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平井信二先生の樹木、木材研究

トネリバハゼノキ屬の樹木
1.トネリバハゼノキ屬の概要
トネリバハゼノキ屬(ランシンボク屬、カイノキ屬、ピスタキア屬)Pistaciaは一般にウルシAnacardiaceaeに含められるが、またそれから独立したトネリバハゼノキ科(ピスタキア科)Pistaciaceaeとされることもある。地中海周辺のヨーロッパ南部・ アフリカ北部、カナリア諸島、アジア南部、アメリカ南部から中米に15種ほどが分布し、またピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSはナッツの果樹として広く各地に植栽される。英名はpistachio、独名はPistazie、仏名はpistachier、中国名は黄連木という。
 常緑までは落葉の高木または低木で、芽は数個の鱗片をもつ。葉は互生する三出複葉、奇数羽状複葉または偶数羽 状複菜、まれに単葉で、全縁、托葉はない。単性花で雌雄異株、通常総状花序または円錐花序を腋生または頂生する。花に花弁がなく風媒花である点がトネリバハゼノキ科を別にする根拠となっている。小花柄の基部に小苞2個をもつ。雄花は通常がく片1 ~2個、雄ずい3~5個をもち、花糸は短く、葯は卵形で大きい。雌花はがく片2~5個と雌ずい1個をもち、子房は上位で無柄、1室からなり胚珠1個を含み、花柱は短く3裂する。果実は球形ないし歪んだ卵形をなす石果で、内果皮(核)は骨質、中に扁平な 種子1個を含む。子葉は片側凸面で油脂に充たされている。  
2.トネリバハゼノキ屬の材の組織、性質と材その他の利用
環孔材ないし半環孔材であるが、またほとんど散孔材に近い種類がある。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色、淡褐色など、心材は黄褐色、紅褐色、褐色などで、緑色を帯びるものがあり、しばしば黒褐色などの縞がある。生長輪は明瞭なものが多く 、ときに不明瞭である。木理は通常交走し、肌目は環孔材系のものはやや粗ないし中位、散孔材に近いものではやや精のものまでがある。
 道管は環孔材のものでは孔圏がふつう1~4個道管幅、孔圏外では径が著しく小さくなり、斜線状などに接続ないし 近接して紋様をなす。分布数は孔圏で12~18/mm2の例があり、孔圏外では30~70/mm2の範囲で多様である。単独道管の断面形は円形、卵形、楕円形など、道管の径は0.01~0.34mmまでの記載があるが多くは0.25mmまでである。せん孔板は水平ないし傾 斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有緑壁孔は交互配列をし、その径は0.006~0.014mmである。小径道管の内壁にらせん肥厚をもつ。一般にチロースが豊富である。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維または繊維状仮道管で、長さは0.3~1.2mm 、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.004~0.006mmである。隔壁繊維は見られない。
 軸方向柔組織は一般に量が少く、周囲柔組織は不規則で0~3細施層であるが、孔圏では基礎組織様に道管並列の間を埋めているものがある。径は0.01~0.04mm、壁厚0.001~0. 002mmである。
 放射組織は1~4、ときに5細砲幅であるが、単列のものはふつう少い。1~44細砲高または以上であるが、25細抱高までの比較的低いものが多い。水平細胞間道を中に含むものはその部分で細胞幅が多くなり、また高さも大となる。構成は異性で、単列の ものおよび多列のものの両瑞単列部と中間のごく一部は直立細胞または方形細胞の層、他は平状細胞の層である。細砲内に樹脂様物質を含み、またしゅう酸石灰の結晶が見られるが、シリカは含まれない。
 水平細胞間道は少く、標本で観察されない場合 がある。放射組織の中央付近に1個が含まれ、その径は0.03~0.08mmである。
 材の気乾比重に0.74~1.12の範囲の記載がある。材は重硬な割合には切削などの加工は困難が少く、心材の耐朽性は高い。
 量的にまとまって出材されることがほとんどな いので、一般の市場材になることはないと思われる。家具、建築内装材、器具、銃床、彫刻、小細工品などに利用される。
 この属で有用でよく知られているのはナッツを生産するピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSである。そのほかには香料とする樹脂を出すもの、油脂、タンニン、薬用となるものがあり、樹は庭園樹などに植栽されるものがある。  
3.ピスタシオノキの概要
 ピスタシオノキフスダシウ、フスダスPistacia vera LINNAEUSの原産地はトルキスタン南部と考えられ、古くから栽培されてアジア西部、地中海沿岸地域に広まり、現在では世界各地で栽培されている。英名をpistachio、pistache、green almond、独名をechte Pistazie、仏名をpistachier、中国名を阿月渾子、真■香という。
 高さ6~10mになる落葉高木で、樹冠は広く開張する。奇数羽状複葉で、小葉は多くは3~5個であるが、ときに11個まで、まれに単葉である。卵形などで長さ3~10cm、鈍頭または微凸頭、基部は広い楔形などを示す。やや革質で、両面は初め有毛である が後に無毛となる。小葉柄はほとんどなく、総葉柄は長い。
 円錐花序は長さ7~10cmで、雄花序は花が密に、雌花序は疎につく。花は帯緑褐色を呈する。果実は卵円形ないし長楕円形で長さは約2.5cm、先端はやや尖がり、紅色を帯びて皺がある。内果皮(核)は白色骨質で硬く、熟すると先が割れる。子葉は 緑色ないし黄色を呈する。  
4.ピスタシオ・ナッツ
 ピスタシオノキの核の中の子葉の部分は脂肪が最高56%までと、蛋白質20%ほどを含んでいて、世界中で広くデザートナッツとして好まれている。またアイスクリームやシャーベットに入れたり、各種の菓子にもよく使われている。
 その栽培は3,000~4,000年前にも遡るといわれ、紀元1世紀にはローマで植えられ、以来ヨーロッパ南部・アフリカ北部の地中海地域に広まり、現在ではイタリア、トルコ、シリア、イラン、アフガニスタン、カリフォルニアなどが大きい生産地になって いる。日本には文政年間(1818~1829)に渡来したが、気候が適しないので栽培はほとんどない。
 世界各地にいろいろな品種が知られている。シリアにはAbiad、Mirwahy、Ayimiなどがあり、ナッツが比較的大きい。シシリー、チュニスの品種のナッツ は小さく香味が良い。アメリカにもAleppo、Bronte、Keyなどの品種がある。一般にナッツの緑色の濃いものほど上質とされている。繁殖は接木によることが多く、台木にはテレビンノキPistacia terebinthus LINNAEUSその他の同属の樹が用いられる。
 油脂はまた皮膚軟化剤などの薬用、化粧品にも用いられる。果皮および葉に生ずる虫えいからタンニンを抽出し鞣皮や染色に利用する。樹幹から乳香称の樹脂を採ることがある。  
5.テレビンノキ
 テレビンノキ(テレピンノキ、トクノウコウ、篤■香)Pistacia terebinthus LINNAEUSは地中海沿岸地域の産で、英名をterebinth tree、Chian turpentine tree、Cyprus terpentine、独名をTerpentin-Pistazie、仏名をpistachier terebintheという。聖書の中に度々この樹が現れる。
 高さ9mまでになる落葉小高木である。奇数羽状複葉で、小葉は5~13個あり、卵状皮針形で長さ3~6cm、微凸頭を呈し、無毛である。
 腋生で長さ5~15cmの円錐花序に緑色の小花がつく。雄ずいは紫色、雌ずいの柱頭は紅色を呈する。果実は卵円形など で長さ約0.8cm、初め紅色で、後に紫褐色となり、皺がある。
 樹幹を傷つけて、透明で緑色の芳香あるテレピン油(Chian terpentine)が得られる。薬用とされる。果皮は芳香があり食用となる。花序軸や葉に生ずる虫えいのタンニンを布の染料、鞣革に用い、樹皮のタンニンも利用される。樹はピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSの接木台木に用いられる。  
6.マスチックノキ
 マスチックノキPistacia lentiscus LINNAEUSはヨーロッパ南部・アフリカ北部の地中海地域、トルコからバルーチースタンに至るアジア西部に生じ、またエーゲ海のキオス島、アルジェリアなどで植栽されている。英名をmastic tree、Chios mastic tree、lentisk pistache、独名をMastix‐strauch、仏名をarbre au mastic、lentisqueという。薫香料の乳香が得られるが、本来のアラビアの乳香はカンランBurseraceaeのニュコウジュBoswellia carterii BIDWILLの樹脂であって、マスチックノキをそのまま乳香とするのは適当でない。中国ではこのものを洋乳香という。
 高さ4~7.5mの常緑低木ないし小高木で、密に分岐する。小枝には不快な匂いがあり、無毛でいぼ状物を布く。偶数羽状複葉で、小葉は4~10個あり、狭皮針形ないし倒卵形で長さ2~4cm、鈍頭などを示す。革質で葉軸に翼がある。腋生の総状花序に小花 をつけ、黄色または紫色を呈し、葯は紅色である。果実はほぼ球形で径は2.4cmほど、初め紅色を呈し後に黒色となる。
 材は雑用材程度に用いられるに過ぎないが、樹幹を傷つけて滲出する樹脂はmasticで乳香とされる。この樹脂はmasticadienoic acidなどのトリテルペン類とピネン同族体を主成分とする精油1~3%を含んでいる。薫香料、噛み料、歯科用充填剤、ワニス混合用樹脂などに用いられ、ときにリキュールの付香料や、止血の薬用とすることがある。樹皮のタンニンを染料などに利用する ことがある。また樹はピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSの接木台木とされる。  
7.Pistacia atlantica DESFONTAINES
 Pistacia atlantica DESFONTAINESはアルジェリアなどのアフリカ北部に生じ、英名をMt.Atlas masticという。高さ20m、直径1.2mまでになる落葉高木である。奇数羽状複葉で、小葉は7~11個あって皮針形を呈する。ピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSの接木台木に用いられる。  
8.Pistacia aethiopica LINCZ
 Pistacia aethiopica LINCZ.はエチオピア、ケニアで生じ、ケニアでmuhehete、chepkorwetなどという。
 高さ17mまたは以上、直径60cmになる高木で、しばしば多幹で開張する樹冠をもつ。樹皮は黒褐色を呈し、小枝と葉をつぶすとテルペン臭がする。偶数羽状複葉で長さ1 0cmまで、小葉は4~10個、通常6個あり無柄である。長楕円状皮針形、卵形などで、しばしば左右不同、多くは長さ2~4cm、幅0.6~1.3cm、鈍頭または微凹頭、基部は楔形を示す。葉軸に狭い翼がある。花は腋出して束生する短くて細い総状花序につき、 葯は紅色を呈する。果実は小さく斜になった球形で紅色となる。  
9.Pistacia mutica FISCHER et MEYER
 Pistacia mutica FISCHER et MEYER(異名Pistacia cabulica STOCKS)はバールチースタン、イラン、トルコ、トランス・コーカシアに産し、バールチースタンでgwan、khanjack、badwarという。
 高さ8m、直径1mまでになる落葉高木で、樹皮は灰色から暗褐色を呈し、縦の割れ目があって粗い。奇数羽状複葉で、小 葉は5~9個、卵状長楕円形で鈍頭である。葉軸に狭い翼をもつ。果実は倒卵形で長さ3cmほどである。
 環孔材で、辺・心材の区別は明瞭、辺材は黄白色、心材は小さく紅褐色、暗褐色を呈する。孔圏の道管にくらべて孔圏外の道管の径は小さく、接続ま たはグループに集合して斜線状その他に配列する。材は緻密で重硬である。
 樹幹を傷つけるとマスチックノキPistacia lentiscus LINNAEUSと同様の樹脂を滲出する。樹はピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSの接木台木となる。  
10.Pistacia integerrima J.L.STEWART
 Pistacia integerrima J.L.STEWARTはインド西北部の西ヒマラヤ地域、アフガニスタンの産で、インドでkaka、kakra、kangar、tungi、アフガニスタンでshue、sarawan、masuaなどという。
 落葉高木で、樹皮は灰色を呈し粗である。若枝は紅色を呈する。偶数または奇数羽状複 葉で、小葉8~11個あり、通常対生し、皮針形で長さ7.5~15cm、基部は左右不同である。始め細軟毛があり、小葉柄はきわめて短く、芳香をもつ。果実は球形に近く、径は約0.6cmである。
 環孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は白色、心材は黄褐色 を呈し、黄色と暗色の縞が出る。生長輪は明瞭である。孔圏に大径の道管が並び、孔圏外では道管の径はきわめて小さくなり、接続または集合して配列しジグザグなどの不規則な紋様をあらわす。放射組織は微細で数が多い。水平細砲間道が存在する。
 材の気軽比重に0.74~1.01の記載があり、重硬で耐朽性が高い。家具、建築装飾材、彫刻などに利用される。葉はラクダ、バッファロの飼料になり、葉につく虫えいは民間薬に用いられる。  
11.Pistacia khinjuk STOCKS
 Pistacia khinjuk STOCKSはバルーチースタン、アフガニスタン、イラン産で、バルーチースタンでushgai、buzgaiという。
 低木または小高木で、樹皮は淡灰色を呈し平滑である。小葉が3~5個の複葉で、小葉は楕円形ないしほとんど円形、長さ2.5~7.5cm、鋭尖頭を示す 。マスチックノキPistacia lentiscus LINNAEUSのものと同様の樹脂を生じIndian mastic、Bomby mastic、中国で薫陸香(くんろくこう)とされるが、現在の市場品が確かにこの樹のものか必ずしも明らかでない。おもに薫香料に用いられ、また鎮痛、消炎などの薬用となる。  
12.Pistacia mexicana HUMBOLDT、BONPLAND et KUNTH
 Pistacia mexicana HUMBOLDT、BONPLAND et KUNTHはアメリカのテキサス州西部からメキシコを経てガテマラまで分布し、アメリカでpistache、メキシコでalmacigo、lantrisco、ramon、yagagueigueiという。
 高さ10mまで、直径38~45cmとなる常緑の大低木ないし小高木で樹幹は短い。奇数羽状複葉で、小葉は9~29個あり、卵形で小さく、鈍頭、無毛でほとんど無柄である。葉柄に翼がある。腋生の円錐花序に小花がつく。果実も小く、ほとんど乾質で紫色を 呈する石果である。種子は食べられる。枝から樹脂を滲出する。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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