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平井信二先生の樹木、木材研究

1.アカギ属
 アカギBischofia(異名Microelus、Stylodiscus)は一般にトウダイグサEuphorbiaceaeに入れられるが、その形態が特異なのでミツバウツギStaphyleaceaeにする説もあり、またこの属のみからなるアカギ科Bischofiaceaeに独立させる考えもある 。アジア南部・東南部からマレーシア、インドネシア地域を経てオーストラリア東北部、ポリネシアにわたり広く分布するアカギBischofia javanica BLUMEのみ、または支那産のもう1種を加えて2種からなっている。英名はbishop woodなど、中国名は秋楓、重陽木で、そのほか各地の名称はアカギのものと同一となる。>
 常録、半落葉または落葉高木で、内樹皮から紅色の樹液を滲出する。葉は互生する通常3出複葉で、縁に鋸歯があり、長い葉柄をもち、また托葉があるが早落性である。
 花は単性花で、雌雄異株、まれに同株、腋生の円錐花序または総状花序につく。5数性、放射相称で、花弁と花盤はなく、がく片が5個あって離生する。雄花ではがく片がすり合わせ状に配列し、雄ずいが5個あってがく片と対生する。花糸は短く、葯は 大きく2室があり内向して縦に裂開する。退化雌ずいが1個あり、小くて短柄をもつ。雌花ではがく片が瓦重ね状に配列し、雌ずいは1個、子房上位で3室まれに4室からなり、各室に中軸胎産の胚珠2個を含む。花柱は2~4個で長く肥厚し、頂瑞の柱頭部分は 伸長して直立または外方に弯曲する。きわめて小さい退化雄ずい5個をもつ。果実は小い液果状の石果で、中果皮は肉質、内果皮(核)は堅い紙質で、中に種子3~6個をもつ。胚乳は肉質で、子葉は広く扁平な葉状である。地上発芽をする。
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2.アカギの概要
 アカギ(カタン、アタン、コウキ)Bischofia javanica BLUME(異名Bischofia trifoliata HOOKER、Bischofia toui DECAISNE、Bischofia oblongifolia DECAINE、Bischofia roesperiana DECAINE、Bischofia cumingiana DECAISNE)は琉球(沖縄諸島、八重山列島)に生じ、またインド、ネパール、バングラデシュ、ビルマ、タイ、支那、台湾、インドシナ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、パプア・ニューギニア、ニュー・ブリテン、オーストラリア東北部、ポリ ネシア(サモア、トンガ)に広く分布し、わが国では小笠原諸島で野生化し、そのほか熱帯・亜熱帯の各地で植栽ないし、野生化しているものがある。
 英名はbishop wood、Java bishop wood、Java cedar、red cedar、仏名はbois de l'eveque、インドでkaen、paniala、uriam、bhillar、バングラデシュでuriami、kanjal、ネパールでkainjal、ビルマでtayok-the、boaungza、aukkyu、ye- padauk、タイでterm、toum pradu-som、中国で秋楓、重陽木、茄苳、茄冬、赤木、万年青樹、烏楊、水架、ベトナムでnhoi、loi、do trang、ラオスでkhom fat、fong fat、カンボジアでko phum phak、マレーでjitang、サバでtuai、インドネシアでgadog、gintungan、bintungan、keranjing、gerondijing、フィリピンでtuai、toog、dueg、ulayan、フィジーでkokaなどという。
 常緑または半落葉の高木で、高さ40m、直径2.3mまでになるものがあるが、琉球では高さ25mほどまでである。樹幹はほぼ通直または形が不良で、通常低い処から分岐する。ときに高さ3mまでの険しい板根をもつものがある。樹皮は灰褐色から紅褐色、紫 褐色を呈し、初めは平滑に近いが、やがて割れ目が入り、小くて厚い裂片ができてささくれる。傷つくと内樹皮から紅色の樹液が滲出する。小枝は無毛である。葉は互生する3出複葉でまれに5小葉からなる。小葉は卵形、卵状楕円形で長さ7~15cm、幅 4~8cm、短尾状鋭尖頭、基部は楔形から鈍形を示す。紙質で縁に浅い鈍鋸歯があり、幼時脉上に僅かに細軟毛があるが後に無毛となる。頂小葉柄の長さは2~5cm、側小葉柄の長さは0.5~2cmである。総葉柄の長さは8~20cmで長く、膜質で皮針形、長さ約8 mmの托葉をもつが早落性である。
 春に開花し、腋生の円錐花序または総状花序に多数の淡緑色の小花をつける。雄花序の長さは8~13cmで、多く分岐して幅が広く、雌花序の長さは15~27cmで、疎らに分枝し下垂する。花序に僅かに軟毛があるか、または無毛である。雄花は径2.5mm までで、がく片が5個、雄ずい5個があり、また中央に短柄で広い楯状をなす退化雌ずい1個をもつ。雌花には脱落性のがく片5個、雌ずい1個、きわめて小い退化雄ずい5個がある。子房上位で球形、3室ときに4室で、各室に胚珠2個を含む。花柱は3個で柱頭 部分で開出して曲がる。果実は8~10月に熟し、球形の石果で径1.2~1.5cm、青黒色を呈し裂開しない。核内の各室に種子1~2個をもち、種子は長楕円形、倒卵形で、長さは約5mm、褐色を呈する。  
3.アカギの材の組織
 散孔材。辺・心材の境界は通常明瞭で、辺材は淡黄白色から淡褐色、淡紅褐色を呈し、幅は1~4cmで狭い。心材はやや紫色を帯びた褐色、濃褐色、濃紅褐色を呈し、空気にさらされて暗色を増す。生長輪は不明瞭なものが多い。木理は一般に交走するか または波状をなし、また比較的通直なものもあり、肌目はやや精ないしやや粗で、均質である。伐採直後の材には酢の匂いがする。リップルマークは見られない。
 材の顕微鏡的構成要素が材を占める割合を求めた1例では、道管19%、繊維47%、軸方向柔組織2%、放射組織32%である。
 道管は単独および放射方向に2~3、ときに5個まで接続、まれに少数個が団塊状に接続し、一般に単独のものの割合はやや少い。分布数は4~20/mm2の範囲の記載がある。単独道管の断面形は円形から楕円形で、道管の径は0.03~0.32mmまでの記載がある が、0.10~0.20mmのものが多い。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔はやや多角的などで交互配列をし、径はふつう0.010~0.014mmである。道管・放射組織間の壁孔は円形ないし長楕円形で、壁孔縁の狭い半縁壁孔対または単壁 孔で、その長径は0.020mmまでのものがある。チロースがよく発達し、また樹脂様物資を含んでいるものがある。
 材の基礎組織を形成しているのは、僅かに壁孔縁が認められる有縁壁孔をもつ繊維状仮道管または単壁孔をもつ真正木繊維で、長さは1.1~3.4、平均的に2.2mm程度で、広葉樹材では長い方に入る。径は0.02~0.06mmにわたり、壁厚は0.003~0.007mm である。隔壁をもつものが多く隔壁数は3~9個である。中に着色した樹脂様物資を含むものが多い。
 軸方向柔組織はきわめて少く、僅かに道管周辺などに散在する柔細胞があるに過ぎない。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。樹脂様物資を含んでいる。
 放射組織は1~5、ときに6細胞幅であるが、単列のものと4~5細胞幅の多列のものとの2型にわかれる傾向が強い。5~70細胞高であるが、多列のもので20~45細胞高が多い。多列のものの軸方向両端部は1~6細胞高の単列部になり、また中間にも数細 胞高の単列部を挟んで上下に接続するものもある。構成は異性で、単列部および多列部の一部に鞘細胞になって直立細胞または方形細胞の層があり、他は平伏細胞の層からなる。細胞中には樹脂様物質を含み、また辺縁の直立細胞または方形細胞に菱形の 結晶があり、ときにこれが上下方向に2~4個に区切られた隔室になっている。シリカは見られない。  
4.アカギの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.52~1.01の範囲の記載があるが、0.70~0.80などのものが多い。材質数値の例をあげる。生材から含水率12%までの収縮率は、接線方向3.2~6.2%、放射方向1.0~2.6%、縦圧縮強さ464~607kg/cm2、曲げ強さ1,040~1,132kg/cm2、 曲げヤング係数10.7~11.7×10(4)kg/cm2、せん断強さ173~214kg/cm2、ヤンカ硬さは横断面984~1,155kgである。
 材の化学的組成に次の報告がある。セルロース49~51%、ペントザン9.7~14.4%、リグニン23~42%、冷水抽出物4.1%、温水抽出物5.0~5.8%、アルコール・ベンゾール抽出物1.4~8.0%、1%NaOH抽出物11.1~29.4%、灰分0.4~1.1%。
 製材は生材では容易であるが、乾燥するとやや困難となる。乾燥は干割れ、狂い、コラップス、内部割れが出やすいので一般に困難である。鉋削、型削、旋削、研削は一般に良好で平滑な面が得られ、ユリア樹脂接着剤による接着、塗装もあまり問題が ない。釘打ちで割れが出にくく、釘の保持も良好である。ロータリー単板製造では切削、乾燥ともにあまり良い結果が得られていない。パルプ化には繊維が長いので紙用に望ましく、硫酸塩法でほぼ良い結果が得られている。材の耐久性については種々の 評価があり、外気、接地条件では一般に腐朽しやすいが、水中では長くもつとの記載が見られる。白蟻、海虫に対しては抵抗性がなく、辺材にはキクイムシの食害があり、また変色を生じやすい。防腐処理は心材はきわめて困難である。
 樹は地方的に一般によく知られているので現地での各種の材利用が多い。パプア・ニューギニア地域ではJava cedarの名で市場材として出材される。材の用途を列挙すると、建築を含む軽構造材、フローリング・パネル・縁材その他の建築造作材、家具、槌・臼・桶樽・農具その他の器具材、枕木・坑木・舗木・杭・橋梁などの土木材、包装材、船舶、楽器、彫刻 、銃床その他がある。台湾でシタンDalkergia spp.の模擬材、琉球で漆器の木地、三味線の棹に用いられる。インドで茶箱に用いられたが、それには重すぎるという。燃材としては良質でないが、とくに鍛治用木炭に用いるとの記述がある。
 樹皮にタンニンを7~16%含み、紅色や黒色の染料、漁網やロープの補強に用いる処がある。果実は食べられ、また酒に作られる。葉は緑肥にし、また10%ほどの酒石酸を含むのでその製造原料に考えられたことがある。種子からの油は食用、潤滑油と なり、葉や根は風邪や胞毒の民間薬に用いられる。樹は庭園樹、行道樹に植栽されるが、またコーヒーやカルダモン栽培の庇陰樹に用いられる。  
5.Bischofia polycarpa AIRY SHAW
 Bischofia polycarpa AIRY SHAW(異名Celtis polycarpa LEVEILLE、Bischofia racemosa CHENG et C.D.CHU)は支那中部・南部産で、中国名は重陽木、烏楊、紅桐などという。
 高さ15m、直径50cm、ときに1mまでになる落葉高木で、樹皮は褐色を呈して縦の割れ目が入り、小枝は無毛である。葉は3出複葉で、小葉は卵形または楕円状卵形、長さ5~14cm、幅3~9cm、頂小葉は通常側小葉よりやや大きい。短い尾状鋭尖頭、基部は円 形ないし浅心形を示す。紙質で、縁に細かい鈍鋸歯があり、頂小葉柄の長さは1.5~6cm、側小葉柄の長さは0.3~1.4cm、総葉柄の長さは9~13.5cmである。托葉は小さく早落性である。
 雌雄異株で、総状花序を新枝の下方に着生し、花序軸は繊細で下垂する。雄花序の長さは8~13cm、雌花序の長さは3~12cmである。雄花のがく片は5個で半円形、雄ずいは5個、花糸は短く、中央に明瞭な退化雌ずい1個をもつ。雌花のがく片は雄花と同 様で、雌ずいは1個、子房は3~4室あり、各室に胚珠2個を含む。花柱は2~3個ある。果実は液果様の石果で、球形を呈し径は0.5~0.7cm、熟して紅褐色となる。
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は淡紅色、淡紅褐色、心材は紅色から紅褐色を呈する。材の肌目はやや精で均質、光沢がある。道管は小さく径が0.05mmほどで、分布数は64~113/mm2の記載がある。やや重硬で、建築、家具、車両、船舶、器具 などに用いられる。種子に油分30%を含有し、食用、潤滑油、石けん製造に用いられる。果実は酒に作られる。樹は行道樹などに植栽される。
 記載によると、アカギBischofia javanica BLUMEと異なるのは、落葉高木であること、小葉の形が多少違うこと、材の道管の径が著く小さく分布数が多いことなどであるが、果して別種として扱ってよいものか疑問がある。
 
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