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平井信二先生の樹木、木材研究

カポック属の樹木(その1)
1.カポック属
 カポック属Ceiba(異名Eriodendron)はパンヤ科(キワタ科)Bombacaceaeに属し、10種ほどがおもに熱帯アメリカに原産するものとされている。属の和名にパンヤ属、インドワタノキ属を用いる文献があるが、その名のもととなったパンヤ、インドワ タノキはもともとカポックCeiba pentandra GAERTNER、キワタBombax malabaricum DE CANDOLLEの2者についての混乱があるので、使わない方がよいと考えられる。英名はsilk cotton、kapok、ceiba、中国名は吉貝が用いられる。
 落葉高木で、通常板根が出る。樹幹と枝に刺があるかまたはない。葉は互生する掌状複葉で、小葉は3~9個あり、大部分は全緑で、短い小葉柄をもつ。総葉柄は長い。
 花は葉より先に出て、葉脈に単生または2~15個が束生する。両性花で大きく通常放射相称である。がくは鐘状壺形で不規則に2~12裂し厚く、花冠や雄ずいといっしょになって脱落しない。花弁は5個であるが、基部で合着し、黄白色または淡紅色を呈 する。雄ずいは3~15個あって、花糸の下端は短い筒状に合着し、その上で分離し、またそれらが5個の束に集成する。集成した各花糸束の頂端は1~3個の捩れた葯をつけ葯は1室である。花粉はコウモリが媒介する。花後に花冠は雄ずいと一緒になって脱 落する。雌ずい1個で、子房は5室あり、各室に多数の胚珠を含む。花柱は細長く、柱頭はふつうやや膨れるが分裂しない。果実は木質または革質のさく(蒴)果で、下垂し楕円形または倒卵形、胞背裂開して5片となる。果片の内面に綿毛を蜜布し、多数 の種子は綿毛中に包まれる。種子は仮種皮をもち胚乳は少ない。
 この属ではカポックCeiba pentandra GAERTNERが最も良く知られた代表種であるので、材の組織、性質および材のその他の利用については、カポックの項で記載する。  
2.Ceiba aesculifolia BRITTON et BAKER FIL.
 Ceiba aesculifolia BRITTON et BAKER FIL.(異名Ceiba grandiflora ROSE, Chorisia soluta D.SMITH)はメキシコ西部、グァテマラ産の落葉高木で、高さ5~6m、直径20~40cmとなる。枝に小さい刺がある。掌状複葉をなす小葉は3~5個で、長楕円形、長さ5~6cm、基部は楔形を呈し、全緑または微鋸歯がある。無毛。
 花は外面帯褐色、内面白色で長さ10~13cm、がくは円筒状で上端に短歯があり、花弁は線形で肉質、絹毛を多く生ずる。雄ずいは5個の束に集成する。  
3.Ceiba samauma K.SCHUMANN
 Ceiba samauma K.SCHUMANNは南米熱帯産の高木で、ペルーでhuimba, huimba negraという。M.A.MALLQUE & Y.KIKATA :『Atlas of Peruvian Woods』によって材の組織の概要を記す。
 散孔材ないし半環孔材とされている。辺材は暗クリーム色、心材は暗紅褐色を呈する。生長輪は明瞭で、木理は通直または軽く交走し、肌目は粗で均質である。光沢は中位で、もくが出る。辺材は菌に侵されやすい。
 道管は単独および放射方向に接続し、単独道管の断面形は卵形を呈する。道管の分布数は1~5/m㎡で、その接線方向の径は0.26~0.27mm、せん孔板は水平に近く、単せん孔をもつ。心材部の道管にチロースがあり厚壁のものが多い。
 真正木繊維が短接線柔組織と放射方向に交互に積層して材の基礎組織を形成し、繊維の長さは2.70~2.78㎜(?)、径は0.023㎜と記載されている。
 軸方向柔組織には周囲柔組織、放射方向に2~6細胞層のターミナル柔組織、繊維と放射方向に積層して材の基礎組織を形成する短接線柔組織とがある。柔細胞のストランドは層階状に配列し、多室結晶細胞がある。通常の柔細胞中にはゴム状物質を含む 。
 放射組織は1~10細胞幅で、軸方向の高さが著しく大きいものがあって0.79mmまでに達する。その構成は異性である。軸方向端末に油細胞になっているものがある。通常の細胞内にまれに斜方晶系の結晶がある。
 材の気乾比重に0.36、0.69の記載がある。0.69のもので、生材から気乾までの収縮率は接線方向3.9%、放射方向1.9%、体積5.3%、縦圧縮強さ287kg/c㎡、縦圧縮ヤング係数11.9×10(4)kg/c㎡、横圧縮強さ42kg/c㎡、曲げ強さ582kg/c㎡、曲げヤング係 数10.5×10(4)kg/c㎡、せん断強さ71kg/c㎡を示す。
 建築構造材・造作材その他に用いられ、また合板に作られる。この合板が悪臭を発することが研究されている。これは原木を水中貯木する際に嫌気性バクテリアによって醗酵することに由来するもので、匂いのもとは酪酸、吉草酸、カプロン酸などが生 ずることによる。  
4.カポックの起源と名称
 カポック(カポックノキ、ホンパンヤノキ、シロキワタ、アオハダワタノキCeiba petandra GAERTNER(異名Ceiba thonningii A.CHEVALIER, Ceiba casearia MEDICUS, Ceiba occidentalis BURKILL,Bombax pentandrum LINNAEUS, Eriodendorn anfractuosum DE CANDLLE,Eriodendron pentandrum KURZ, Eriodendron occidentale DON, Eriodendron orientale STEUDEL)は世界中の熱帯で広く植栽されており、また各地に自生状のものも見られるので、その原産地は明確になっていないが、中・南米を原産とする考えが多い。また中、南米、アフリカ、アジアにわたって次の3変種があるとの扱いもある。
 (1)Ceiba pentandra GAERTNER var. caribaea BAKHUIZEN:中・南米および西アフリカの天然林に自生。
 (2)Ceiba pentandra GAERTNER var. guineensis H. G. BAKER:西アフリカのサバンナに自生。
 (3)Ceiba pentandra GAERTNER var. indica BAKHUIZEN:栽培種で、西アフリカおよびアジアで多く植栽され、また野生化しているものもある。上記(1)(2)の自然交雑から生じたと考えられている。
 和名にパンヤ、パンヤノキ、インドワタノキ、インドキワタを用いる文献があるが、キワタBombax malabaricum DE CANDOLLEとの混同があるので、標準名に使わない方がよい。なお園芸方面でカポックと称しているのは、全く関係がないウコギ科フカノキ属のヤドリフカノキSchefflera arboricola HAYATAホンコンカポックはその園芸品Schefflera arboricola HAYATA cv. Hongkongである。
 英名はkapok, kapok tree, silk-cotton tree, white silk-cotton tree, cotton tree, corkwood, ceiba, 独名はkapokbaum, Wollbaum, Panjabaum,仏名はkapokier, fromager, arbre a coton, 中国名は吉貝、古貝、美州木綿、爪哇木綿という。そのほかに各地に次のように名称が多い。インド:safed simal, shevet simul, pania, katan, buruga, スリランカ:impul, pulum imbul, pulung, ビルマ:thinbaw-letpan, バングラディシュ:tula, srimatula, タイ:num, カンボジア:roka, マレーシア:kapok, kabu, kakabu, インドネシア:kapok, randu,フィリピン:kapok, コートジボアール:enia, ガーナ:onyina, ナイジェリア:rumi, araba, okha, カメルーン:boum, ザイール:fuma, メキシコ:pochote, arbol de algodon, グァテマラ:inup, nup, ニカラグァ:ceibon, paniki, スリナム:kankantrie, ベネズエラ:ceiba yuca, コロンビア:ceiba bonga, ペルー:lupuna blanca, ブラジル:sumauma, sumaumeira, arvore de seda, barriguda, capoc, paina de sedaである。  
5.カポックの形態(1)
 通常高さ20~30m、直径40~50cmになる落葉高木であるが、大きいものは高さ50m、直径2.5mまでに達する。樹幹は円柱状で、ときに中程以下がやや太くなるものがあり、板根はほとんど出ないものから大きく発達するものまでがある。枝は疎らに出て3本 ほど輪生し、水平に近く張り出して特異な形を呈するが、年を経てこの状態は不明瞭となる。樹皮は若齢木では淡緑色を帯び、壮齢木以上では灰白色、灰褐色、褐色などを呈し、樹幹と枝、とくに若齢木に円錐形で太く短い刺を持つものが多いが、ときに 刺を欠くものもある。
 葉が互生する掌状複葉で、小葉は5~9個あり、楕円状皮針形などで長さ5~16cm、幅1.5~4.5cm、短鋭尖頭、基部は楔形、全緑または先端近くに疎らな細かい鋸歯がある。下面は灰白色を帯び、両面無毛、小葉柄は長さ3~4mmできわめて短い。総葉柄は長 さ7~25cmである。
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