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平井信二先生の樹木、木材研究

セイロンテツボク属の樹木
1.セイロンテツボク属の名称と分布
 セイロンテツボク属(テツザイノキ属)MesuaテリハボクClusiaceaeまたは科を細かく分割しない場合のオトギリソウGuttiferaeに属する。ここではMesuaから離して別属とすることも多いKayeaを異名として扱っておく。この類は次項以下で記すよ うに、狭い意味のMesuaすなわちおもにセイロンテツボクMesua ferrea LINNAEUSの材がきわめて重硬なことにくらべて、一般にかなり軽軟で、また材の組織もやや異なっていることがあげられている。なおセイロンテツボク属はテリハボクCalophyllumマメーリンゴMammeaときわめて近縁である。
 このようにセイロンテツボク属を広義にとると、狭義のMesuaとされるもの1~3種、Kayeaとされるもの40種以上が、インド、スリランカ、バングラデシュ、ビルマ、タイ、支那南部、インドシナ、広くマレーシア・インドネシア地域からオーストラリア の北部クィーンズランドにわたる間に分布している。
 各地の名称はセイロンテツボクpenagaとする)とKayeaとされるもの(penaga tikusとする)にわけているのが普通である。penagaの各地名称はセイロンテツボクと同一であるので、その項にあげる。
 penaga tikus(マレー名)については、サバでbintangor batu、サラワクでmergasing、ブルネイでtaikakang、mergasing、インドネシアでwetai koeni、wetai naoe naoe、wetai singko、morowetai、semangkap、wakフィリピンでkaliuasという。
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2.セイロンテツボク属の形態
 常緑のふつう高木で、樹幹は円柱状のものから形の悪いものまである。一般に樹幹基部に溝が現れ、ときに板根をもつものがある。内樹皮から透明な黄色などのゴム質の液滴を分泌する。葉は対生する単葉で全縁、通常楕円形から長楕円形を呈し、無毛 、下面はときに灰白色を呈する。ふつう革質で、側脉は多数、平行して直走し縁近くでループになって連結する。網状をなす三次脉は顕著なものが多い。ときに多少残存性の有柄で托葉状の葉柄上葉があり、また葉柄基部に対になる針状の托葉をもつもの がある。
 花は腋生または頂生して単出、または開出した円錐花序につき、両性花である。花梗に小さい対をなす苞をつける。がく片は4個で、2個ずつで十字対生し、ふつう宿存性で果時には肥大、硬化する。花弁は4個で、白色または淡紅色を呈する。雄ずいは 多数で、離生または基部でのみ合着し、葯は2室で底着し縦に裂開する。雌ずいは1個、子房上位で1~2室、各室に1~2個の中軸胎座の胚珠をもつ。花柱は組長、柱頭は楯状(狭義のMesua)または4裂する(Kayeaとされるもの)。
 果実はさく(朔)果で、通常球形を呈し、先端はしばしば嘴状となる。薄い木質で、通常落下前に2~4弁に裂開する。この果実は宿存の肥大したがく片上にのるか、またはそれに包まれており、樹脂質の液滴を分泌する。種子は1~4個で、地下発芽をす る。  
3.セイロンテツボク属の材の組織
 penaga(ほとんどセイロンテツボクMesua ferrea LINNAEUS)とpenaga tikusKayeaとされるもの)とにわけて記すが、前者はセイロンテツボクの項にあげる。ここではKayeaとされるものについて、おもに緒方健:『南洋材の誠別』によって記載する。
 penaga tikusは散孔材で、セイロンテツボクと異なって、道管が数個ずつグループをなして放射方向などの線に配列する傾向はほとんどなく、ほぼ一様に散在する。辺・心材の推移はゆるやかで、セイロンテツボクのような明瞭な境界は見られない。辺材は淡黄 褐色~灰褐色、心材は褐色からやや紫色を帯びた紅褐色を呈する。縦断面で帯状柔組織が濃色の筋として認められる。木理はほぼ通直ないし交走し、肌目はやや精ないし精で均質である。特別な匂いや味はない。通常生長輪は見られない。
 道管はほとんど単独であるが、ややまれに放射方向に2個接続するものがある。分布数はセイロンテツボクより多く、11~35/mm2である。断面形は円形などで、接続方向の最大径は0.12~0.21mmであるが、普通の道管の間に径が0.02~0.05mmの小径のもの が混じる。単せん孔をもち、チロースはふつう見られない。道管周辺に存在する仮道管はセイロンテツボクで多いのとくらべてずっと少い。繊維状仮道管が主であるが、道管に直接接続するものに道管状仮道管とみられるものがある。
 材の基礎組織を形成するのは有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、例(Mesua paniculata KOSTERMANS)として、長さ1.3(1.0~1.9)mm、接線方向の径0.015~0.025mm、壁厚0.0025mmが記載されている。軸方向柔組織では帯状柔組織がある。放射方向に数細胞層があり、0.4~1.0mmのほぼ規則的な間隔で同心円状に連なって存在する。細胞内に結 晶を含むことがあるが少い。
 放射組織は1~3、部分的に4細胞幅まであり、最大高は1.1~1.6mmである。この点はセイロンテツボクではふつう1、まれに部分的2細胞幅であることと異なっている。構成は直立細胞または方形細胞の層と平伏細胞の層とからなる異性である。一般に細胞 内に着色物質を含むことが多い。シリカはとくに直立細胞中に認められるものがある。  
4.セイロンテツボク属の材の性質と材その他の利用
 この属の材の性質と利用についてもpenaga(ほとんどセイロンテツボクMesua ferrea LINNAEUS)とpenaga tiusKayeaとされるもの)にわけ、前者についてはセイロンテツボクの頭に記す。
 penaga tikusの材の気乾比重は0.71~0.81で、セイロンテツボクがきわめて重硬であるのにくらべて、やや重硬ないし重硬という程度のものが多い。
 天然乾燥は通常良好に進行するが、干割れと変色がやや出やすい。製材、切削加工は困難があまりなく、仕上げ面は良好である。心材の耐朽性はあまり高くなく、露出および接地条件では耐朽性はない。
 penaga tikusの材は建築構造材・造作材、家具、キャビネット、器具、包装用材および一時的な用途の雑用材に用いられる。わが国にも少量輸入されている。
 材以外のものの利用でセイロンテツボク属全般について記すと、種子は油を多く含み、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキディン酸のグリセリドがその主成分である。灯用、香料製造に利用され、また皮膚病、リューマチの薬用とされる 。花は芳香があるので枕やクッションのつめ物とされ、香料、薬用にも用いられる。この属の樹、ことにセイロンテツボクは行道樹、庇陰樹、庭園樹に植栽される。  
5.Mesua assamica KOSTERMANS
 Mesua assamica KOSTERMANS(異名Kayea assamica KING et PLAIN)はインドのアッサム産で、またマレーシアにも分布するとされている。インドでsia nahorという。
 高さ20mほどになる高木で、樹幹は通直である。葉は楕円形などで、長さ8.8~11cm、鋭尖頭、基部は楔形を呈する。無毛。花は腋生および頂生の束出する円錐花序につく。果実は径が2cmほどで、宿存し肥大した木質の2個のがく片の上にのり、2弁に裂 開すると他の2個のがく片が目に入る。
 材の気乾比重に0.75の記載があり、屋内使用ではやや耐朽性がある。  
6.Mesua ferruginea KOSTERMANS
 Mesua ferruginea KOSTERMANS(異名Kayea ferruginea PIERRE)はアンダマン、マレー半島、スマトラ、バンカ島、ボルネオ、セレベスに分布し、マレーでbuah sembawangという。
 高さ25m、直径60cmまでになる小~中高木である。葉は楕円形などで長さ8~12cm、幅3~4.5cm、尾状鋭尖頭、側脉は10~12対ある。葉柄の長さは0.5~1.2cmである。腋生の総状花序は長さ2.5cmまでで、2~4個の花をつける。果実は径6cmまでで、宿存し 肥大して肉質から葉質になったルーズな4個のがく片に包まれる。
 材はpenaga tikusとして利用されると推定される。
7.Mesua floribunda LINNAEUS
 Mesua floribunda LINNAEUS(異名Kayea floribunda WALLICH)はインド東北部、ビルマに生じ、インドでkarram-jowa、kurun、kurulという。
 高木。葉は長楕円状皮針形で長さ12.5~22.5cm、革質である。花は頂生の大きい円錐花序につく。がく片4個はほとんど同形で緑色、花弁4個は白色で瑞部が淡紅を帯びる。果実の径は3.8~4.4cmで、宿存し著しく肥大した黄色のがく片に包まれる。種子1 個を含む。  
8.Mesua nervosa PLANCHON et TRIANA
 Mesua nervosa PLANCHON et TRIANA(異名Kayea nervosa T.ANDERSON)はビルマのテナセリウムとマレー半島に生ずる。
 高さ10~13m、直径30~50cmになる低木または小高木で、小枝と葉柄にざらつく紅褐色の細毛がある。葉は卵形などで長さ7.5~14cm、幅3.8~6.3cm、鈍頭または短尖頭、基部は浅い心形から円形を呈する。薄い革質で、側脉は約12対あり、下面で隆起す る。葉柄は長さが0.25cmで、残存性で皮針形、長さ1cmの葉柄上葉と、小さい托葉をもつ。
 花は1~3個が腋生および頂生して束出し、花梗の長さは8~12mmである。花の径は約3cmで白色を呈する。がく片の外側の2個は円形、内側の2個は長楕円形で外側の2倍の長さがある。花弁4個は倒卵形である。果実はほぼ球形で径は約1.9cm、嘴状部があ り、宿存し肥大したがく片に支えられているが、包まれてはいない。  
9.Mesua stylosa KOSTERMANS
 Mesua stylosa KOSTERMANS(異名Kayea stylosa THWAITES)はスリランカ産の高木で、現地名をsuvandaという。樹皮は暗灰色を呈する。
 散孔材であるが、道管はグループをなして放射方向の線に配列する。心材は紅色を呈し、道管の大きさは中位である。材の気乾比重に0.90の記載がある。  
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