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各地に広がる木の家づくり

施主との信頼関係での家づくり

●施主との信頼関係での家づくり 加古川市の再生民家の見学会で同席した姫路市の森田務さん(㈱マコト建築事務所) から、「見てもらえると思う家がもうすぐできるので」との電話を受けたのは昨年9月 頃だった。
ところが、完成が少し遅れて、11月になったからというので、行ったのは11月も終 り頃だった。
姫路市かと思っていたら、森田さんが連れて行ってくれたのは揖保郡の御津町新舞子 だった。
  着くと施主のIさんが待っていてくれた。
新築間もないので、順番に荷物を入れ、住 みはじめたところだという。
松材はIさんの要望なのか、森田さんのこだわりなのか、この家には松が随分使われ ている。
磨丸太が立つポーチから玄関に入ると、式台も上り框も、階段と階段脇の箱棚もコエ 松で、廊下にはコエ松の縁甲板と言った具合に松づくしの出迎えである。
入ってすぐに応接室で、Iさん、森田さんと談笑する。
聞けばIさんは、舞子館という料理旅館をはじめ、喫茶&ファミリーパブなどいくつ かを経営しており、Iさんの関係する建物は、みな森田さんの手によるものという。
長い付き合いだから、しっかりとした信頼関係が築き上げられた上での今回の家づく りであった。
だから、Iさんは格別に注文らしきものは出しておらず、骨太の家でムク の木を使ってほしいことしか言っていないという。

言わなくても、「森田さんなら、高級感のある良い家をつくってくれるだろう」と信 じていたというIさんの表情には満足さが出ている。
それでも敢えて完成した家の感想を聞くと、「スッキリ仕上がっていて満足している よく近辺で見られるクロス貼りではない本物だから、飽きがこないだろう」とのことだ った。
施主とつくり手が、お互いの気心を知り、信頼関係が打ちたてられての家づくりだか ら、余分な神経は使わなくても良いようだが、それだけに責任を持って100%期待に応 えなければならないという思いも強くなる。

森田さんは、Iさん夫婦と息子さん夫婦、その子供たちが、和を育てられる住みやす く、住みがいのある家をということと、木を存分に使った骨太の家ということを主眼に した図面を完成させ、それから材料探しに入った。
材料の選定は、他人任せには出来ないのですべて自分で行った。
近隣の木を使うということで、氷上郡の製材所へ何回も足を運び材の選定をした。
構 造材は主に檜の柱、松の梁を、造作用には杉の赤味材を、床用にはコエ松を主に、腰壁 用には檜の羽目板、天井用には杉の天井板と檜の羽目板を中心に揃えた。
考えあぐねた 大黒柱には、近くで世界の樹木にこだわりを持って扱っている㈱イケモクで探し出した ニューケヤキを採用した。

この中でも、骨太で、力のある家をつくるための梁には特に想いを込め、12.5mの地 松を探してきて、東西に通している。
この梁は、森田さんのこの家づくりの象徴のよう である。
天井を貼っているので梁を中心にした木組みが見られず残念がると、森田さん は用意してくれていた写真を見せてくれた。
●心を和ませる木肌の暖色 森田さんは、22才の時から建築の仕事に入り、店舗関係や住宅を手がけてきたが、 鉄骨やプレハブがかったものでは得心できず、木造住宅を主にやるようになったという。

チェーン店でネットワークを広げている自動車部品店も半ば専属でやっていたが、 守備範囲の広がりもあり、それもやめたと笑っている。
だが、その分仕事量は減るこ とになる。
それに、まだ多くの施主は、工業資材を使った洋風系の家への幻想を持っているこ ともあって、本当は自らが満足できる家をつくることは少なかったと振り返える。
それだけにIさん宅への力の入れようは特別で、材の選定に、これまでにない苦労 をした上で、工務店、大工をはじめ、左官やすべての職人を自分で手配し、監理した という。
家を見ると、よく脂の乗ったコエ松につつまれた玄関まわりからコエ松縁甲板の廊 下が伸び、左側には客をもてなす応接室とくつろぎの居間、廊下中程の右側には内玄 関を設けている。
廊下突き当たりに浴室と便所があって、その左に台所、10帖の寝室 へとつながっている。
その寝室に接してもう1ヵ所便所がある。
Iさんが「夜中に起 きても、すぐ横に便所があるのが一番気に入っている」といって満足している間取り である。
廊下奥の右の10帖は、床の間と仏壇が置かれた和室で、縁側がついている。
床も天井もムクの板を主に使い、玄関の天井だけは杉の網代を貼ってある。
壁面に は檜の腰板を廻して、その上はワラ入りのジュラク塗壁で統一している。
1階が主にIさん夫婦用で、コエ松集成の階段を上った2階は、息子さん夫婦と子供 の生活の場となっている。

2階にも台所と10帖の居間・食堂があり、居間に続く和室がある。
2階の廊下の突き 当たりにもある洗面所と便所を挟んで、左に子供部屋、右に若夫婦の寝室がある。
2階の室内壁面には、檜の羽目板を腰に廻し、上部には、若夫婦の希望でクロスが貼 られているが、Iさんは「感性の違いだから仕方がない」と笑ってみせた。
外へ廻ると、外壁は檜の羽目板を貼りめぐらせ、軒下部分は漆喰壁を塗っていて、離 れて見てもしっかりした木造の佇まいである。
森田さんが、もうひと工夫したのが中庭のようである。
以前からあった庭を生かしな がら手を加え、家の中と外との一体感をつくり出している。
応接間と居間、寝室が中庭 を取り囲むように設計され、さらに、内玄関の前にも庭をつくり、奥の和室とつながら せている。
木につつまれた室内でくつろぎながら、中庭を見て季節を感じられるように との心配りが窺える。

全体がコエ松の暖色をベースにした木の配色で、やわらかく包まれるようである。
木 肌に体全体が接している感じは、自ずと心を和ませてくれる。
これだけ木をたくさん使っていながら、木が競合しているところはなく、特別に木が個 性を主張するでもなく、調和しながらメリハリが効いている。
これをIさんが「スッキ リ仕上っている」と表現したのだろう。
「家をつくった」という感慨を持つに足りる木の家は、間違いなく住みがいのある家 で訪れる人も多くなりそうであった。

蛇足ながら、帰り道にあるというので㈱イケモクに立ち寄り、池上静夫さんに展示ル ームと奥の貯木展示場を案内してもらった。
さすがに〝世界の樹木〟と銘打つだけのこ とはあって、見とれさせてくれた。


株式会社 マコト建築事務所

 

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