせており、学会等による論文では構造用合板の靭性率は通常の仕様で4.0程度あり、Dsに換算すると0.3~0.35は見込める。
その為、大地震時における保有耐力の検討は不要と判断した」ということであった。
この他にも面白いところがある。
伝統工法の一つにある「三手先(社寺建築にて、軒先で庇の出を深くするための木組)」がオリジナルとなっている跳ね出しの階段踊り場や、面格子を梁のウェッブ材とした3角形の合成梁や、素人には見抜けないような力学工夫が随所にあるようである。
(写真2/写真3)

写真2

写真3 
使用されている材料は、土佐材を中心に、土台=桧12㎝角、大黒柱=桧末口45㎝径、小黒柱=桧末口25㎝径、管柱=桧・杉12㎝角、立体格子=南部赤松12角柱、6×12㎝貫、梁=杉・米松12×12~30㎝、南部赤松末口27㎝径タイコ落とし、耐力壁=構造用合板2級特類・t12(F1)、水平構面=構造用合板2級特類・t15(F1)、接合金物=Zマーク金物・Dボルト等となっている。
なお、施設の完成は3月で、新学期から使用できるようにと完成が急がれている。
伝統工法に現代軸組工法を加わえ、構造的にも高い評価が与えられるであろう「日本文化館」がどのような装いで完成するのか楽しみである。

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