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平井信二先生の樹木、木材研究

アセビ属の樹木(その2)
4.アセビの栽培品種と変種
 アセビは庭園樹、生垣、盆栽などに多く用いられて植栽されており、多くの栽培品種が選抜、または作出して育成されている。その主なものを以下にあげる。
 (1)ヒメアセビ(チャボアセビPieris japonica D.DON cv.Pygmaea(異名Pieris japonica D.DON var.pygmaea YATABE、Pieris japonica D.DON var.pygmaea REHDER):高さ1m以下の矮性で、ふつう葉も細小である。
 (2)フクリンアセビ(フィリアセビPieris japonica D.DON cv.Variegata(異名Pieris japonica D.DON var.variegata BEAN、Pieris japonica D.DON var.albo-variegata REHDER、Pieris japonica D.DON forma elegantissima NAKAI):葉は白覆輪。
 (3)チリメンアセビ(チジレバアセビ、チジミバアセビPieris japonica D.DON cv.Crispa(異名Pieris japonica D.DON forma crispa REHDER):葉縁がちじれる。
 (4)ダイセン(大山)Pieris japonica D.DON cv.Daisen:花は淡紅色。
 (5)Pieris japonica D.DON cv.Flamingo:花は紅色。
 (6)Pieris japonica D.DON cv.Christmas Cheer:花の先半分が淡紅色。以上3者はまたウスベニアセビ(アケボノアセビPieris japonica D.DON forma rosea MAKINOとして扱われることが多いと思われる。
 (7)Pieris japonica D.DON cv.Purity:花序は大きく多花で白色。
 (8)コウザン甲山Pieris japonica D.DON cv.Kozan:花序は上向。ウケザキアセビと呼ばれるものもこれと同一と思われる。
 (9)Pieris japonica D.DON cv.Bert Chandler:新葉は淡肉紅色からクリーム黄色になり、夏には緑色になって変化が美しい。
 アセビの変種には次のものがある。ヤクシマアセビPieris japonica D.DON var.yakushimensis YAMAZAKIは屋久島の海抜1,000m以上に生ずる。葉はやや細く、長楕円形または倒皮針形、花序は下垂せず直立して上向し、小花柄が曲がって花が下向きに咲くが、果期には果柄がまっすぐになって果実は上向する。
 なお変種または品種とされるものにホナガアセビPieris japonica D.DON var.monostachya NAKAI(異名Pieris japonica D.DON forma monostachya HARA)があり、花序は単一の総状花序で長さ10~30cmと記載されているが、とくに母種と区別しなくてもよいものと考えられる。  
5.アセビの材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺・心材の区別は不明瞭で、淡紅褐色などを呈する。年輪は不明瞭なことが多い。木理は交走し、あるいは波状になり、肌目はきわめて精である。しばしばピスフレック(髄斑、褐色斑)が現れる。
 道管は単独ときに2~3個が接続する。径は0.03~0.06mmできわめて小く、分布数はきわめて多い。階段せん孔をもつ。材の基礎組織をなすのは真正木繊維または繊維状仮道管である。軸方向柔組織は不顕著で、基礎組織中に散在する柔細胞が見られる。
 放射組織は1~3細胞幅である。その構成は異性で、単列部は直立細胞ないし方形細胞、多列部は平状細胞からなっている。
 材の気乾比重0.62~0.64、縦圧縮強さ400kg/cm2、縦引張強さ610kg/cm2、曲げ強さ510kg/cm2、曲げヤング係数4.7×10(4)kg/cm2の報告がある。
 樹に捩れがあり、繊維が交走しているため強度的数値が比較的低く、材は狂いが出やすい。また樹が小いので、材の利用は雑器具、旋削物、寄木細工、櫛などの小い物に限られるが、ときに皮付丸太が床柱に用いられることがある。かってはほとんどが 燃材となる程度であった。
 葉に含まれる有毒成分はジテルペノイド系のasebotoxin(andromedotoxin)、grayanotoxinその他で、人の場合は呼吸中枢の麻痺をひき起こす。かっては枝葉の煎汁を牛馬のしらみその他の駆除、野菜の害虫防除、便所のうじ殺しなどに多く用いた。樹 皮、材、枝葉を褐色系の染料に用いることがある。  
6.リュウキュウアセビ
 リュウキュウアセビ(オキナワアセビPieris japonica D.DON subsp.koidzumiana HATUSIMA(異名Pieris japonica D.DON var.koidzumiana MASAMUNE、Pieris koidzumiana OHWI)は奄美大島と沖縄島のごく狭い区域に限られて生じていたが、現在自生地ではほぼ絶滅に近いとされている。異名にあげたようにアセビPieris japonica D.DONとは別種、またはその変種とする考えも多いが、ここでは亜種とする扱いに従っておく。
 高さ5m、直径15cmまでになる常緑低木ないし小高木で、若枝は無毛である。葉は狭い倒皮針形で細長く、長さ4~7cm、幅0.8~2cm、先端はやや鈍く、葉身の基部は狭楔形で葉柄に翼状をなして流れ、葉身の上部1/3以上に少数の浅い鈍鋸歯があるほか は全縁である。葉柄の長さは0.3~0.8cmである。
 円錐花序は多数の花をつけて、ふつう上向し、花序軸と分枝は、長さ4~5mmの花梗とともに短毛をやや密生する。がくは5深裂し長さ約4mm、花冠は白色で筒状壷形を呈し、アセビより長く約10mmほどで、5浅裂する。雄ずいは10個で、花糸に短軟毛をや や密生し、葯の背面に長さ約1.5mmの刺状付属体2個をつける。子房は扁球形で5稜があり、花柱とともに無毛である。さく(蒴)果は扁球形で径約5mm、種子は長楕円形で長さ約2mmである。
7.タイワンアセビ(ホザキアセビ)
Pieris japonica D.DON subsp.taiwanensis HATUSIMA(異名Pieris japonica D.DON var.taiwanensis KITAMURA、Pieris taiwanensis HAYATA)も異名にあげたようにアセビPieris japonica D.DONと別種、またはその変種とする考えがあるが、ここではアセビの亜種とする扱いに従っておく。台湾中央山脈の海抜2,600m付近の高地に生ずる。英名をTaiwan andromeda、中国名を台湾馬酔木という。
 高さ4m、直径15cmまでになる常緑低木ないし小高木で、樹皮は紅褐色を呈する。若枝は無毛である。葉は倒皮針形で長さ6~9cm、幅2~3cm、鋭頭で、基部は楔形を示す。革質で、葉身の上半部に低い鋸歯をもつ。葉柄の長さは1~1.5cmでやや太い。
 総状花序または円錐花序はふつう上向し、ときに上方で下垂した花を多くつけ、花序軸、花梗に微毛がある。がくは5深裂し、ふつう緑色を呈する。花冠は白色で、壷形、長さ約7mmで5浅裂する。雄ずいは10個あり、葯の背面に2個の刺状付属体をも つ。子房は無毛である。さく(蒴)果は扁球形で径は約7mmである。
 栽培品種に葉縁がちじれるPieris japonica D.DON subsp.taiwanensis HATUSIMA cv.Crispaがある。
 R.KANEHIRA:『Anatomical Characters and Identification of Formosan Woods』に材の組織についての次の記載がある。
 散孔材。道管はおおよそ一様に分布するが、多少接線方向に並ぶ傾向がある。分布数は250~320/mm2、断面形は多角形で、径は0.05mmまで、階段せん孔で、内壁にらせん肥厚をもつ。基礎組織の繊維の長さは0.6~1.2mm、径は0.016~0.020mm、壁厚は0.0 02mmである。放射組織は1~3細胞幅で、構成は異性、単列部は直立細胞、他は平伏細胞からなる。
 葉、果実に有毒成分を含み、殺虫に用いられる。  
8.ヒマラヤアセビ
 ヒマラヤアセビ(コウザンアセビ)Pieris formosa D.DON(異名Pieris bodinieri LEVEILLE.Pieris huiana FANG、Pieris japonica D.DON subsp.formosa KITAMURA、Andromeda formosa WALLICH、Lyonia formosa HANDEL- MAZZETTI)はインド東北部・ネパール・ブータンのヒマラヤ地域、ビルマ、支那中部・南部、ベトナムに分布し、また庭園樹などとして植栽される。英名をHimalayan andromeda、中国名を美麗馬酔木、長苞美麗木、興山馬酔木という。
 高さ2~6mの常緑低木または小高木で、小枝は円く無毛または軟毛がある。葉は皮針形、長楕円形または倒皮針形で、長さ4~15cm、幅1.5~3cm、鋭尖頭または鋭頭、基部は鈍形から楔形を示す。革質で、葉身のほぼ全周に細鋸歯があり、上面は深緑色、 下面は淡緑色、成葉はほとんど無毛である。葉柄の長さは1~1.5cmである。新葉はふつう緑色ないし銅褐色を呈する。
 総状花序を枝端に近く腋生、ときに円錐花序を頂生し、長さ4~10cm、ときに20cm以上のものがあり、斜上または直立、ときに下垂する。花梗に軟毛がある。がくは緑白色で5深裂し、裂片の長さは約3mmである。花冠は白色を呈し、壼形で長さ6~9mm、 先端は5浅裂し、外面に軟毛を布く。雄ずいは10個あり、長さ約4mmで白色の軟毛がある。葯は2室、背面に2個の刺状付属体をつける。子房は扁球形で無毛、花柱の長さ約5mm、柱頭は頭状で小い。さく(蒴)果は卵形で、径は約4mm、種子は黄褐色で紡鍾形 を呈する。
 次の変種がある。シセンアセビPieris formosa D.DON var.forrestii AIRY-SHAW(異名Pieris forrestii R.HARROW)は支那西南部、ビルマ北部産で、新葉が黄紅色から紅色を呈し、観賞用に植栽される。これらの栽培品種に次のものがある。
 Pieris formosa D.DON cv.Wakehurst:新葉は銅褐色を呈する。
 Pieris formosa D.DON var.forrestii AIRY-SHAW cv.Forest Flame:アセビPieris japonica D.DONとの交雑から作出されたもので、新葉は鮮紅色を呈して美しく、耐寒性がある。  
9.Pieris swinhoei HEMSLEY
 Pieris swinhoei HEMSLEYは支那福建・広東省、香港に生じ、中国名を長萼馬酔木という。
 高さ2~3mの常緑低木で、樹皮は灰褐色を呈し縦の割れ目ができる。小枝は繊細で、微かに軟毛がある。葉は枝端に簇生し、狭皮針形で長さ4.5~8cm、幅1~1.5cm、短い鋭頭、基部は狭い楔形を呈する。革質で、葉縁の上半に疎らに鋸歯があり、両面無 毛、中肋は顕著で、側脉は水平に近く開出し網脉が明瞭である。葉柄は長さ0.2~0.7cmで短い。
 総状花序または円錐花序を腋生または頂生し、直立して長さが15~20cmある。花梗の長さは約5mmで軟毛を被むる。がくは5深裂し、裂片は皮針形で長さ5~7mm、革質で内面に短軟毛がある。花冠は白色を呈し、筒状壷形で長さ約10mm、先端が5浅裂し 無毛である。雄ずいは10個で長さ約6mm、花冠筒内にある。花糸は細く無毛に近い。子房は円錐形で長さ約2mm、黄褐色の短軟毛を密布する。花柱は細長で長さ約7mm、微かに軟毛があり、柱頭は細小である。さく(蒴)果はほぼ球形で径は約5mmである 。  
10.アメリカアセビ
 アメリカアセビPieris floribunda BENTHAM et HOOKER FIL.(異名Portuna floribunda NUTTALL、Andromeda floribunda PURSH ex SIMS)はアメリカ東南部に生じ、英名をevergreen mountain fetter bush、mountain fetter bush、fetter bush、mountain andromeda、mountain pieris、lily-of-the-valley treeという。
 高さ1~2mの常緑低木で、小枝に僅かに硬い毛がある。葉は皮針形、皮針状楕円形または長楕円形で、長さ3~10cm、鋭尖頭である。革質で、全縁または上半部に細かい鈍鋸歯があり、両面に硬い毛をもち、また縁毛がある。
 円錐花序は頂生して直立し、長さ5~10cm、花序に苞があり、短い花梗の中央付近に2個の小苞をつける。がくは5深裂し、裂片は3角形で長2~3mm、花冠は白色を呈し、壷形で長さ5~6mm、稜がある。果実の長さは5~6mm、種子の長さは2.5~3mmである。
 栽培品種に花序の長さが20cmを超えるPieris floribunda BENTHAM et HOOKER FIL.cv Elongataがある。  
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