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巻頭言

健康を破壊する家、育てる家 

  

20世紀の脅威的発展は、言い知れぬ豊かさをもたらしてくれました。

  

贅沢に慣れるとそれが当たり前の日常にまってしまいます。有り余る物質的な豊かさだけでなく、便利さや快適さを享受でき、遠隔操作で離れていても家電製品が働きます。ロボットをはじめコンピューターが代わりに働いてさえくれます。情報は溢れ、24時間、瞬時に好きな情報を取り出すこともできます。家に居ながらお金を動かすことも、物を買うこともできる時代です。
文明の発達は、競って時間と距離を短縮し、社会生活のサイクルは、めまぐるしいほど早くなっています。
20世紀の発展は、物質的な豊かさとスピード化という面を持っていたようですが、豊かさと便利さを追求し、スピード化を追及すると本来の人間の機能では、調整が効かなくなってしまう面があります。
そこに同時に持ち込まれたのが、快適さの追求と裏腹に、自然との断絶、環境汚染、健康破壊などの数々の弊害と危機です。
危機の進行は、社会と社会制度全般にわたっており、肥大化した経済も、腐朽を強める政治と行政も、抜き差しならぬ危機に直面しながら、引き返すことも、方向転換することもできず、直線的に破滅に向かって突き進んでいるのが今の姿です。
支配勢力が、もがきながら打ち出す対策はいよいよ矛盾を大きくし、問題を先送りすれば、一段とそのツケが大きくのしかかり、破滅と崩壊を早めることになってしまいます。こんな20世紀的な資本主義の発展が生んだもののひとつが不健康と健康破壊です。
健康への要求は、資本主義の発展とともに大きくなり、その腐朽の早まりとともに加速度的に深刻化し、拡大してきています。
その健康被害を必死に喰い止めようと薬を飲ませ、注射を打ち、切った縫ったの手当てをしているのですが、被害は拡大する一方です。
これが対処療法の限界ですから、いかに医療関係の予算を増やしても根本問題の改善にはならないのです。
銀行の不良債権も同様で、公的資金を投入しても、おお型合併をしても金融システムが従来のように機能することにはならないでしょう。政治も、野合・分離・統合をしても改革を叫んでも、戦後政治の枠組みが変わらない限り、末期症状から脱することはできないでしょうし、延命策を打ち出すほど死期を早めることになってしまいます。本号のテーマは、住まいと健康を掲げていますが、このテーマは、20世紀的な発展が生んだ矛盾の縮図と言える性格を持っています。
20世紀、なかんずく戦後の発展は、西洋文明の支配下で、西洋科学と西洋合理主義、洋風化の思考と手法の下でつくられたものです。
それは、競争原理の下でのモノ・カネ・欲の追求、他を犠牲にしての利潤の追求、資源と自然を支配して、科学と化学を利用した豊かさの追求によって得られたものです。健康破壊の広がりは、政治や経済の混乱や腐朽と同じ根っ子で、同じ性格を持っていることが見えるはずです。
このことを見抜かない限り、防衛的健康論に騙され続けることになり、自らの手で健康をつくる、健康を育てる方向には向かえません。
その意味で、特集の中心は、健康破壊をすすめた戦後の住宅にメスを入れ、健康を育てる家づくりを据えました。
特集のⅠでは、戦後の近代化された洋風住宅が、どのように健康を破壊しているかを考察し、特集Ⅱでは、健康の意味を考えながら、健康をいかに育てるかを住まいと住まい方を通して考えてみました。
さらに、特集Ⅲでは、昔からの日本の住まいの趣きであった銘木を、21世紀の住まいに生かすために何が大切かを考えました。取材・寄稿全体を通して、木と木の家について多角的に取り上げています。健康を育てる家づくりは、まさに戦後の住宅政策と相対するものであることを見るにつけ、すべての矛盾の根源が同じである事を正面から捉え、新年度をスタートしたいと考えています。
激動と変化は、ますます大きく、早くすすみそうです。しっかり地に足をつけながら志を高くすすみたいと思っています。

  

 

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