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内装に木を使う 

 伝統民家の良さを受け継ぎ現代風に仕上げる

木の家をつくる建築家のこころ

大阪市/小南一郎建築研究所 小南一郎


1階リビング。

右に見える木製建具を引き込むと、緑に包まれた地区公園の景色が広がる。

●木を使って、住み良い家に日本古来の伝統民家の良さを本誌では紹介していますが、現実に家を建てることになった段階で、その良さはわかっていても、デザインの面、建築基準法の問題、コストの面などからなかなか伝統建築の家を建てるという方向へとは向かいにくい面がある。
しかし、プレハブ住宅にはまったく興味が持てない。
そのような施主は、どこに話を持っていったらいいのかわからないのが、実情ではないでしょうか。
木を家全体に使えなくても、使える部分に少しでも取り入れていけば、そこに住んだ人達から木の良さが理解され、周りにも広がり、木材の需要増へとつながっていくはずです。
本誌では、内装にこそ木材を使おうと訴えてきました。
内装は生活の中でいちばん触れ合う場所であり木の内装が生活空間を潤してくれます。
現代の住宅事情の中で、最大限に木を生かす使い方こそが内装です。
そこで、内装に木材をふんだんに使い、デザインの工夫によって、木造住宅の特性である自然と一体化した家を2軒紹介します。
今回紹介する家は建築家の小南一郎さんが設計したもので、共にモダンな外観ながら、一見木造住宅とは思えない家である。
住む人の好みも多様化し、この様な家に住みたいとの明確なイメージを持つ施主が増えてきた中で、新しい木造住宅の姿を提示している。
家に一歩足を踏み入れると、そこには木がふんだんに使われていて、目を楽しませて木の肌ざわりがまた一段と心地よさを伝えてくる、情緒を豊かにし、木の香りに包まれる家である。

1階キッチンからリビングを見る。料理をしていても,大きな窓から緑を眺めることが出来る。
1階和室。障子を開けると、リビングにつながり、大きなワンルーム空間となる。欄間にガラスを入れることで、さらに開放感を演出している。

木製建具の外には、広い木製デッキが設けられ、風を感じたり,光を浴びたりと自然と触れ合える。
外にあるので、メンテナンスが必要となるが、それも住む上での楽しみの一つである。

2階の主寝室。
構造梁の現しが目を楽しませてくれる。
南面のハイサイドライトから光が降り注ぎ、明るい空間となる。
●三田市、狭間ヶ丘の家三田市に建てられたこの家の施主は、はじめ、住宅メーカーの家を建てようと考えていた。
しかし、展示場をいろいろと見てまわったが、決められた部材で、ただ組立てられて行く住宅には魅力が感じられず、しかも、自分の好みを入れて建てようと思ったら、値段も決して安いものではないことがわかり、建築家に頼んで、自分の納得のいく家を建てたいと考えていた。
そんな折、小南さんが建築家数人で行っていた「住まい環境フォーラム」の存在を知り、年に6回のセミナーや、住宅の見学会などに参加して家づくりを学んだ。
1年間を通して、自分の求める家に一番近いのが小南さんだと感じ設計を依頼。
打ち合せをしながら1年かけて設計し、それから建築に1年で合計3年で完成した。
この住宅は郊外の住宅地にあり、敷地は約77坪。
北側の道路から2.5mほど上がった段上にあり、南は遊歩道を介して地区公園が広がり、遠くは六甲山系に連なる山並みが望める恵まれた条件の敷地である。
設計に際しては、この恵まれた自然を取り込み、ゆとりと広がりが感じられる住空間を生み出すことを基本のコンセプトとした計画で進められた。
この住まいは木造在来構法の2階建てで、天井には厚さ9㎜のスギ板、構造梁にはベイマツ、床には15㎜厚のナラの無垢フローリングが使われている。
1階は、約23畳大の広いリビング・ダイニングが南面し、木製建具を引き込むと木製デッキを介して四季折々に変化する公園の緑地、山並みの風景が肌で感じられる空間となっている。
1階には和室もあるが、和室の障子を開け放つと、大きなワンルームとして使える作りで、開放感にとんだ、伸びやかな住空間を提供してくれる。
2階はホールを挟んで、東側に主寝室、西側に子供部屋がある。
お子さんは3人いるが、子供部屋は間仕切りをせずに、ひとつの大きな空間として使っている。
子供部屋、主寝室とも南側にはハイサイドライトが設けられていて、光が入り、明るい空間である。
2階共に南北に風が通り抜け、白木、和紙、塗壁の室内空間と、周囲の自然が時の流れと共に調和する上質な住まい空間を実現させている。
施主はこれまでマンション暮らしだったため、自然とは隔絶された住環境であったが、この家では、風を感じ、太陽の光を感じ、雲の流れを見ることのできる家で、とても満足をしているという。

1階リビング。 右奥にキッチンがある。

御影の家 外観。
比較的人通りの多い東側道路に沿って、しっかりと壁を立ち上げている。
この家は南北に縦長の形状をしているので、中庭を作る事により、光、風を家全体に呼び込む。
●御影の家この家は、六甲山の麓、神戸・御影山手の閑静な住宅街の一角に建っている。
敷地は南と東が道路と面し、北に向って緩やかに上がって行く南北に長い傾斜地である 計画に際しては、この敷地形状を生かしながら、自然の光と風を程よく取りこみ室内にいながらも、四季折々の季節の気配を感じられる住まいを如何に創るかがメインテーマとなった。
比較的人通りの多い東側道路に沿って、しっかりとした壁を立ち上げ、敷地中央部には、光と風を取りこむ中庭を配して回廊を巡らし、更に屋根はTWINの片流れにハイサイドライトを設けて、常時空を望める居室空間を実現させている。
1階にキッチンとリビング・和室、2階には主寝室と書斎、子供部屋が2つ配されている。
床、梁、は三田の家と同じくナラとベイマツが使われているが、天井には長州ヒノキの間伐材が使われている。

1階和室からの眺め
収納等も木を使う 建築に当たっては、施主も交えて、届いた材をずらっと並べ、色目や柄などを見て、何処にどの材を使うかを考えながら決めて作ったという。
柱のヒノキ、梁のベイマツ材は施主と共に加工場まで見に行って材料を確認、最大限に材料を生かして家は建てられた。
だから施主もどこにどの様な材が使われているか把握しており、満足と、強い愛着の湧く家である。
立地上、防火の面などから一部を除き木製建具は使わず、アルミサッシを使っているが、中庭を作るなどの工夫により、窓を開ければ風が吹き抜け、光が入り、自然と一体になれる。
防火処理をほどこされた木製建具もあるが、人工的に処理されたもので、それは本来の木とはかけはなれたものと小南さんは感じている。
防火上やむなくアルミサッシを使っても、工夫次第で風が流れ、自然の光と緑を感じ、木の香りと暖かさを味わえる住まいを創ることができると考えている。
まだ新築の家だから、綺麗な白木だが、年を経るにつれ、味のある色合いに変化していく。
一緒に年をとることの出来る家である。
木を使っているのである程度のメンテナンスは必要となってくるが、それも住む上での楽しみの一つとなるはずである。
2軒とも肌に触れ合うところは木につつまれ、工夫によって、風と光を取りこみ、自然と一体となった家であった。
形こそ違えど、伝統的な木造住宅の良さが最大限にいかされている住宅であった。

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