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日本の林業と木材を考える


林業育成は国民的課題
次に費用や山守りの問題で すが、需要が少ないというこ とと当然関連して、育林費用 や出材費が出ず、採算がとれ ない厳しい状況になっていま す。
国有林の立木売りの場合は 、一定の区画の人工林木を全 部売る方法がとられ、伐採業 者が平方m当たり数千円で買 うのですが、かなりの専門業 者でも出材のコストだけでも 立木仕入れ値の数倍になりま す。
これが原木市場で採算割 れになることもしばしばある のですから、当然出材意欲が 出ないことになります。
ここで問題にすべきことが 、木材の価格設定です。
国有 林が人工林材を切り出して売 る時の価格は、等級などの違 いや材種による違いはあるに しても、基本的には伐採、運 搬、採材に関わる経費が基準 になっています。
つまり、山地の整理、植林 、下草刈りや枝打ち、間伐等 の経費はゼロではないにして も基本的には算入されない仕 組みになっています。
立木販 売では、50年程度手を掛け て育てても、立方m当りで数 千円(杉で2~5千円平均) ですから、育林費に充当でき るはずがありません。
民有林材もこれに準ずるこ とになりますから、間伐材な どを出しても伐採経費にもな らないことになってしまうの が実情です。
だからと言って材価を簡単 に上げられないのもまた現実 ですから、人工林を中心にし た民間の林家が経営を維持で きなくなり、育林を放棄して しまうことになっているので す。
昔からの山持ちで、高値の つく木、銘木級の木を保有し ていなければ林業を続けられ ないようにしてきたのが戦後 政治であり、林業政策であっ たことは、このことを見るだ けでも明らかなことなのです。
その上、農山村を寂れさせ 、都市へのあこがれを煽りた てて若い労働力を都会に吸い 上げ、高度成長を競わせた結 果、後継者づくりも出来なく させられたのが戦後の農山村 行政だったのです。
林野行政への批判もありま すが、これは林野庁を超えた ところでの問題であり、山元 にばかり目が向いていると川 下から批判される林野庁も、 その主な対象は国有林であり 、民有林行政への責任は僅か なものでしかありませんでし た。
日本の林業と木材を考える と、どうしても解決しなけれ ばならない問題が、山林の育 成への援助の問題です。
繰り返し指摘しているよう に、山林を育成することは、 日本の自然と環境を守り、育 てることなのですから、林業 家が逃げ出したりしなくても よい状態をつくらなくてはこ れからの林業はあり得ず、木 材業の活力も生まれませんし 、本当の意味での日本の木の 家づくりを広げることは出来 ないのです。
先立っても、建築家のある シンポジウムで高気密・高断 熱の洋風住宅を推進する建築 家が、「みんなが木造住宅に すると言ったら日本にはそん に木はない」と断じていまし たが、これなどは、日本の林 業と木材の衰退に積極的に加 担してきた者の言い分でしか ありません。
もう一度言いますが、日本 の国土の70%は山林で、そ の内の3分の1、1千万ha は人工林です。
その人工林が 伐期を迎えてきているのです から、木はあるのです。
その木をどう育て、どう使 うかが問題なのだということ を考えてほしいと切望してい ます。
医療関係費に国家予算の3 分の1を超える30数兆円が 注ぎ込まれているのに病気は 減らず、さらに健康破壊がす すんでいるのです。
税金の使 い方については、矛盾だらけ であることは知られている通 りですが、自然と健康を守り 、和の文化を育てるためにも 、林業への大きな支援が必要 になっているのです。
木材業は山から川下への中枢を担う
ここまで林業の問題を中心 に考えてきました。
それは、 木の家づくりをこれからの日 本の家づくりの本流に押し広 げるためには、林業の問題を 離れて木材を考えることがで きないからです。
戦後の木材業のその多くが 、家づくりの担い手の役割を 放棄し、メーカーへの部材提 供業化したことと、外材の輸 入増加につれて国産材から離 れてしまいました。
しかも、 山から出される原木の多くは 、原木市場へ出荷されるよう になりました。
そのため、林業家は木を出 して売るだけ、製材・木材業 者は市場で買って製材加工し 、次の流通に回すだけ、とい う具合に相互関係が希薄にな ってしまいました。
各業種が自分の領分の仕事 をし、次の過程へ売るだけと いう流れを作ってしまったこ とで、家づくりや最終製品ま での流れにつながりがなくな り、それが流通の複雑さや価 格の不透明さを呼ぶ原因にな っています。
日本らしい木の家づくりを 広げるために欠くことのでき ないことが、最終ユーザーに までスッキリとパイプの通っ た家づくりの仕組みを作るこ とです。
そのためには、まず 、木を生み育てる山元からの パイプづくりが必要になりま す。
出発点は山元にあるのです から、この山元が不安定であ ったり、生きていけないよう では、国産材をたくさん使っ た家づくりなど及びもつかな くなります。
ですから、消費者も家づく りに携わる人も、木材業者も 、まず山に目を向け、一緒に 山づくり・森林づくりを考え てほしいと願っています。
とりわけ、家づくりへの参 加意識と具体的行動で最も立 ち遅れている木材業界は、川 上から川下までの中間の大部 分の領分を有しているのです から、自分の領分、自分たち の利益だけから出発するので はなく、山から始まる流れの 中枢になり、家づくりと結び つく努力を急いですすめなけ ればならない時です。
価格の問題、品質の問題、 入手方法の問題などの不審の 解明はここから始まることを 改めて考えてほしいものです。
 
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