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各地に広がる木の家づくり

家族型グループホームをつくる  

~いつまでも家族が一緒に暮らせる家を~

大阪市/材寄建築設計室・材寄法子

●住みつづけられる家づくり

大阪府豊中市に木造住宅が建てられ、9月29日に住宅見学会が行われたのでさっそく伺ってみた。ハウスメーカーの家が数多く見られる静かな住宅地の中で、木を使った姿は目を引くものだった。設計に当たったのは、材寄建築設計室の材寄法子さん。施主は材寄さんの兄妹で、親から受け継いだ自宅を建て替え、兄を中心に家族5人で住む計画となっている。「家族が年をとっても一緒に暮らしていける、家族型のグループホームを目指しています」と材寄さんは話す。自然素材を使い、人に優しい家をテーマに、バリアフリーを取り入れ、先を見据え長く住むことを前提として家は出来上がった。

1、2階は、木造在来工法による木造住宅、車庫と地下室はRC造となっている。北側に玄関を配置、廊下を挟んで南側に部屋が配置されているので、各部屋とも光がたくさん入るつくりとなっている。建て替える以前の家は、南側の敷地いっぱいに家は建っており、部屋の仕切も多かったため、昼間でも暗かったので、今回は南側の敷地に余裕を持たせて、昼間は電気をつけないですむ家にした。昼間に電気をつけないことは当たり前のことだけれど、日本の住宅事情では当たり前ではないことも多い。電気をつけないことで、エネルギーを使用しないことになり環境負荷を減らすことができる。人に易しい家をつくると、自ずと自然にも負荷の少ない家になる。

1階にはリビング、キッチン、お兄さんの部屋、和室と、トイレ、風呂などの水廻りが置かれている。居間は吹き抜けになっていて、大きく取られた窓と共に開放感のあるスペースである。和室の襖を開けると居間に続き、玄関、キッチン、リビング、和室のスペースが20畳ほどのワンフロアーとなる。2階は妹さんの部屋、2人の子供部屋、洋室がひとつある。子供部屋は仕切りが引き戸になっていて、開けるとひとつの大きな部屋として使用できる。生活形態に合わせ柔軟に変更ができると同時に、なるべく人との触れ合いがあるつくりを目指している。

北側に設けられているロフトにはハイサイドライトのルーバーが設けられており、光と風を取り入れられ、南側の窓と共に風の通りを良くしている。地下には車庫と、部屋がひとつ。まだどのように使うかは考えていないが、留学生を受け入れたり、もしくは事務所にしたりと活用方法に夢が膨らむ。
●納得のいく材料を使う自然素材を使い、体にも易しい住宅を目指し、至るところにたくさんの無垢の木が使用されている。床・腰板には、中国産のナラを使用。1階居間部分は床暖房を設置しているが、しっかりと乾燥させ含水率を落としているので、大きく狂うことはないという。天井には吉野のスギの長押の切り落としを使用している。これは、吉野へ見に行ったら、切り落としたものが山になって積まれていたのを見て、使用することを思いついて安く手に入れることができた材だという。今回は山にまで実際に材を見に行き、直に確めて入手した材を使用している。今までも山まで見に行ったことはあるが、実際に使うまでには至らなかった。「顔をあわせて実際に会って話をすれば、いい材料も手に入ります。また、掘り出し物もみつかります」と材寄さんは言う。構造材には、土台・柱にヒノキ、梁に米マツを使用している。
 
壁は、使用後、廃棄しても土に戻るものや、木のチップが原料の壁紙、珪藻土、シナベニヤを、デザインと使用用途に応じて使い分けている。また、犬を飼っていることもあり、デザインも考えて腰板を張っている。土台、大引き、根太には、備長炭で作られた"備長くろべえ"という塗料が塗られている。これは材寄さんたち自身で塗った。床下の一部分には炭も入れられ、自然素材を用いて、調湿・防腐などを行い、癒しを育ててくれる。2階の床は全くの無塗装である。材寄さんは住みながら、住んだ人自身が手を入れ塗料を塗りたければ塗ればいいと考えている。建てただけで完成するものではない。住む人がその場所を自分なりの空間に仕上げていくのが家だとの考えである。

ホームエレベーターを取り付け、地下の車庫から1階2階へと上がることができたり、部屋の仕切りの段差をつくらないなど、バリアフリー住宅となっている。これは建て替える前の家で、脳こうそくで倒れた母親を9年間介護した経験から取り入れられた。部屋の仕切りや窓は可能な限り引き戸にし、戸袋に収納することで、開口部を大きく取れるようにしている。風と光をたくさん取り入れ、家族が触れ合うことのできる家となっている。長い間木の勉強をして、今までも、木を使ってはきたが、ここまで全面的に使用したのは初めてだという。「木をたくさん使いたいという想いがあっても、施主の木を使うことへの不安や好みなどから、なかなか使うことができませんでした。今回、自分たちの家ですので、ふんだんに木を使用しました。今後、自分で住んで、経年変化をじっくりと観察し、これから家を建てる人の木に対する不安をなくしていきたい」と材寄さんは語る。木に対して関心が高まり、木の家に住みたいという人が増えてきたが、大きな広がりはこれからのようだ。しかし、設計者自らこのような家を建てることで、この家を通じて、木の良さ、木の家づくりがさらに広がりそうである。住宅地に建つ木の家の姿を見ていると、木の家の新しい広がりを感じられるものだった。

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