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住みがいのある家づくり

いかに住みがいのある家をつくるか

~健康と「健康住宅」論にも触れて~
●家族の想いを実現する家づくり 「住みがい」のある家とは、
住むはりあいのある家で、住んでよかったと思える家だと前 稿で書きました。そして、それが、日本の伝統を継承した木の家であり、自然と共生する 家だということも書きました。 ここでは、そんな家をどのようしてつくるかについて考えてみます。差し当たり、その 対象として考えるのは戸建住宅についてです。 「住みがい」のある家は、当然ながら、その家に住むことに喜びを感じ、誇りが持てる 家であることです。 そこで家づくりに当たって考えるべきことの何よりも大切なことは、家族の想いが実現 するような家であることです。 誰でも家をつくろうと決める時には、何等かの想いや要求を持っています。それを実現 するのが家づくりの基本のひとつです。 想いや要求を分類してみると、そのひとつは住宅観によるもので、どんな感じの家かと いうある程度のイメージがあるはずです。そこには、まだ未成熟なものもあるでしょうし 外観をはじめ機能や性能を主としたハード面での要求もあるかもしれません。なかには思 い違いや洋風住宅観に支配されたものもあるかもしれません。それに対して、なるべくわ かりやすく、具体的に木の家の良さを知ってもらい、木の家づくりへ誘う努力も必要でし ょう。 木の家づくりに携わる者のこれからの仕事は、注文通りにつくれば良いというだけでは なく、木と木の家についての語り部、案内人としての役目の方が大きいのではないかと考 えています。 そのためには、要望を聞きながら、語り合い、学び合う姿勢を持つことでしょうし、見 学会や木材の現場を見てもらうことも大切になっています。
  眠っている日本人らしい和のこころを呼び覚ますくらいの気概と自らの知識や理論が求 められてくるのではないでしょうか。 住宅観の中には間取り、構成についての想いもあるはずです。間仕切りやドアを多くし たり、個室化する傾向に対し、なるべく仕切が少なく、心が通い合う間取りや構成への提 案なども大切になってきます。 もうひとつの想いを実現するという内容にはもう少し素朴な要求も含まれています。材 料への要求や備え付けへの要求などいろいろあると思います。そんな要求を充分に出して もらい、話し合いながらより良い方へと具体化することが大切なのです。 それは、家族が家づくりに主体的に参加することを意味しているからで、「住みがい」 のある家づくりにおいては、家族参加型が大きな要素となってきます。   家づくりのワークショップと呼んでいる人もいるように、家族参加型の家づくりは、要 望を出し合うことから始めて、一緒に材料を見にいったり、可能な範囲で材料の加工に加 わってもらったりと、家づくりの手伝いをしてもらうことです。そのことが完成した家へ の喜びや満足を倍増させるものとなり、そのまま「住みがい」へとつながることになるは ずです。「住みがい」の一番大きな要素は「自分たちの家」という喜びや誇りから生まれ るはずです。いくつもの願いを形にした家で、しかも家づくりに主体的に参加をし、家の 中にその跡を残すことは、高級性や性能をはるかに凌ぐ喜びであるに違いないのです。
●住みがいを生む日本の木の家 「住みがい」のある家をつくる上では、前稿であげたような「住みがい」観を一気に実現 する家を考えることです。
  現実に多くの建築関係者によって木の家が建てられ、素晴らしいものも数多くあります そこには、健康とか団欒とかが考えられたり、自然の光(明るさ)や風を採り入れるとか 強度を計算したりという工夫があります。 しかし、僭越ながら「住みがい」という観点に立って、それを網羅しようという視点は あったでしょうか。(そう考えた方にも、結果としてそうなっている場合にも、生意気な 言い方ですみません)  ここでは、「住みがい」の観点がなかったことを批判しているのではありません。前稿 で触れたように「住みがい」を論ずることがなくて当然だったのですから、「住みがい」 づくりはこれからの課題と言えるでしょう。 自然と共生し、自然素材を使い、癒しや健康を育て、心を和ませて家族の絆を深め、心 身が安らげ、人を招きたくなる家。そして丈夫で100年以上も世代を継いで孫やひ孫に 残せる家。 こんな贅沢な要求を満たす家があるのだろうかと言われかねませんが、本来の日本の木 の家は基本的にこのような要素を満たすものでした。

(1)"自然とともに"が生きる家  太古から受け継がれている家づくりの根本思想は、第1に「自然とともに」でした。少 なくとも近代に入るまでの日本人は、誰もが暗黙の内に人間も自然が生んだもので、自然 に生かされているとの考えを持ち、自然=神として尊崇し、感謝する気風に満ちていまし た。祭事と年中行事の多くはその表現でしたし、食事をはじめとする日常生活の様々なシ ーンで神を語り、罰当たりを戒めたり、手を合わせて感謝したりしていました。 ですから、家づくりにおいては、大地に根付く柱立てを基本に、自然と馴染み、同化す る家であることを当然の前提としていました。そのもっとも顕著なものが、家の向きに合 わせて風の通り道をつくることでした。風を通して自然の涼とエネルギーを取り入れ、湿 気を払うことで、健康を考え、家の長寿をはかり、寒い時には、通り道を閉じて暖をとる という考え方です。
(2)和を育てるシンプルな家  家づくりの思想の第2にあったのが間取りでした。主家の中心を占めたのは囲炉裏のあ る家族の共同の間で、今で言うところの居間でした。家長の座を中心に家族が集うところ で、帰って来ればそこで顔を合わせてくつろぎ、一緒に食事をとり、ここからそれぞれの 部屋につながるのが普通でした。 このつくりからは絆が生まれ、礼儀作法、躾が学ばれることがあっても、現代に急増し てきた断絶を呼ぶようなことはありませんでした。 親子の断絶や家庭崩壊、非行などが生まれる大きな背景のひとつに、玄関から個室に直 行し、カギをかけるような家のつくりがあるのですが、日本の本来の家は、間取りからし てそういう芽を生まない和の精神で貫かれていたのです。間取りはシンプルですし、つく りも住まいに必要な要素を満たすことを大切にした簡素なもので、モノづくりではなく、 何よりも心を通わす和の住まいであることが考えられたのでした。 以上の2点は、家の機能や性能がまず言われる現代の家とは違い、家づくりの心がまず 基本に据えられていることを教えてくれています。
(3)呼吸する自然の材料でつくる家  家づくりの第3にあげられる思想は、なるべく身近な自然の材料を使うことでした。日 本民族の集落は、昔から山懐に多く見ることができます。 これは、古くは森の民族であったことにもよりますが、自然の素材で家をつくり、自然 の恵みを得て暮らすには、山懐が最適だったからと言えます。 家づくりの材料の基本は木材でしたから、裏山の木が主に使われています。人工林など がない時代の人びとは、家づくりのための木を切ると、次の木を育て、里山を守っていま した。 木が用材になるまで成長するには100年前後を考えていましたから、つくる家は当然 のように100年以上の歴史を刻むことを前提にしたものでした。 木はなるべく元の姿に近い形で太く使い、立木の時の南北を合わせて立てるとか、木表 と木裏を見て使うということは言うまでもないことでした。 特に大黒柱や棟木、梁は太くてしっかりした木を使い、板も厚めにして、次の家づくり の時への再利用が考えられていました。
  壁も土壁か板壁が主で、土壁も土間の土も裏山の土を主に使いました。改修が必要とさ れるところは近辺の竹や葭、ススキ、ワラなど短年生の草木を使っています。木をはじめ とするこれらはすべて植物性の素材で、いずれも呼吸し、生きている材料です。 植物系以外で使われる材料は、いくらかの石と釘くらいですから、日本の家は、いかに 自然の素材を生かして使っていたかがわかります。
  ほとんどが呼吸する材料で、身近な自然の素材を使っているということは、住む人と同 じ空気を吸い、同じ気候の下で過ごすということですから、住む人と家とが一体となって 年を重ねることができます。 このような家からは環境に害を及ぼすものは出ず、人間の行為だけが環境へのマイナス の要素を持つことになります。 (4)癒しと健康を育てる家   また、このような家は健康に害を及ぼさないばかりか、むしろ健康を育ててくれます。 健康を育てる要素は、①自己治癒力を高めることで免疫力や抵抗力を育てることです。こ れ""1/fゆらぎ"(本誌第四号「自然界の"ゆらぎ"が生命を育てる」を参照して下さい。 以下"ゆらぎ"と表現します)やマイナスイオン、自然の超音波、磁場の活性化などで脳幹 の働きを良くし、自律神経を整える。②細胞の劣化、酸化、崩壊を防ぎ、蘇生化への働き かけを強めることです。マイナスイオンの供給、酸化還元電位の高い百五十㎜ボルト以下 の飲食物を摂取することや不足しがちなミネラル分を摂取すること、などが基本となりま す。 この意味から本来の日本の家を見ると、自然の光や風を取り入れることで、5感で"ゆ らぎ"を感じとり、マイナスイオンや超音波を受けることができます。木材を主とする生 きている材料を使うことによって、視覚を主に"ゆらぎ"を感じとりますし、マイナスイオ ンの放散を得ることができます。同時に、生活の中で発生する湿気や悪臭などと、それに 付着するプラスイオンを吸着してくれます。
  この点では、磁場の活性化や酸化還元電位の高い飲食物、ミネラル等について別に工夫 することが必要ですが、日本的な木の家というのは、癒しと健康まで含め、「住みがい」 に求められるあらゆる要件を兼ね備えた素晴らしいものであることがわかると思います。 ですから、日本の家づくりに流れる思想を受け継ぎ、自然の素材を使用した日本らしい 木の家づくりをし、そこに住む人の想いを込めた家であれば、誇れる「住みがい」をつく ることができるのです。 この考え方の上に、構法やデザイン、条件に応じた間取りやつくり方を考えることで、 より一層今日的な要求にも応える「住みがい」のある家となるのではないでしょうか。
●健康と「健康住宅」への考え方  健康の問題に触れましたので、いわゆる「健康住宅」論とも絡んで、健康の問題につい てもう少し加えておきます。 健康の問題は、本誌が一貫して追及してきたテーマのひとつで、創刊号特集Ⅰの「現 代社会は健康破壊のアリ地獄」「木材が育てる健康」、第2号特集Ⅲの中の「高気密化 がもたらす健康への影響」、第4号特集Ⅰ「癒しを育てる住まいづくり」の3稿、そし て第7号特集Ⅲ「本物の健康住宅とは何かを問う」その(1)「地球環境と木造の住ま い」(鈴木 有)その(2)「いま求められる健康住宅とは何かー『健康住宅』の呼称を 考えよう」その他で考え続けてきました。 これらを通して健康の概念や、いわゆる「健康住宅」の欺瞞性と本物の健康住宅等につ いて記述していますが、改めて当面している問題について整理してみます。 健康の問題を見る時には次にあげるいくつかのポイントがあります。
(1)不健康は現代が生んだ病気ーー   病気というのは昔からありますが、健康が圧倒的な人々の要求となったのは80年代 末からです。病気の原因となるのは①細菌・ウィルス等によるもの、②心身のストレスや 心の歪みによるもの、③化学物質や薬害等によるもの、④環境破壊がすすんだことでの汚 染物質の吸収や精神・神経の疲労によるもの、⑤栄養バランスの乱れやミネラル不足によ るものなどがあり、⑥これらと深く関連しての免疫力・抵抗力の低下、精神と肉体の脆弱 化、自律神経の不正常化等による自己治癒力の減退があります。 これらの病気を生む原因を急増させたのが20世紀で、世紀末に近づくにつれて加速度 的に悪化し、90年代を前にして押さえ切れない状況が広がり、健康への要求を爆発させ たと言えます。 科学万能社会は、自然界にはない化学物質を大量に作り出して繁栄を競い、化学薬品で 細菌・ウィルスを殺して病気を治したり、薬剤や化学肥料を使ったり、遺伝子を操作して 農作物や家畜を育てようとしました。その結果、自然に還れない有毒物が地上にばらまか れ精神と肉体を蝕んできました。薬品で退治されたはずの細菌やらウィルスが、より抵抗 力を強めて化学にしっぺ返しをして抗生物質も効かない時代になってきています。
  危機的にまですすんだ環境破壊が、正常な自然の営み、循環を狂わせ、体調不全と数々 の不定愁訴と呼ぶ現代病を蔓延させています。 日本人の体質にそぐわない洋食化やレトルト食品の氾濫、化学的に作り出した専売公社 の食塩や各種調味料による酸化還元力の低下、栄養バランスの乱れとミネラル不足などが 体質を歪め、病気にかかりやすく、治りにくい身体にしました。 競争と破壊の近代資本主義社会での経済的・精神的貧困化や、様々な精神的圧迫・不安 の増大・和を育てない人間関係、自己中心主義から心の歪み等々による心身の疲労、スト レスの蔓延が、対症療法の現代医学で治癒できない奇病・難病、精神的歪み、神経障害を 増大させています。 これに大気の汚染、気密化された「近代的」な住まいや職場での電磁波・低周波音・プ ラスイオン等による自律神経の麻痺、脆弱化などからくる自己治癒力の減退が、その他の 原因と相乗した複合作用で治癒困難な病気や不健康を拡大してきたのが20世紀でした。
  ですから、健康を取り上げるに当たっては、20世紀的思考や対症法では解決し得ない ことや、20世紀的社会の延長線上では決して健康な状態を取り戻せないことを理解しな ければなりません。 では、現状ではどうすればよいのかが問われることになります。
  そこで考えられる基本が、外科的治療が必要な場合を別にして、
  ①対症療法や薬などの物的依存ではなく、まず心と精神を鍛えることです。 現代人は、自分で病気を呼び込んだり、「病気」に負けて病気になり、他力本願で治癒 を期待しますが、自分が気持ちで病気に負けている限り、一次的に治癒したように思えて も全快することはありません。「病気」に対して、勝つか負けるかの次元で考えるのは近 代の思考であり、「病気」の本質を知らないことによるものです。 健康への第一歩は、「絶対病気にならない」「必ず治す」という強い決意を自分に示す ことです。また、「病気」は病気ではなく、身体と心の異常を知らせるシグナルであり警 告であることを知り、知らせてくれた「病気」というシグナルに感謝することです。そし て、病気と同化して、シグナルが発せられた原因と向かい合い、正すことが大切なのです  ②何よりも大切なことは、自己治癒力を高めることと肉体・細胞の酸化を還元し、蘇生 化をはかることです。それには、先にも触れたように、より積極的に自然のエネルギーを 取り入れ、脳幹の働きを正常にすることで交感神経と副交感神経のバランスを整えること があげられます。 "ゆらぎ"を5感いっぱいで受け入れ、脳幹との共鳴共振を強めることがそのひとつです 自然界の現象のすべては"ゆらぎ"で成り立っています。人間がつくり出したもので、心地 よく感ずる言葉、音楽、絵、手づくり品も"ゆらぎ"が基本になっています。 自然との断絶は"ゆらぎ"の拒絶であり、「文化的」生活、近代建築は"ゆらぎ"を排除し たもので、自己治癒力を育てる力をもっていないのです。
  超音波やマイナスイオンもまた自己治癒力を高めるものですが、とりわけマイナスイオ ンは、脳の活性化とともに、細胞の酸化・老化・崩壊化を食い止め、蘇生化に向かわせて くれます。 現代生活では否応なく大量の化学物質、酸化物質とプラスイオンを取り込んで、細胞膜 を破壊して細胞の機能を失なわせてしまいます。その結果、脂肪酸、乳酸、グルタミン酸 焦性ブドウ糖などの毒素を分解し切れずに体内に蓄積させることになります。それが神経 症や頭痛、高血圧、動脈硬化をはじめとする様々な病気を生みます。これは、細胞を守る 抗酸化物質から電子が奪われるラジカル現象によるものですが、空気と一緒にマイナスイ オンを大量に摂取すると、血液の中にマイナスイオンが入り、血液と細胞に不足した電子 を補給し、細胞の活動を正常にすることになります。 マイナスイオンの重要さは想像をはるかに超えるものであると言えます。(本誌連載中 の菅原明子さんの「マイナスイオンの秘密」を参照して下さい)  ③併せて考えたいことは、健康を回復させる飲食物を摂るように心懸けることです。様 々な有益な補助食品も出るようになりましたが、不足しがちなミネラルの摂取は不可欠で 手軽には天然塩を摂ることです。現代医学は何かにつけて塩分を制限しますが、ミネラル を多く含んだ天然塩はむしろ推奨されるべきだと思っています。
  食品も酸化を促進する肉類や食品添加物、タバコ、酒などを控えると同時に、気を付け たいのが水です。良水は長寿の秘訣ですが、酸化還元力の強いマイナス200~400㎜ ボルトの水を摂取することを考えたいものです。(酸化還元電位については、別の機会に 触れる予定です)  ④実生活で健康を取り戻すことを考えると必然的に出てくる問題が住まいです。「健康 住宅」論との関係は次に論じますが、その基本は、極力電磁波をへらすこととプラスイオ ンの発生を抑え、マイナスイオンを室内に供給することです。 (2)健康は育てるものーー  巷の「健康」論は、そのほとんどが「健康を守る」という観点からのものです。 しかし、現代社会の健康破壊の実態を見れば、守るという防衛的対処では絶対に健康に はなれないことを知ることです。
  病院へ行って病気を治そうとするのも、現代医学に依存した対症療法の考え方です。薬 で病気とたたかい、手に負えなければ患部を切ってしまうという思想ですから、病気の根 本原因に迫り、そこを改善するというものでありません。 後で批判しますが、いわゆる「健康住宅」も、健康破壊の原因を減らすという思想です 増やすより減らす方がいいのでしょうが、生活全体の局部でだけ健康破壊の要素を減らし ても、健康を取り戻すことはできません。  
全生活を通して健康であるためには、先に触れたように免疫力・抵抗力を育て、自己治 癒力を高めることと、細胞の老化・酸化・崩壊を食い止め、蘇生化へ向かわせることを考 えないかぎり不可能なことです。 だからこそ、すべてにおいて「健康を育てる」という思想に立って考える以外に、本当 の健康を考えることはできないのです。 「健康を守る」という思想は、それがたとえ善意であったとしても、現代社会の中での 防衛思想にすぎず、20世紀が生んだ矛盾を克服するということになり得ません。むしろ 現代社会の矛盾を容認し、矛盾の根本を包みかくすようなことにしかならないのです。 (3)本当の「健康住宅」とは何かーー  「健康住宅」と言えば聞こえが良く、いかにも健康に良い住宅と一般の人は思ってしま いますが、ここにこそ落とし穴があります。「健康住宅」と呼べるものは、健康を育てる という思想の下でつくられたもの以外は認めるべきではないのです。
本誌第7号の「今求められる健康住宅とは何か」で指摘したように、「健康住宅」を謳 っている住宅の多くが、「なるべく健康を害さない」程度の住宅でしかないようです。2 0世紀に「健康破壊住宅」を売り続けたハウスメーカーの住宅が、多少の害を減らしたか らと言って「健康住宅」を語れるものではないことは言うまでもないでしょう。「健康住 宅ーーー」と名のつく団体の背後には、大手ハウスメーカーや薬剤メーカーが隠れている のも少なくありません。健康を語り、商売のネタにするような手口には充分注意が必要で しょう。「健康住宅」づくりの推進をかかげる、ある団体の活動は、(関係者の多くは真 面目かもしれませんが)健康住宅の基準は、計画換気、ダニ対応、カビ対応、床下環境、 室内空気環境、音環境、高齢者環境(選択制)、室内温熱環境の8項目を掲げています。 おわかりと思いますが、これが行政の考え方でもあり、ハウスメーカー、薬剤メーカー のスローガンと同じもので、あくまでも高気密・高断熱の洋風住宅観の下での小手先の健 康破壊防止対策でしかありません。 裏を返せば、自然と断絶し、住人を自然から隔離しようとするからこそ必要になった対 策でしかないのです。 バリアフリーは健康とはまったく次元の違う項目で問題外です。ダニ・カビは薬剤など で殺せば、化学物質を残すことになりますが、室内を清潔にして、マイナスイオンを増や せば解決する問題です。室内空気環境を騒いで、ノンホルマリン化を叫び、ノンホルマリ ン合板を使ったところでは、青カビの発生でどうしようもなくなっています。
  計画換気ほどエネルギーのムダ使いはありませんし、全室の換気は人工的には決して完 全にできないことは証明されています。完全換気は、外の自然と一体化することでしか実 現できないのです。強制換気では逆にチリやホコリと、ダニ・細菌が室内に舞い、それを 吸い込むだけでなく、必ず隅を中心に空気の澱みができてしまいます。そこにチリやダニ が集まることになり不健康の原因ともなってしまいます。
  その他にもいろいろ触れるべき点はありますが、シックハウス対策は、あくまでも応急 処置であり、「健康住宅」づくりとはならないのです。 本当の「健康住宅」は、先に書いたように、あくまでも健康を育てるものでなければな りません。しかもそれは、病気という次元ではなく、心と身体の健康というとらえ方が必 要です。(本誌創刊号特集Ⅰを参照して下さい)  この考えのもとで本誌第7号で示した「健康住宅」の概念を要約すると①風・光・香り 音を取り入れた自然と共生した住まいであること。②自然の素材を使った呼吸する住まい であること。③質素・簡素でも心を通わす和の住まいであること。④住まいも呼吸して健 康で、住むほどに愛着の深まる長寿住宅であることです。 このような本当の意味での健康住宅を、イメージを壊された「健康住宅」などと呼ばず に「自然派住宅」「自然共生住宅」「エコロジー住宅」などと呼ぶことを提唱しました。
  すでにおわかりのように、ここであげた本当の「健康住宅」は、本号ではじめて論じた 「住みがいのある家」そのものであることです。ですから呼称として適当かどうかは別に 考えるとしても「住みがい住宅」と呼んでもよいのではないかと思います。 健康論についてもかなり触れましたが、本稿の趣旨を1人でも多くの方が受け容れられ て、住みがいのある日本の木の家を、近くの山の木、日本の木でたくさんつくられるよう になることを切望しています。
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