平井信二先生の樹木、木材研究

サキシマスオウノキ属の樹木
4.Heritiera simplicifolia KOSTERMANS
 異名にTarrietia simplicifolia MASTERSがあり、マレー名:mengkulang、mengkulang siku keluang:インドネシア名:teraling、linganその他がある。分布はマレー、スマトラ、ボルネオ。高さ50m、直径150cmまでになる大高木で、樹皮は灰褐色~紅褐色、ほぼ平滑からやや不規則に浅い裂け目が入りストリップになって剥げる。単葉で広楕円形 ~倒卵状楕円形、長さ5.5~17cm、幅3~10cm、葉柄はきわめて長く2.5~6cmある。果実は卵形で長さ1cmほど、背腹線に小さい隆起があり先は長さ10cm、幅3cmほどの大きな翼となる。
 心材は紅褐色。林業試験場のteralingによる顕微鏡的要素の材構成割合を測定した例では道管8.7%、繊維状仮道管68.5%、軸方向柔組織6.9%、放射組織15.9%である。道管は単独または放射方向に2~5個が接続し、これに小道管が介在して接線方向にも2~ 3個接続するものがある。分布数は接続道管群を1個として1~6/mm2、径0.04~0.24mm。基礎組織は林業試験場のteralingによる観察では繊維状仮道管で、長さ0.81~1.56~2.21mm、径0.02~0.03mm、壁厚0.002~0.004mmである。軸方向柔組織は短接線柔組 織ないし散在する柔細胞と周囲柔組織がある。短接線柔組織は放射方向に1~2細胞層、接線方向に2~5細胞連なり必ずしも放射組織間を完全につながない。短接線間に介在する繊維は放射方向に4~15細胞層である。周囲柔組織は0~3細胞層であまり翼状に 発達しないが、ときに翼状からのびた帯状柔組織に近い形に移行するものがあり、このものは放射方向に2~7細胞層で層数と形は不規則である。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.0015mmで、中に濃色の物質を含むものが多い。放射組織は1~5細 胞幅、3~50細胞高、大部分は平状細胞からなるが、上下両端1~3層および周縁の大部分は直立ないし方形細胞からなる鞘状部となる。
 材の気乾比重には0.60、0.60~0.89、0.62、0.65、0.75の記載があり、生材から気乾までの収縮率の例に放射方向1.5% 、接線方向3.0%、teralingで強度を求めた例に縦圧縮強さ507(485~526)kg/cm2、曲げ強さ803(627~1,027)kg/cm2、曲げヤング係数11.6(10.8~12.0)×10(4)kg/cm2がある。
5.その他のmengkulang
 mengkulangとして扱われるものに、なお次のものがある。
(1)Heritiera borneensis KOSTERMANS
 異名にTarrietia borneensis MERRILL、Tarrietia .unifoliolata RIDLEYがある。マレー名はmengkulang、kamuning hutan。分布はマレー、スマトラ、ボルネオ。高さ45m、直径80cmまでになる大高木で、樹皮は紅褐色、裂け目が入り鱗片状で剥げる。葉は2~3個の小葉からなる掌状複葉であるがときに単葉で、下面に鱗状毛がない。小葉は皮針形~楕円形、長さ6~27cm 、幅2.5~6cm。果実はHeritiera javanica KOSTERMANSに似る。
(2)Heritiera sumatrana KOSTERMANS
 異名にTarrietia sumatorana MIQUEL、Tarrietia perakensis KINGがある。マレー名:mengkulang、mengkulang jari bulu;サバ名:kembang。分布はマレー、スマトラ、ボルネオ。高さ40m、直径100cmまでになる大高木で、樹皮は黄褐色で裂け目が入り鱗片状で剥げる。葉は3~5(~7)個の小葉からなる掌状複葉で、小葉は楕円形、長さ4~18cm、幅2~9cm。果実は長さ2.5 ~3.5cmで先端に長さ3~5cm)幅1~1.5cmの翼がつく。
(3)Heritiera aurea KOSTERMANS
 マレー名:mengkulang;ブルネイ名:mengkulang sipu keluang。分布はボルネオ。大高木になり葉は単葉である。
(4)Heritiera elata RIDLEY
 マレー名:mengkulang。分布はマレー、ボルネオ。高さ35m、直径80cmになる。葉は単葉、楕円形~倒卵状楕円形、長さ6~28cm、幅3~12cmで葉脈は基部で3行脈状をなす。果実は長さ3~5cm、頂部の翼はやや3角状で長さ1.5cmまである。材の気乾比重0.78 ~0.80の記載がある。
6.Heritiera sylvatica VIDAL
 異名にTarrietia sylvatica MERRILLがある。インドネシア名:rorum、roemoe wanea;サラワク名:dungun、フィリピン名:dungon。分布はボルネオ、フィリピン。材の顕微鏡写.真があるので、主にそれに基づいて記載する。散孔材で、道管は単独または放射方向に2~4個が接続しときに小道管が介在する。分布数は接続道管群を1個とし て2~4/mm2、径は0.04~0.20mm、単せん孔、濃色の内容物をもつ。繊維は径0.02~0.04mm、壁厚0.002~0.004mm。軸方向柔組織には短接線柔組織、周囲柔組織、帯状柔組織がある。短接線柔組織は数が多く放射方向に1~2細胞層、多くは1細胞層、接線方向 に2~10細胞が連なり放射組織を架橋するものが多い。短接線間をうめる繊維は2~5細胞層である。周囲条組織は1~3細胞層で2細胞層のものが多い。帯状柔組織は放射方向に2~7細胞層で短接線柔組織との移行が見られる。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁 厚はO.0015~0.002mmで、大部分の細胞の中に濃色の物質を含む。また鎖状に連なる結晶が見られる。放射組織は1~7細胞幅、2~60細胞高。上下両端1~2層および周縁の一部は方形ないし直立細胞または大形の平伏細胞からなるが、鞘状部としてはあまり 発達しない。細胞内に濃色物質、結晶、シリカが見られる。
 心材は暗紅褐色で、mengkulang類にくらべると重硬で気乾比重の値に0.87、0.94がある。耐朽性は高い。用途は地方的のものが多く杭材などに用いられる。
7.インド~インドシナのサキシマスオウノキ属
 インドからインドシナヘかけては、これまであげたものと次項に記すsundri以外に、次のようなものがある。
(1)Heritiera cochinchinensis PIERRE
 異名はTerrietia cochinchinensis PIERREがあり、タイ名:chumphraek;ベトナム名:huynh;カンボジア名:don chembey samlek、ラオス名:nhemである。分布はタイ、インドシナ。大高木になり、葉は5~7個の小葉からなる掌状複葉である。材の気乾比重に0.64、0.68、0.72、0.80があり、交走木理が著しい。強度の1例に縦圧縮強さ588kg/cm2、曲げ強さ1,256kg/cm2、曲げヤ ング係数11.0×10(4)kg/cm2がある。耐朽性は比較的大きい。
(2)Heritiera macrophylla WALLICH
 分布はビルマ東部の内陸産で、大高木になる。単葉で長楕円形、果実は球形に近く先端に急に凸出した偏平な嘴状部をもつ。
 この他にもインド東部からバングラディシュ、ビルマにかけて数種が分布している。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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