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木を生かす木を育てる日本の伝統文化を継承する木構造施設  

 

木を生かす木を育てる日本の伝統文化を継承する木構造施設  
雲雀丘学園・日本文化館〈告天舎〉が完成
設計・監理 椎原 毅  構造設計 田原 賢・村田幸子
●日本民族の伝統と叡智を生かす 本誌第15号で、日本の伝統技術を継承したユニ-クな木構造施設として、雲雀丘学園に建てられた「日本文化館」を構造面を中心に紹介したが、その施設が3月に完成し、17日に完成見学会が行われた。
 外観を見ると、新和風の瓦を葺き、外壁をモルタル掻き落としにした木造建築で、学校の施設という雰囲気ではなく、表現すれば、「日本文化館」〈告天舎〉と名付けられているように、やはり文化館と言うしかないようである。
告天とは、ひばりのことで、告天舎は、ひばりの家を意味している。
 中へ入ると木の明るさとあたたかさに全身がつつまれるのが感じられる。
 建築家のIさんが笑顔を向け、「木のこころそのものじゃないですか」と冷やかし気味に話しかけてくれた。
天井が貼られて見えなくなった構造部分の力強さも含めて、限りなく「木」を意識させられる。
 設計・監理をした建築家の椎原毅さんをして「この中に入ると、本当に木の力を感ずるんです」と言わせるだけに、木の持つ優しさと強さが伝わってくる。
 玄関を上がるとまず目を引かれるのが、ロビ-とホ-ルの力強いクリのムク板の床の広がりである。
以前にも紹介した㈲木童の木原さんが、福島県の会津から取り寄せてくれたのだという。
1階、2階を合わせた延床面積約272平方mの80%以上と2階への階段板がクリ材である。
 古代の縄文の人たちの建築用材が、ほとんどクリであったことを考えると、この建物から伝わってくるのは、日本民族の受け継いできた叡智とクリの木の強さなのかもしれない。
 
ロビ-を見上げると、前号で紹介したジャングルジムのような貫の構造体で、それがデザイン的であると同時に、しっかりと2階を支えていることが窺える。
 ロビ-の壁面は土佐漆喰で、面格子もアクセントになっている。
 ロビ-から続くホ-ルは、11m×12mの大スパンを飛ばした空間を成し、壁面は珪藻土の聚楽塗りで、数枚のガラスの引戸から庭へ通じているが、戸袋にもう1枚納まっているスギの板戸には、丸穴が28個空けられている。
板戸を引いても暗くならず、遊び心的な意匠が感じられて楽しくなる。
 ホ-ルの天井はスギの柾板がきれいな色合いを見せている。
柾目が美しすぎるくらいだが、短い板を上手に繋げている。
鳥取県の智頭杉だという。
 このホ-ルは、社交場にもなりそうな研修室で、その奥に一段高く設けられている和室兼舞台の観客席にもなるという。
 和室は、以前、椎原さんが門真市の保育園・古川園で見せてくれた(本誌第4号で紹介)ものに、さらにひと工夫加えたものになっている。
 取り外しの簡単な薄手の畳を敷いてあり、障子を閉めると10畳の和室になる。
茶釜を置けば、点前を楽しむ茶席にもなる。
畳をあげて、障子を戸袋に納めてしまえば舞台になり、琴の演奏や演芸も楽しめる趣向である。
まさしく舞台を想定したと思わせるのが、横に前室があり、裏に通路を設けていることだ。
 また、ホ-ルから舞台を見ると、舞台右の漆喰壁に墨画が描かれている。
〝響き〟をテ-マにしたものだそうで、木の空間をより味わわせてくれる。
 柱類は、4本の桧の大黒丸柱を囲むように、12㎝角、15㎝角の土佐桧の役物柱と杉柱がある。
しっかり建物を支えているようながら、構造で紹介したように、宙に浮いている柱もあるが、見た目にはわからないところが面白い。
 ホ-ルの一角だけは現わしの構造体で、面格子による合成梁が平面的になりがちな空間を引き立たせてている。
 ジャングルジムを見ながら吹き抜けの2階に上がると、約33平方mの会議室で大きな掘りごたつ式になっている。
ここの壁面の一部にはカラマツ板が貼られている。
ここは天井も壁面も床も節が模様となり、真中のテ-ブルは、大目玉の節の杉板が使われている。
●子供たちに木の文化を 見学者が揃ったところで椎原さんがマイクを持つと、誰からともなく、全員がクリ板の床に腰を下ろす。
寒の戻ったような雨模様の日だったが、冷たさよりも木のぬくもりが伝わってくる。
 15㎜厚のクリ板の下には、12㎜厚の杉板が敷かれている2重板の床で、床下には活性炭が敷かれているということだから、感ずるエネルギ-が倍増しているようだ。

  「日本の伝統的文化を継承する施設を、学園創立50周年記念に建ててほしい」という要請を受けて設計した椎原さんは、「木造の研修施設としては珍しいものだが、子供たちを取り巻く環境が、食事や住居、鉄筋コンクリ-トの校舎などと、何を見ても劣悪で、子供たちの健やかな成長を妨げている。
木の国の子供たちが、木の文化のなかで育つようにとの想いを込めてつくった」と、設計のコンセプトを説明した。
 さらに椎原さんが強調したのは、「日本の木を使おうということで、使用している木は、ほとんど日本の木」と言って、材料を紹介した。
 続いて構造を担当した田原賢さんが「建築基準法通りにしようとすれば、集成材しか使えなくなる。
この構造は、それに挑戦するもので、2階の壁面を梁材としても生かし、壁と柱と梁、そして立体貫構造を一体のものとして、基準性能以上のものを設計した。
日本の建築は、木と木を組むことで助け合うつくりであることを確認したかった」と構造の心を説明した。
 建物概要は別項の通りであるが、全体を見て木材の使用量は100立方mを超えただろうと思ったが、椎原さんは90立方m弱と推計しているとのことだった。
 間もなく入学式、そして新学年が始まるが、子供たちがこの施設で木の文化を学び、継承し、健やかに育ってくれる姿を見たいものである。
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