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日本の伝統 銘木のこころを住まいに生かす

日本の伝統 銘木とは、なにか  

日本の文化は西欧の石の文化と比較して、木の文化とよくいわれます。
豊かな自然に恵まれ、育まれた繊細な感覚に裏付けられた日本の美意識は、 木材利用という面で「銘木」という概念を生み出しました。
「銘木」とは、その形状、材質、色、艶、木目などが優れた木材を指しますが、一般には そうした材は、床の間材あるいは数寄屋風建築の材料として使われること から、銘木はすなわち、和風建築の材料として捉えられることが多くなっ ています。
事実、その流れは現在でも銘木の主流をなしています。
しかし、日本人の木を愛する心は、自然の美しい木理や温もりのある素 材感を生活空間に生かしたいという気持ちを強くし、内装材として洋風住 居にも積極的に木質素材が使われるようになっています。
戦後の住宅ブームのなかで銘木の加工技術の向上は著しく発達し、「銘 木の大衆化」が進みました。
銘木は私たちの生活の身近なところで潤いを 与えてくれるものとして存在しています。
木材利用の重要なアイテムであ る銘木についてレポートします。
1.銘木って、なに?
「銘木って、なに」と一般の消費者に尋ねると、 大半の答えが、床柱、床の間などに使われる高級 材と返ってきます。
その答えは間違いではありま せんが、それが銘木のすべてはありません。
ところで、そもそも銘木という言葉は、いつ頃 に生まれたかといえば、意外に歴史は浅く、江戸 時代頃。
さらに銘木の概念が一般化するのは明治 時代の中頃といわれています。
例えば、床の間の 地板、棚板などに使われるケヤキは、スギと並ん で銘木の代表的な樹種といわれていますが、中世 から日本の木造建築物にケヤキが使われてきたの は神社・仏閣、城郭建築のなかの構造材としての 利用が主流でした。
その理由は木目が美しい「銘 木」だからというよりも、ケヤキが強度に優れた 材であることや、日本のどの地域にも広く生育し、 比較的入手が容易であったためと言う要素が強い ものと思われます。
ここでは銘木の概念はあまり ありません。

江戸時代の商売風俗の解説書に「床柱、床板、 框などに使う良材を売る店として銘木店というの があった」と記されていますが、この時代には時 の幕府により「奢侈禁止令」が出され、一般の住 宅に床の間などを設けることが禁じられていまし た。
さらに火事の多い江戸の一般的な町屋は質素 な板葺き住居であったことなどから、市中に「銘 木店」なるものがあったとかどうかは疑わしい。
明治に入って、維新の混乱が落ち着き始めると、 北山スギの磨き丸太やケヤキ板さらにシタン、黒 檀などの唐木と呼ばれる外国産の材を扱う材木屋 が出始め、これらの店が「白木屋」、「唐木屋」 などと呼ばれたという記録があります。
いずれに せよ、この頃からやっと銘木店が一般化し、銘木という概念が成立し始めたといえそうです。
また銘木を考える場合、日本独自の伝統文化と される数寄屋風建築との関連性は忘れることはで きません。
「わび」、「さび」、を理念とする茶 屋建築の渋みや、江戸時代の町人文化にあった 「粋」、「通」の概念は建築様式とその材料に影 響を与え、日本独自の和風空間をつくってきまし た。
そこに現在の銘木とされる資材の数々が使わ れてきたことは、いうまでもありません。
数寄屋 風建築物が茶屋や料理店、別荘などの建築様式と して発達していったことからも、銘木が趣味性、 遊興性の性格をもつことは否定できず、このあた りから「銘木は高級材」のイメージがつくられて いるようです。
とくに木目が美しい材は、年輪も細かい材が多 く、大径材であることが前提となるため、稀少価 値が高いことはいうまでもありません。
スギの天 井板を例にあげても、代表的な高級品とされる中 杢天井板は、樹齢200年、300年という大径材の中 心部からしか製材できない木目であり、こうした 材がたくさん生産されないのも当然です。
そのた め、一般材に比べて単価が割高となっていくのも 経済原則といわねばなりません。
銘木について、(財)日本住宅・木材技術セン ターでは、次のように定義しています。
「一般に次のどれか、または重複したものを銘 木と呼ぶ。
(1)材面の鑑賞価値の極めて高いもの (例 杢板、糸柾板)(2)材の形状が非常に大き いもの(大径丸太、長尺1枚板)(3)材の形状が極 めてまれなもの(サクラツツジ)(4)材質がとく に優れているもの(木曽ヒノキ)(5)類まれな高齢 材(イチイ)(6)入手がかなり困難な天然木(天然 カラマツ)(7)類まれな樹種(ビャクダン)(8)由 緒ある木(9)その他極めて高価木」。
この定義からすれば、銘木はすべて数100年を経 た木材からしか得られません。
自然の産物である 樹木の生きた証明でもある木目あるいは色相を、 同じ自然界の生物のひとつである人間が、それら の性質を生かして価値づけてきたものが銘木であ ると言えるのではないでしょうか。
自然素材である木材を求める声が高まるなか、 和風建築物の材料として発達を遂げてきた銘木に、 新たな時代のニーズが起こっています。
それは 「新和風」とか「モダン」など、すでに新造語と して一般化しつつあります。
銘木の概念が時代を 経るなかで、少しずつ確立されてきたように、こ れからも銘木の概念は変化するでしょう。
伝統的 な木造建築物、いや一般家屋に和室すら消えてい こうとしているなかで、伝統的な和風建築様式に おける銘木について、全く知識がない建築士、大 工がいても不思議はありません。
しかし銘木とい うものが、自然の産物である木の風合いを生活空 間に生かすという観点から、新しい時代の生活空 間に見合った銘木の使われ方があってもよいので はないかと思います。
2.銘木にはどんな種類があるのか


いずれにせよ、天然木は過去の伐採増加により 資源の枯渇が深刻です。
秋田スギや木曽ヒノキ、 春日スギ、屋久スギなど、どれをとっても今後の 供給量は減少することは間違いがありません。
稀 少価値が増して高級材となる一方で、戦後に植林 した人工林が着々と育っていることや、世界中の 美しい木材が代替材として使われていることなど、 新たな銘木の供給が生まれていることも忘れては ならないでしょう。
以下、代表的な樹種について、その概略を説明 します。
改めていうまでもありませんが、ここで 紹介する樹種がすべての銘木の範疇に入るかとい えば、そうではなくて、まさに人が一人一人違う のと同様に、一本一本味わいが違うのが銘木の銘 木たる所以と言えるでしょう。
銘木とはなにか、について長くなりましたが、 ここでは銘木と呼ばれるものについて、その代表 的な樹種と製品について説明します。
別表のように銘木と呼ばれるものの樹種と製品 の種類は多くあります。
ケヤキ、秋田スギ、木曽 ヒノキ、魚梁瀬スギなど、すでに原木から銘木で あるもの。
鋸による木挽きや製材機にかけて大割、 板挽きにした盤、板類、ツキ板類などの半製品の 状態になって初めて銘木といわれるもの。
さらに 床柱、長押、鴨居、天井板などの製品になってか ら銘木と呼ばれるものなど、実に様々です。
これらの銘木に、どんな条件があるのかという と、一概にはいえないとしか答えられません。
銘 木と呼ばれる製品をとるためには樹齢200年から 300年を経た大径木が必要であり、さらにその木が 育った環境によっても色、木目などが変わってく るからです。
(1)ケヤキ
北海道を除いて、全国的に自生する広葉樹で、 巨木となることでも知られています。
また並木、 屋敷林なででも親しまれています。
古来は「ツキ」 と呼ばれ、「強木(つよき)」から転じたとされ ているように、強度に優れ、古来より建築構造材 として利用されてきました。
また年輪がはっきり として、木目も美しく、老大木などには玉杢と呼 ばれる杢が出て珍重されています。
構造材の他、床の間用材として装飾用にも使わ れ、銘木のなかでも最も大きな需要を占めている のがケヤキです。
近年、資源の減少が目立ち、貴重な材となって きました。
10年から20年前には胸高直径が2~3m のものが銘木市場に頻繁に出荷されてきたものが、 最近では経級の細い材が主流を占め、大径木は稀 少価値となっています。
100年生以上の年数を経 た材の減少により、残された良材を求めて伐採の ための林道をつけにくい山奥にまで、ヘリコブタ ー採材が行われるほどです。
スギ、ヒノキなどの針葉樹中心だった戦後の植 林も、広葉樹林の見直しによって少しずつケヤキ などの植樹も進んでいます。
しかし、最近の原木 単価が大径木などの高級品を除いて低下する傾向 にあることから、コストの高くなる伐採、出材は 敬遠される傾向があり、供給量は今後も減少しそ うです。

(4)木曽ヒノキ 
長野県の南西部、木曽山脈と飛騨山脈南部とに 囲まれた地域で産出する銘木。
この地域は江戸時 代には尾張藩の直轄地となり、とくに名古屋を中 継地として江戸開府の膨大な木材需要を賄ったこ とで、尾州ヒノキの名もあります。
木曽ヒノキは社寺を含む高級建築材として有名 であり、建築用構造材、建具材、家具、彫刻、曲 物、桶、木工などの材料として使われてきました。
辺材は優白色、心材は淡紅色で美しくヒノキ特有 の香ばしい香気が強くて、年を経るにしたがい光 沢を増します。
また木目も美しく、材質は粘りが あり、加工しやすく狂いも少ないなど、銘木にふ さわしい優れた数多くの特長を備えています。

このため古くから社寺、仏閣、城郭などで多用 され、現在も伊勢神宮の式年遷宮の御用材として 利用されることは有名です。
また民間の住宅でも 高級住宅は「ヒノキ普請」といわれ、いわゆる 「ヒノキ神話」が関東、中部地区に強くあります。
他の天然資源同様に伐採量は限られており、今 後の供給は減少が避けられません。
貴重な木造文 化を継承するためにも永続的な供給が望まれ、国 有林でも学術保存林や備蓄林などとして保存努力 を続けています。
(2)秋田スギ
秋田県北部一帯から産出される日本を代表する スギ。
2分3厘と呼ばれる天井板や長押、落掛など の造作材、柱など和風高級建築には欠かせない銘 木です。
しかし天然秋田スギの蓄積量は減少の一 途にあり、戦後の混乱期を除いて、昭和30年代か ら40年代には年間50万立方m程度の伐採量であっ たものが、現在は5万立方mを割る伐採量となって います。
緻密な年輪や独特な香り、色、柔軟な材質が特 徴で、とくに木目の美しさは天井板として重用さ れ、、銘木としての価値を高めています。
今後の天然秋田スギの供給は細くなる一方であ り、地元では戦後植林された造林スギを秋田スギ と呼び、天然秋田スギと区別して、秋田スギの需 要開拓に力を注いでいます。
(3)屋久スギ
世界資産に指定された屋久島の国有林内に生育 するスギで、一般に樹齢1000年以上を屋久スギ、 それ以下を小(こ)スギといって区別しています。
いずれも天然林であり、世界に類をみない長寿木 として著名な銘木です。
江戸時代から盛んに伐採 され、利用されてきたが、長年の伐採により資源 は減少、現在は世界的な資源保全の声が強く、伐 採については厳しい制限をつけられています。
屋久スギの材幹は濃い茶色で、独特の香りを放 ちます。
油脂分が多いため、腐りにくく、江戸時 代に伐採され、搬出されないまま山に放置された 材が今日まだ内部は腐朽せず、いわゆる土埋木と して利用されているほどです。
年輪はきわめて緻 密で、老齢木にはほとんどに杢があります。
その 杢は笹杢、波杢、うずら杢、玉杢、如輪杢などと 変化に富んでいます。
資源保護のため今後の供 給量は特別な場合を除いてごくわずかであり、稀 少価値が高いものの、供給量の減少により需要も 限られてきているのが実態です。
(5)北山スギ
京都市の西北、周山街道沿いの北区中川地区を 中心とした北山地方で産出する。
室町の時代から この地のスギが当時、興隆した茶の湯によって茶 室の建築に使われた記録がありますが、現在に伝 わる磨き、絞り丸太などの床柱を中心とする北山 丸太が本格的に定着したのは江戸時代の初期とい われています。

北山スギの丸太類は磨き丸太と総称され、床柱、 面皮柱、桁、タルキなどとして使われてきました。
昭和40年代の住宅建設ブームのなかで絞り丸太の 需要が急増し、天然絞り丸太を模倣した人造絞り 丸太の生産が拡大しました。
この時代に全国の林 業地帯で、木や竹、プラスチックなどでつくられ た型を樹皮の上から針金で巻き付け、伐採してか ら磨いて人絞り丸太を生産する事業が急増しまし たが、現在は一部を残す程度となっています。
北山スギ丸太の特長は、(1)元末同大の円直材で あること(2)磨かれた木肌が美しく、独特の光沢が あり、年を経るほどにあめ色の色艶の深みを増す こと(3)繰り返される枝打ちの優れた技術によって、 無節で表面に「えくぼ」を生じさせないこと(4)年 輪は緻密で、枝打ちによって樹幹内の生節の周辺 の木理が交錯して、材が強くなっていること、な どがあげられます。
磨き、絞り丸太は唐木床柱と同様に和室におけ る重要なアイテムであり、自然が生み出した造形 美を座敷で愛でる日本独自の文化ともいえます。
3.銘木の今後
前項で銘木といわれる著名の樹種について概略を 説明しましたが、いずれも天然林の資源は減少して おり、今後の供給量は減少が予想されています。
多 くの銘木の生産地が国有林内にありますが、それを 統括する林野庁も大きな財政赤字を抱えるなかで組 織再編が行われ、この3月1日から地方の営林局は森 林管理局と名称を変えるなど、木材の生産から環境 保全整備など森林の公益的機能の発揮へと、役割を 大きく変えようとしています。
貴重な資源は保全す る傾向を強めるものとみられ、前項であげたいくつ かの樹種はさらに稀少価値を強めていくものとみら れます。
こうした状況のなかで、銘木をめぐる供給側の事 情も変わろうとしています。
住宅建設は平成八年に 164万戸を記録しましたが、2年後の10年には119万 戸と3割の減少となりました。
バブル景気の終焉と その後の長期不況で住宅建設も長期にわたる低迷が 続いており、政府のテコ入れで新年度の景気回復が 伝えられているものの、住宅建設が中長期にみて、 かつての160万戸以上になることはないとみられて います。
平成10年の戸数による木造率は45・5%と 過半数を割っている。
その木造住宅のなかでもプレ ハブ、2×4工法住宅などを除いた、在来工法によ る木造住宅は44万7千戸であり、やはり3年前から約 3割の減少です。
銘木が使われる和風住宅は戸建て 木造住宅が多いものの、木造住宅といえども様式の 洋風化は顕著であり、それだけ床の間など伝統的な 銘木需要の減少は著しいと、銘木業界の危機感は高 まっています。
このため、たんに銘木を建築需要に限らず、机、 家具、小物、置物など、人の身近に置く需要に特化 したり、様々な樹種、アイテムの銘木木材にチャレ ンジして従来の伝統的な「銘木使い」を外れた需要 の開拓に努める企業も現れています。
すでに触れた ように、銘木とはそもそも住む人間が、優れて快適 な住環境を求める心が育ててきたものであり、時代 変化に応じて銘木の概念が変化しても当然でしょう。
要は一般の施主、消費者が志向する商品の開発が大 切だと言えます。
銘木業界では、こうした消費者のニーズを取り込 むと同時に、銘木をもっと身近に感じてもらおうと、 銘木PRも行っています。
業界の青年組織である銘 青連(全国銘木青年連合会)では、これまでもPR 雑誌、ビデオなどを製作してきましたが、今年から インターネットのホームページ (http://www.aiweb.or.jp/meisei/)も設置し、 あくまでも一般消費者向けへのアピールに努めてい ます。
住まいに自然のやすらぎを感じさせる銘木は、多 くの消費者に求められています。
今後の商品は供給 減による稀少価値化で高額化するケースも一方であ りますが、そうした需要ばかりではなく、新しい住 まい環境に合わせた、より多くの消費者に供給され る新銘木の需要がさらに高まるものと期待されてい ます。
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