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平井信二先生の樹木、木材研究

シビット属の樹木(その2)
7.シビットの概要
 シビットSwintonia floribunda GRIFFITH(異名Swintonia floribunda GRIFFITH var.floribunda、Swintonia griffithii KURZ、Swintonia helferi HOOKER FIL.、Swintonia puberula PEARSON)はバングラデシュ、アンダマン諸島、ビルマ、タイ、ベトナム、カンボジア、マレー半島、スマトラに生ずる。バングラデシュでcivit、am chundul、ビルマでtaung thayet、thayet san、civit、タイでshitle、ベトナム、カンボジアでmuom、マレーでmerpauh daun runching、merpauh、インドネシアでkereta、bagal、mirah、kedondong rabukなどという。
 高さ30ときに45mまで、直径75ときに90cmまでになる常緑の中高木ないしかなりの大高木で、樹幹はふつう円柱状で通直であるが、しばしば曲がりくねりや角稜があり、板根は高さ2.5mまでのものが出る。樹皮は淡灰色から紅褐色を呈し、浅い割れ目 が入るものや小い凹凸あるいは鱗片化するものがある。小枝は無毛である。葉は楕円形、長楕円形、楕円状皮針形、または倒卵状長楕円形などで長さ5~25cm、幅2~6cm、鋭頭ないし鈍頭、基部は狭い楔形を示す。薄い革質で、側脉は10~20対あり、無毛 で、下面に乳頭様物はない。葉柄は長さ2.5~4cmで細く、上面に溝がある。
 長さ15cmほどの円錐花序を腋生または頂生し、その分枝は開出して疎である。花序軸に細軟毛をもつ。花は分枝の先に3個ほどが集散状につく。花は径8mmほど、がくは鐘形で、長さの1/4~1/3まで5個の裂片が切れこみ、その幅は広い。花弁は5個で、長 楕円形、長さ3.5~4mm、基部は楔形を示す。白色から薄黄白色を呈ししばしば両面に細軟毛を布く。雄ずいは花弁とほぼ同長である。花盤は円筒状である。石果はほぼ球形で径1.25~1.75cm、宿存して肥大した花弁は狭い長楕円形でやや鋭頭、長さ3.5 ~9cm、紅紫色などを呈する。
 変種に葉形などがやや異なる次のものがある。Swintonia floribunda GRIFFITH var. penangiana KOCHUMMEN(異名Swintonia penangiana KING)。  
8.シビットの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別は不明瞭で、灰白色、帯紅灰白色、灰褐色、帯黄灰褐色などを呈する。生長輪はターミナル柔組織でほぼ認めることができる。木理は通直または交走し、肌目はふつうやや粗である。まれに接線断面で部分的にかすかなリップル マークが認められることがある。しばしば引張アテの著しいものがある。
 道管は単独および2~数個が放射方向ときに団塊状に接続し、単独のものが多い。分布数は10/mm2ほどである。単独道管の断面形は円形から広楕円形を呈し、道管の径は0.03~0.30mmを示す。せん孔板は水平ないし少し傾斜し、単せん孔をもつ。道管と 放射組織との間の壁孔対は大きく、形は不規則で円形ないし楕円形など、配列も不規則である。チロースはないかまたは少い。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維または繊維状仮道管で、径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.005mmである。
 軸方向 柔組織では、周囲柔組織は不完全な鞘をなし、0~1細胞層、ときに横断面でみて放射方向外側に帽状に3細胞層まである。帯状柔組織は明瞭で、間隔および細胞層数は変化があり、放射方向に2~13細胞層、またほとんどの道管がこれと接触している。生長 輪端ではターミナル柔組織となる。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~2細胞幅で、2列のものが多い。高さは5~35細胞高または以上である。ただし水平細胞間道を含むものは、接線断面で紡鍾形を呈し、最も広い 部分は6細胞幅まである。構成はほぼ異性で、軸方向端部1ときに4層までの単列部は大型の細胞で、これらと単列のものの大部分は丈が低い直立細胞または方形細胞の層、他がさらに低い平伏細胞の層である。細胞内に樹脂様物質を含む。
 水平細胞間道 は紡錘形放射組織の中央に1個が含まれ、その出現は少い。断面形は楕円形などで、軸方向の長径は0.06mmまでである。  
9.シビットの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.57~0.85の範囲の記載があり、0.65~0.80ほどのものが多い。気乾比重0.76のものの材質に次の報告がある。生材から気乾(含水率17%)までの収縮率は接線方向1.5%、放射方向0.8%(この値はきわめて低いと思われる)、縦 圧縮強さ525kg/cm2、横圧縮強さ71kg/cm2、曲げ強さ1,051kg/cm2、曲げヤング係数16.6×10(4)・kg/cm2、せん断強さ128kg/cm2、割裂抵抗は放射断面44kg/cm、接線断面54kg/cm、ヤンカ硬さは縦断面544kg。
 製材では引張アテの著しいものは挽き面に 毛羽立ちを生じ、鋸歯がつまるが、その他はほぼ容易である。天然乾燥で割れなどが出ないが、変色を生じやすいので、伐倒後速かに製材し、製品を直ちに通風の良い堆積にすることが必要とされる。鉋削などの切削加工は引張アテが著しいものを除き、 ほぼ良好で平滑な仕上げ面が得られる。ロータリー単板切削は一般に良好で、原木の前処理なしでしっかりした単板が得られる。釘の保持はほぼ良いが、打ちこみで割れが出やすい。材の耐朽性は外気・接地条件ではないが、屋内使用ではかなり耐朽性が あり、また水中に浸される場合でもややあるとされる。キクイムシにおかされることはないとされ、白蟻・海虫には抵抗性はない。防腐薬剤の注入は辺・心材ともかなり容易である。
 この樹はバングラデシュとビルマでは普通にあり、この地域では有用 樹種、ことに合板用の主要なものの一つである。マレーシア地域ではmerpauh材のおもな供給源であるが、量的に少い。用途をあげると、建築を含む一般構造材、パネル、フローリング、ドアー、窓枠その他の建築内装・造作材、家具、箱と包装材などが あり、これらは素材のほか合板の形でも用いられる。また船舶、器具、マッチ軸木と箱その他がある。パルプとして品質が良いという。燃材にも広く用いられる。
 ビルマで樹液をパンノキArtocarpus樹種のそれに混ぜて鳥もちに用いる。  
10.Swintonia acuta ENGLER
 Swintonia acuta ENGLER(異名Swintonia luzoniensis MERRILL、Swintonia acuminata MERRILL)はボルネオとフィリピンに生じ、サバでmedan、merpauh、サラワクでmaban、rengas petoh、ブルネイでpitoh、pitoh ai、bitoh、インドネシアlanghei、フィリピンでkaluis、langasという。
 高さ30ときに45mまで、直径65ときに95cmまでになる中高木ないし大高木である。板根は高さ3mまでのものがあり、樹皮は灰色または帯黒色を呈し、やや平滑または浅く狭い割れ目が入って剥がれ、跡は紅褐色の斑状となる。葉は楕円形から皮針形で長 さ5~16cm、幅1.7~6cmである。無毛で、下面脉上に乳頭様物は出ない。葉柄の長さは1.5~5cmである。
 がくはほとんど基部まで裂片となる。花弁は長さ2.5~3.5mm、基部は楔形から鈍形を呈し、両面の先端部付近に細軟毛を散生する。石果は楕円形 で長さ1~2cm、宿存して肥大した花弁は長さ4~6cmである。
 材はmerpauhとして利用される。  
11.Swintonia foxworthyi ELMER
 Swintonia foxworthyi ELMERはスマトラ西部、ボルネオ北部、フィリピンに生じ、サバでpitoh、ブルネイでrengas bukit、フィリピンでlomarauという。
 高さ40mまで、直径1mまでになる中高木ないし大高木で、高さ3mまでの板根が出る。樹皮は紅褐色または暗褐色で、平滑または僅かに裂片化する。葉は楕円形、まれに皮針形で長さ5~15cm、幅1.5~5.5cm、無毛、下面に乳頭様物が顕著である。葉柄の長 さは1.5~5.5cmで、上面は通常平坦である。
 花のがくはほとんど基部まで裂片化する。花弁は長さ2~3mm、基部が狭まって爪部となり、両端の先端部分に細軟毛を散生する。石果はほぼ球形で径1.25~1.75cm、宿存して肥大した花弁がつき、その長さは5.5~7.5cmである。果実はときに虫嬰化し て径2.5cmの球体となる。
 材はmerpauhとして利用されると推定される。  
12.Swintonia glauca ENGLER
 Swintonia glauca ENGLERはスマトラ東部とボルネオに生ずる。サバでtelauchap laki、サラワクでselan merah、rengas pitoh、ブルネイでselan merah、pitoh bukit、pitoh、rengas、インドネシアでrengas tiongという。
 高さ30mまで、直径70cmまでになる高木で、ときに高さ1.5mまでの板恨が出る。樹皮は灰色ないし淡紅褐色を呈し、平滑またはいくらか裂片化する。葉は皮針形、まれに楕円形で長さ6~13cm、幅2.7~6cm、無毛、下面に顕著な乳頭様物を布く。葉 柄の長さは2.5~4cmで、上面は平坦か、または溝がある。
 花のがくはほとんど基部まで裂片化する。花弁は長さ3~3.5mm、基部は切形または鈍形を呈し、両面に細軟毛を密布する。石果は楕円形で径1.7~2.5cm、宿存して、肥大した長さ約5.5cmの花弁をつける。
 材の気乾比重に0.64~0.72の記載がある。材はmerpauhとして建築内装その他に利用される。  
13.Swintonia lurida KING
 Swintonia lurida KINGはマレー半島に生ずる小高木である。葉は長楕円形で長さ15~20cm、幅3.5~5.5cm、急鋭尖頭、基部は楔形を示す。薄い革質で、側脉は22~24対あり、下面は灰白色を呈する。葉柄の長さは1.5~4.5cmで、太い。
 円錐花序を小枝の先端部で腋生し、長さ10~30cmで幅は狭い。花は分枝の先に小い集散状になってつき、径は1.5mmほどできわめて小い。黄緑色を呈する。がくは杯状で、三角形の5裂片がある。花弁は5個でその2倍長、長楕円形で無毛である。雄ずいは 5裂片ある花盤の外側に挿入される。  
14.Swintonia minutalata DING HOU
 Swintonia minutalara DING HOUはボルネオのサラワク、カリマンタンに生じ、サラワクでpetoh、rengas、インドネシアでnjalaという。
 高さ25mまで、直径50cmまでになる小高木から中高木で、高さ1mまでの板根が出る。樹皮は淡紅色を呈し、平滑または小い裂片になって剥げる。
 葉は楕円形で長さ11.5~22.5cm、幅3~6.5cm、鈍頭ないし鋭頭、基部は楔形を示す。無毛で、下面に明瞭な乳頭様物がある。葉柄の長さは3.5~6.5cmで、上面は平坦である。
 花のがくはほとんど基部まで裂片となり、花弁は長さ1.5~2.5mm、両面に細軟 毛を散生またはほとんど無毛となる。石果は球形で径は約1.5cm、宿存して肥大した長さ0.75~1.25cmの花弁をつける。
 材はmerpauhとして利用されると推定される。  
15.Swintonia robinsonii RIDLEY
 Swintonia robinsonii RIDLEYはマレー半島に生ずる高木である。葉は皮針形で長さ15cm、幅5~5.5cm、両端に向って少こし狭まる。こわい革質で、側脉は約15対あり、葉柄の長さは4cmほどである。
 円錐花序は長さ7.5cm、花梗は角ばり細軟毛がある。がくの裂片は卵形で円頭 、細軟毛を布く。花弁は長楕円状皮針形で長さ3mm、鈍頭で、内面に細軟毛がある。雄ずいの花糸は細い。石果はエンドウ形で、宿存して肥大した長さ0.6cmほどの花弁をつけるが、これは果実より短い。  
16.Swintonia spicifera HOOKER FIL.
 Swintonia spicifera HOOKER FIL.はマレー半島、スマトラ、ボルネオに生じ、マレーでmerpauh daun tebal merpauh、mupus rengas kilat senja、サラワクでselan pitoh、インドネシアでkeretaという。
 高さ36ときに54mまで、直径80cmときに1.15mまでになる中高木ないし大高木で、板根はやや高く、しばしば高さ4mまでになる。樹皮は紫褐色、暗褐色などを呈し、小い凹凸があったり、割れ目が入ったり、鱗片化あるいは裂片化したりするものがある。
 葉は楕円形まれに卵形または倒皮針形で、長さ5.5~23cm、幅2.5~6cm、鋭頭ないし鈍頭、基部は楔形を示す。厚い革質で、側脉は13~20対あって下面で顕著、無毛、下面に乳頭様物がないか、またはきわめてかすかに存在する。葉柄の長さは1.5~6cmで 、上面は平坦または僅かに凸面をなす。
 円錐花序は小枝の先端に群出し、花序柄はやや太く、花は分枝の先端に3個ほどが密接してつく。花の長さは5mmで、白色を呈する。がくは肉質の筒状で、その長さ1/5~1/3まで5裂し、細軟毛を布く。花弁は倒卵状長楕円形でがく裂片の2倍長あり、雄ず いはこれより短い。石果は楕円形などで長さ2~2.5cm、宿存して肥大した長さ約3.5cmの花弁をつける。
 材は淡紅褐色を呈する。材中にシリカを含む。材の気乾比重に0.64~0.88の範囲の記載がある。材質には次の報告がある。生材から気乾までの収縮 率は接線方向1.8%、放射方向0.9%、縦圧縮強さ576kg/cm2、曲げ強さ1,102kg/cm2、曲げヤング係数18.5×10(4)・kg/cm2、せん断強さ138kg/cm2、割裂抵抗は放射断面72kg/cm、接線断面51kg/cm、ヤンカ硬さは縦断面613kg。
 材はmerpauh材のおもな 供給源の一つである。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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