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木の住まいが育てる日本の文化

日本のこころの通底に流れるもの

   日本のこころの通底に流れるものは、森の民らしい森林調和的な性格と農耕民族としての自然親和・共生的な性格がひとつの柱です。
そして、もうひとつの柱がこれと深く関わりながら、縄文以前からの高度な宇宙観・自然観による精神文化です。
これに、30万年前に多民族の融合によって形成されてひとつに調和された融合性が加わります。
この3つの性格が折り混ざり、日本の気候・風土、自然環境の中でつくりあげられたのが日本のこころと言えるもので、日本らしさ、日本人らしさという民族性を表わしているのです。
日本のこころの中でもっとも強く影響を及ぼしているのが、本誌特集Ⅰで見た上古代からの精神性と、数万年にわたる森林生活からの森林的性格・思考とが結びついて生まれたものです。
それは、①宇宙・自然と人間を一体としてとらえ、宇宙の法則と自然の摂理に従う ②人間も動植物もみな自然が生んだものとして、自然を尊い、自然に畏敬し、感謝する ③森林・自然と共生して生きることで、多種多様な事象を多種多様と認めて受け容れる ④すべては神で、神を尊い、感謝して、物欲よりも精神性を大切にする、という性格を持つことになります。
そこから、和す、共生する、節約する、分け合うという文化の基調と精神がつくられ、真面目、互恵、誠実、素朴さが育てられてきます。
やがて農耕民族としての性格が加わると、①実りを与えてくれる5穀と自然の神仏への感謝と祈りを強め、四季(自然の循環)に応じた生活と生産を基本にする ②実りをもたらす太陽と水を尊崇し、収穫にいそしみ、自然への感謝を強める、という性格を加えるようになります。
ここから勤勉、責任感、互助の精神がつくられることになります。
これらが総合して日本の民族性がつくられてきたのです。
そのほかに、宇宙・自然の調和を認めたところからの美の意識、森林・自然との生活の中から得る感性の高さがあげられます。
「八」を基本にした調和と美意識、花や虫、自然の移ろいへの感性などは、他民族をはるかに凌ぐ例と言えるものです。
大地に根づく柱立ての思想
 こうした民族性を通底に持って形成されてきたのが日本の文化です。
そしてその中でも際だっているのが木の文化であり、住まいだと言えるでしょう。
日本民族は、長い森林生活で得た、樹木からの数限りない賜り物に感謝すると同時に木という植物・素材の生かし方に長けていたと言えるでしょう。
木は、葉っぱや皮、枝まで含めて、社会と生活のあらゆるところで使われてきましたが、その中心にあったのは住まいです。
家をつくるに当たって、もっとも大切にしたことは骨組みであり、その中心となる大黒柱・通し柱でした。
縄文の時代の遺構を見ると、それは太いクリの木が主でした。
後にはヒノキが主になっていきますが、大地に直結した掘っ立て柱を中心に据えて家をつくるという思想は一貫していました。
前稿で中村昌生さんの言葉を引用ているように、自然石を置いても、それに合わせて柱底をひかりつけて立てています。
柱を中心に家をたてる思想こそが日本の家づくりの基調となるもので、大地にしっかりと根をおろし、自然に支えられて生きるという民族性を表わしています。
木組みの技術も、柱を中心に建てるところから生まれてくるもので、クギや接合金物のない時代だからこそ生まれた、先人の知恵と技術の結晶と言えるものです。
木の強さや荷重を巧みに利用して自然の力に馴染ませ、楔で締めるだけで、嵐や地震にも倒れず、しないで耐えて、力を逃がす工法をつくりあげています。
これが縄文時代から現代に至るまでいかなる型をつくり上げようが受け継がれている木の家の思想です。
それは、社寺建築はもちろん、寝殿造りや書院造りでも、町家や民家でもそうですし、数寄屋造りは言うまでもありません。
大地に根付いた木組みの家づくりこそ、日本の住まいの文化、木の文化の極地とも言えるものです。
柱は家の命ですから、日本の家づくりは、決して柱を隠すつくり方をせず、柱間を大切にした真壁構法をとっています。
床も天井も壁面も、この軸組みに基づいてつくられ、取り付けられていますが、そこでも主役となっているのが木(木材)です。
木とともに使われたのが、壁面の土壁です。
土の持つ吸湿性や断熱性、大地との共生による効力を十分承知していたものと思われます。
宇宙のエネルギーが木を育てる
 家づくりの主体となったのは、何といっても柱をはじめとする木材でした。
その木組みの家の特長は、自然の風の通りを良くし、自然の光と明り自然の香り〝ゆらぎ〟を取り入れることを前提とした自然との共生でした。
そしてその地域の自然環境に適応するように雨戸や外戸、天窓、庇の長さ等が考慮されています。
床下は十分に開けて、風の通りを良くするだけでなく、焚木などの保管・乾燥場所としても使われていました。
庶民の家は、古い民家に見るように、天井を張らずに小屋組みにして、熱や煙を逃がし、その一部を「あまや(天屋)」と呼ばれる物置きスペースにしたりしています。
すべてにおいて貫かれている思想が自然との共生であり、自然の循環・四季に応じて生きるという住まい方でした。
間の取り方は、多くの場合玄関から土間・三和土があって、家族が集う場と客をもてなす場がつくられています。
家族の和を育て、人との結びつきを大切にする精神がここにあります。
このような日本の精神を育て、文化を育てる上で、木の果たした役割は限りないものがあります。
もともと森の中での生活で、木のエネルギーを身体いっぱいに得て暮らしていた民族ですから、木の力を現代人よりはるかに強く知っていたと思われます。
漢字で休むは、人が木に寄り添う様を表わしています。
木がマイナスイオンや芳香性を発散して心身をリフレッシュしてくれることはこれまでにも触れていますが、木にはもっと多くの働き、力があります。
今でも、年輩の人達からよく聞くのは「疲れたら木に寄り添え」というだけでなく「木から力をもらいなさい」というような言葉です。
それは、木が放つ「気」をもらいなさいという意味です。
木は「気」に通ずるのですが、木に近づいて、幹から10㎝ほどのところで手の掌をかざして目を閉じ、呼吸を鎮めて手に神経を集中させると、木からピリピリと伝わってくるものがあります。
それが木の「気」の一種です。
この「気」は朝の方が強く感ずることができるのですが、マイナスイオンも朝の放散が多いと言いますから、木のエネルギーは全体に朝に多く放散し、日中は、大気の乱れや汚れを吸収することに忙しいのかもしれません。
木が持っているすばらしいエネルギーというのは、木が百年前後もの間、太陽エネルギーと水はもちろ、〝ゆらぎ〟をはじめ、宇宙の無限のエネルギーを得て育っているからです。
決して陽と水だけで育っているのではないのです。
宇宙空間のエネルギーについては、現代科学はまだほんの一部しか理解していないのですが、振動波が高くて現代人の振動波では共鳴できず、現代科学も探知しきれない波動エネルギーが無数にあることが、サイ科学の研究者その他から報告されています。
それによれば地球の五十億人の意識波動は1055HZ程度とされるのに対し、宇宙空間を飛び交う波動エネルギーは1010憶HZまでのマクロ、ミクロの波動1065万種類の組み合わせで成り立っているといいます。
現代人が感知できないだけで、木はこの中から多くの宇宙エネルギーを得て育っているのです。
それが木を育て、木の力となって人間の存在と成長の糧となっているのです。
木が発する無限のエネルギーに生かされる
本誌第11号で触れたように、地球の歴史四十五億年の究極の植物として木が生まれ、木が人類の誕生を準備してくれたというところから考えれば、木が人間に与えてくれる力は、科学で論ずるところをはるかに超えているのです。
し かも、木は切られてから材料として使われても、そのエネルギーを失ってはいないのです。
ヒノキが切られてから200~300年間にますます強くなり、切られた時の強度にもどるのに千年以上を要するというのは、そのひとつの証明でもあるのです。
日本の家が木でつくられるようになったのは、決して偶然ではなく、上古代から縄文時代に素晴らしい感性を持ち、今よりもはるかに高い意識波動を持ち、宇宙の波動エネルギーと交信していた日本人の祖先からの伝承なのです。
森に住み、木の家に住み、自然と共生していた日本人の感性・感受性が、石の文化をつくってきた西洋人とは全然違うのは、暮らしてきた環境の違いによるものと言えますし、扱ったり、接しているのが木であるか、石であるかの違いも作用しているのです。
木につつまれた暮らしでどんな恵みが得られるかを考えると、まずあげられるのが、自然と調和した住まい方です。
自然の風や光などを取り入れた住まいは、住まい方もそれに調和したものとなり、自然のエネルギーで癒され、活力を得られ、豊かな感性を育て、新しい文化を生むことになるのです。
〝ゆらぎ〟やマイナスイオンの力を得られるだけではなく、視聴覚神経の安らぎ、質感の温もりなどからの心地良さ、木肌の色合いの波動がもたらす情緒などをあげることができます。
これに、先に述べたように、百年前後もの間の成長の力となった数知れぬ宇宙エネルギーが住空間をつつんでくれています。
言葉では言い表わせられない感性や感受性を育て、快眠をよび、疲れをとり、英気を与えてくれるのは、こうした木から発せられるエネルギーによるものと考えるしかないのです。
世のため人のために木の家づくりを
 日本民族は、家づくりに代表される木の文化をつくり、その木の家の力によって、さらに新しい文化をつくってきたのです。
和の心が室町時代に成熟した不均斉、簡素、幽玄、自然(じねん)、静寂に代表されるものであることは、本誌第3号の特集の中の「住まいの文化と日本のこころを探る」の中で書いていますが、その素は上古代に始まっているのです。
五七調、和歌などは上古代に始まるものですし、宇宙と調和した美意識や生活観などを底流に持ち、木につつまれた暮らしの中から日本の文化をつくりあげてきたことを、歴史の中から学びとることができます。
単なる暮らしの器のような扱いを受けているのが昨今の多くの家ですが、家の役割は果てしなく大きいものであること。
そして、それが木の家だったからこそ日本のこころを育て、日本の文化を育ててきたことを改めて学びとることが大切な時なのです。
木の家づくりに携わる人たちが、ここに確信を持って、より大きく木の家づくりを押しすすめ、生活者にも働きかけることが求められています。
木の家を、日本中にいっぱい造ることが、日本の山を育て、地場の産業を発展させるというだけでなく、日本のこころを育て、日本の文化を育て、21世紀の日本の時代をつくる力になるということ、世のため人のために大いに役立つ仕事であることに確信を持ってほしいと願っています。
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