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スギ材を生かすための挑戦

木材の燃焼ガスの可能性
 ~防虫・防カビ・防腐効果の期待 木材が熱分解される過程で生成される熱分解生成物は多種多様で、おそらく数百種類にのぼるとされています。
これらの熱分解生成物がまさに一大化学プラントのように、水蒸気、炭素ガス、一酸化炭素、メタン、エタン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フェノール類、ポリフェノール類などと一緒になって200℃以内の熱的雰囲気の中で混在しているのが燃焼ガスの状態です。
  燻煙熱処理過程における燃焼ガスの雰囲気では、処理される木材の成分とこれらの混合ガス成分間でいろいろな反応が物理的、化学的に起きているはずです。
  木地師の間では昔から、サクラを燻すにはサクラの木で、ケヤキはケヤキでと言われており、燃焼ガスの大切さが言われていますが、この点での科学的研究は今後の課題と思われます。
  燻煙熱処理材では、防虫・防腐・防カビ効果が実証されています。
この点については燻らせた結果で、嗅いが消えれば効果はなくなるとの指摘もありますが、現実には、使用されている燻煙熱処理材では腐朽菌、カビの発生は見られませんし、防虫効果も働いていますので嗅いだけの問題ではないようです。
  これまでは、木材の防腐、防カビ、防虫効果をあげるために、種々の化学処理が施されてきました。
  また、木材の寸法を安定させるために、木材の持つ水の吸放出を押える方法がとられています。
木材の各成分に存在する水酸基(-OH)に水がくっつかないようにするため、無水酢酸やホルムアルデヒドなどの薬剤を用いて、木材中の水酸基を他の基に置き換えるアセチル化処理やホルマール化処理が行われています。
  水酸基のHがアセチル基(CH3CO)に置き換えらえることによって、水との水素結合が起こらなくなります。
  もうひとつの方法は、水酸基のそばに水が近寄らないように前もってフェノール(C6H5OH)のような物質を木材の細胞内腔に充填してしまう方法です。
WPCなどは、この方法で作られています。
  これらの方法は水の吸放出による木材の寸法変化を防ぎ、同時に防腐・防カビ・防虫効果も持っています。
  それは、虫たちの腸の中に住んでいる原虫が、アセチル基のくっついた成分を分解できなくなって死んでしまうことになるからです。
そうすると、原虫が分解した生成分を栄養源にしているシロアリは、これを吸収できなくなって栄養失調で死ぬことになり、結果として防虫処理につながることになります。
腐朽やカビの発生も腐朽菌やカビの分解作用に基づくものですから、同じような理屈で防腐、防カビ効果が得られることになります。
  そこで改めて燻煙熱処理による効力を考えてみます。
別表(表1)の燃焼ガスに含まれる化学成分を見れば、アセチル化やホルマール化、WPC化に必要なすべての成分が含まれていることがわかります。
これらの成分と木材が、燃焼ガス中で気相反応を起こし、自然に化学処理が行われると考えられます。
  その結果、燻煙熱処理材は、寸法安定性が向上するとともに、防虫・防腐・防カビの効果が期待されることになります。
工業的に行われる化学処理やWPCは、処理薬剤の後処理や廃棄の際に多くの問題を持っていますが、燻煙熱処理によって行われる場合、単一の機能面から見れば工業製品より劣るとしても、生物材料としての人間生理との整合性から見ればマルチ効果を持つと言えるでしょう。
  さらに、後処理や廃棄の問題、再利用の面から考えれば、コストパフォーマンスもはるかに優れています。
  この科学的裏付けの研究も進行中で、その結果が期待以上のものとなりそうであり、大いに注目しています。

● 木材の燻煙熱処理過程で生ずる化学変化
  冒頭でふれたように、木材の欠点とされる反りや狂い、割れの原因は木が成長していく過程で形成される成長応力です。
自然の風や雪などの外力から自己を守るために樹幹内に貯えられた抵抗力であり、自重を支えるための力でもありますが、伐採され、製材されるとその応力が解放されて反りや狂いとなって出てきます。
  この成長応力は、樹種や地域(気候・立地条件などの生育環境)さらには成長の度合、樹形、支持根の状態などによって差が生まれます。
  同一樹種では、幹の外周部の成長応力の大きさはほぼ同一といわれていますので、直径の小さい丸太ほど製材した時の狂いは大きくなります。
  成長応力が発生するメカニズムはいろいろ考えられていますが、そのひとつは、個々の細胞での内部応力の発生原因となる細胞壁のセルロース・ミクロフィプリル(電子顕微鏡で糸状の形態として見られるセルロース分子の集合単位の正確な表現。
本稿では以降セルロースと表現)の傾きによって生ずる歪みと、このセルロースの形を固定するリグリンが沈着することでの歪みの固定によるものです。
もうひとつは、細胞の膨圧も含めた含水率の樹幹内の分布変動によるもので、このふたつが重要と考えられます。
  成長応力は、これら1個1個の細胞の歪みが組織全体の歪みとして加算され、樹木全体の内部応力を形成します。
そのため、本来、このふたつの要素は別々のものではなく、成長応力に対して相互的に影響し合うと考えられますので、どちらか一方を取り除いても不十分なものとなります。
燻煙熱処理による成長応力の軽減と寸法安定化
  従来の人工乾燥では、とりあえず含水率の軽減だけを目的としてきましたが、成長応力を生み出している木材中の細胞壁内のセルロースとリグリン、そしてこのふたつの接合役を担うヘミセルロースによって作り出された細胞壁の歪みの緩和、あるいは除去に対しては、人工乾燥スケジュールの温度域ではあまり効果はありませんでした。
 細胞壁や細胞間層に存在するリグニンの乾燥状態での熱による軟化点は134~235℃ですが、湿潤状態では77~108℃に低下すると言われています。
セルロースは乾燥状態で231~253℃、湿潤状態で222~250℃とほとんど差がありません。
  生材丸太の燻煙熱処理は、材温80~100℃の間で40~80時間処理されます。
材中温度が上がってくると、熱によって木材中の水の分子運動も激しくなり、自由水とともに各成分にくっついていた結合水の一部も動き出します。
水が水蒸気になって体積が増えるために膨張し、細胞も膨らんできます。
  この間にリグニンとヘミセルロースの一部は十分な湿潤状態で熱軟化を起こし、細胞壁が動きやすくなります。
  その結果、細胞壁中のセルロースに生じていた歪みを固定するリグニンの拘束は取り除かれるか緩和するかし、個々の細胞に固定されていた歪みが減少します。
この結果、木材全体の成長応力に基づく変形は軽減されることになります。
  丸太を縦割りにした際の外側に反る量は、燻煙熱処理材では無処理材の半分以下となり、製材後の反りを修正するための2度挽きの手間も大幅に軽減され、歩留りの向上につながることになり加工工程の減少も可能にします。
  実際の実験結果によっても、含水率の違う丸太を燻煙熱処理した場合、含水率の高い生材ほど効果が高く、逆に含水率の低い丸太では、リグニン、ヘミセルロースの熱軟化が十分行われず、応力の解放効果が少ないことが示されており、湿潤状態であるほど効果が高いことが証明されています。
  また、木材の成分の中で20~30%を占めるヘミセルロースは熱に弱く、特に水熱反応で分解されやすいため、かなりの部分が水と一緒に溶け出すことになります。
そのため、細胞壁内の成分構成や構造に変化が生じます。
各細胞は軟化した状態で膨張し、押し合いへし合いしている内に、満員電車の中でのように納まるところへ納まり、結果として個々の細胞の歪みが均一に近づくことになります。
そして、ヘミセルロースが減少した分、水の吸着点も減少し、繊維飽和点も下がり、木材の寸法安定性も向上することになります。
  また、各細胞が膨張する過程で、細胞相互の通導組織である膜孔膜は、水熱と膨張によって熱分解してしまうか破壊され、細胞相互の水の過透性も向上すると思われます。
それは、膜孔膜を構成している主な成分はヘミセルロースと言われているからです。
このことは、燻煙熱処理材の方が、水の吸放出の機能が無処理材に比べて大きい割には寸法が安定していることに結びつくことになります。

燻煙熱処理へのいくつかの疑問について
   
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