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木の家をつくる建築家のこころ

国産材を使った自然と共生する家本格木造のマインド住宅を見る

大阪市浪速区・社の極 中原賢二

●「人は自然の一部である」の生きる家大阪・吹田市の住宅街の一角に、国産材を使った本格的な木造の自然住宅が造られ昨年11月末に完成見学会が行われた。
日本建築文化研究会・社の極(中原賢二会長)が建てたもので、中原さんが掲げているマインド住宅の13棟目になる。
マインド住宅の基本理念は、完全注文住宅で、施主と設計者と施工者が三位一体となって創造することにあり、敷地条件や施主の要望を考慮した図面づくりから、木材の選定、仕上げ材に至るまでを施主との打ち合わせによってすすめるとの考え方が基本にある。
中原さんが掲げるマインド住宅は、その名が表すように、「身体の快適さだけを追求するのではなく、心(マインド)も快適で健やかさを育てられる家」にある。
中原さんが語るには、「川のせせらぎを聞いたり、森の中などの自然の中に入るとやすらぎを感じますよね。
同じように、その家に入ったら、不思議と落ち着け、5感と第6感にまで訴えかけてくる"何かしら、ええ感じの家"でなければ家とは言えないのではないか」というところにある。
「家は、本来、住む人の心と身体を健やかに育てる所であり、心が落ち着くところのはずで、そこには、人も集まってくる」は中原さんの家づくり観になっている。
その根底には、「人は自然の一部である」という、社の極の思想が流れている。
社の極は、日本文化伝統産業近代化促進協議会の一部として、建築関係を中心に研究するメンバーで構成されており、促進協議会の副会長でもある中原さんが主宰する設計処草庵が中心になっている。
吹田市に建てられたKさん宅は、奥さんが軽いアトピー症ということと、Kさんの「木造で」という強い希望があり、それを適えてくれる建築家を探し求めて中原さんが依頼されたものであった。
それまでKさんは、雑誌などで学ぶだけでなく、実際に新築現場も見てまわり、得心できるつくり手を探し、最終的に中原さんともう一人の建築家との面談をして、家づくりへの考え方と木への想いを感知できた中原さんに決めたという。
当初は、住宅メーカーとの接触はあったが、自然素材の家はつくれないとか、オプション価格の問題などで既成タイプしか考えないメーカーではダメだとわかり、意に応えてくれる建築家を探していたとのこと。
それに、Kさん夫妻と子供の世帯に、社交ダンスを趣味にする母が同居するという形になるため、2階に27帖のダンスホールを必要としたが、メーカーでは24帖以上は不可能ということもあり、以前30帖の大空間をつくった実績のある中原さんならばというのも依頼された理由のひとつだったとのこと。
施主の信頼を得ての設計と建築は、建築家にとって喜びであると同時に、信頼に応えるべき責任の重さがあった。
それだけに、図面段階で何回もの施主との話し合い、意見交換、考え方の確認をし合い、設計図が練り上げられたという。
Kさんから出された要望は、石垣のある和風の家で、なるべく木をたくさん使うこと、2階は母の専用で、27帖のダンスホールと生活空間を持つこと、1階と2階の生活時間が違うので、1、2階を独立して使うこともできるように、などがあった。
この地は小高く、宅地造成の規制区域でもあったが、地下にガレージを持つ木造2階建てにするための造成工事が必要であった。
また、敷地的にはほぼ正方形で、家相の関係で、1、2階とも38.6坪の四角い建物を要望されたために、庇とバルコニー、二双形の屋根などで外観の変化を工夫している 見学を終えてから、中原さんと居間に座り込んで話をしていると何人かが加わり、車座になって雑談めきながら家づくりのポイントと裏話を聞いた。
中原さんが心を砕いたのは、木をたくさん使うための材料の選定と適材適所の使い方、木の質感の表わし方、生活時間の違う事実上の2世帯住宅の摺り合わせなどがあり図面だけでは表現しきれないものが多く、連日のように現場へ出向き、施主や施工を担当した監督さんや大工さんと話し合いながら仕事をすすめたという。
監督さんに感想を聞くと、「こだわりを持った仕事だったが、現場で楽しんだ」とのことであった。
●適材適所に自然素材のこだわり手当をした材料は、柱、梁などの構造材は高知県の土佐杉と土台用の土佐檜、床材用の能登ヒバ、土佐杉、カバ桜の無垢フローリング、内装仕上げ材には、自然クロス・珪藻土、土佐杉板など。
外部仕上げ材には、淡路いぶし瓦(一部銅板の一文字葺き用)、愛媛産焼杉板、高知産杉赤味板などが主で、その他に、檜の化粧丸太・北山杉の絞り丸太、本畳、琵琶湖のヨシ、調湿炭、オリジナル木製システムキッチン、木曽サワラの浴槽、奈良赤膚焼オリジナル洗面器など、こだわりの自然素材を揃えての施工だった。
  1、 2階同床面積の箱形のような家だが、中に入ると角形を感じさせない空間づくり がされている。
 珪藻土のタタキと自然石を敷き込んだポーチから玄関へ入って、タタキからヒバのフローリングのホールに上がる。
そこには30㎝径程度の4、 檜化粧丸太が立っていて出迎えてくれるようである。
その先に尺角の土佐杉の 大黒柱が堂々と立ち、2階へと突き抜けている。
その左手は、木製のオリジナルキッチンが表に面した台所で、ヒバの無垢フローリング貼りだが、その真ん中に2×3尺の切り込みが見られ、取手がついている。
2枚になった床兼床下収納ボックスのフタだった。
それを取ると収納ボックスがあり、それも抜き取ると一面に木炭が敷きつめてある。
車座の中に加わっていた炭創の榎並利男さんが納めたもので、ナラとクヌギの木炭2.2tを床下に敷いているとのこと。
調湿とともにマイナスイオンを放散し、良い場をつくっているようで、木の効力と相俟って座っていても気持ちが良い。
台所にも収納棚があるが、家の中の随所に設けられた収納棚や造り付け家具、それに洗面台その他の建具はすべて手づくりで、杉板が上手に生かされている。
台所に続く食堂の奥は杉の小巾板の上に畳敷きの客室で、床の間が配され、壁面は珪藻土の金デコ押えで、落ち着いた感じになっている。
上を見ると天井も杉のピーリングだった。
 この客室の右は玄関ホールの奥に当たり、ここが居間である。
杉のフローリング敷きで、中央部分に三尺角の取りはずしのできる本畳を敷いている。
壁面と天井は自然クロス貼りだが、上下の手づくりの造り付け家具と電灯を覆う大きな和紙が変化をつくっており、ガラス障子の向こうには生垣の緑が鮮やかに映えている。
玄関ホールの右は納戸と子供部屋で、杉のフローリング、自然クロスでの壁面と天井の構成となっている。
玄関ホールの脇には浴室、脱衣室、洗面所、便所などが配され、ヒバのフローリングを使い、壁面も主にヒバの小巾板が使われている。
手づくりのヒバ材の階段を上り、ホールの先の引戸を開けると27帖のダンスホールが広がっている。
奥の2面が総鏡貼りになっていて、50帖くらいの大空間の感覚にとらわれる。
ここはカバ桜のフローリングをサンダーにかけてワックスを5回塗って磨き込んである。
天井は屋根成りの現わしで杉板のパネルをそのまま使い、梁と登り梁で大空間をつくる構造である。
強度的には充分保たれているからだが、梁は杉の厚板を2枚使いにしてサンドイッチのようにその間に蛍光灯を入れることで、スポットライト以外の照明器具を不要にしている。
合理的であると同時に、木が持つ力強さを演出するものともなっているようだ。
ダンスホールから大黒柱を隔てて続く8帖の和室は、本畳を敷き、珪藻土を金ゴテで押えの壁で、杉のピーリングを天井に使っている。
ここには床の間と仏間が設けられ、床の間の天井には1階の和室と同じようにヨシズで趣をつくっている。
障子戸を開けると広縁で、手摺のところに欄間屋さんが家紋を刻んだ板をはめているのもにくい心配りである。
階段ホールの右は母のプライベート空間で、台所、納戸、寝室と杉のフローリングが続き、階段横に便所、浴室が配されている。
少々細かい説明になってしまったが、施主とつくり手の見合いからは1年半を経過しており、古い家を取り壊し、造成から着工、完成まで約1年の2世帯住宅造りであった。
木を中心にあらゆる材料を自然素材とし、随所に施主とつくり手のこだわりを生かした家である。
 古い家は暗かったというが完成した家は、光と風が通り、自然と共生し木と木炭で心までもが癒され、快適さを語れるマインド住宅である。
(酒井)社の極 日本文化伝統産業近代化促進協議会内〒556-0022大阪市浪速区桜川3-2-1-202TEL 06-6561-3880FAX 06-6562-7889

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