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平井信二先生の樹木、木材研究

コチレロビューム属の樹木
1.コチレロビューム属の概要
 コチレロビューム属Cotylelobiumはフタバガキ科Dipterocarpaceaeに属し、5種ほどがスリランカ、タイ、マレー、スマトラ、ボルネオに分布している小さな属である。地方名にはタイでkhian、ブルネイでresak batu、インドネシアでresak bukitがある。マレーシア地域では一般に、またとくに木材を対象としたときにバチカ属Vaticaのものと区別せずに、ともにresakといい、インドネシアでは木材はgiam(本来はメラワン属Hopeaの重硬材の名称)として扱われることが多い。
 常緑の小高木から大高木までにわたり、大きいものは高さ50m、直径1.6m、ときに2.1mまでになる。樹は通直で円柱状、枝下が30mまでのものがあるが、しばしば捩れていたり、また低い処から枝を出すものもある。板根は小さく円頂である。樹皮はふつ う灰色から黄褐色で初め平滑で環紋をもつが、次第に不規則に裂片化して剥がれ渦巻き状などの多少の凹凸がある表面を殘す。小枝にはしばしば星毛または短い叢生毛を密生する。
 葉は互生する単葉で長楕円形など、全縁、革質、中肋から互いに平行してでる側脉は葉縁近くで分岐し、互いに連結して縁の僅か内部に沿って走るループの脉を作る。3次脉は網状をなす。下面に鱗片がある。葉柄は比較的短く、托葉はあるが早落性の ものが多い。
 花は両性花、5数性で放射相称、甘い香りをもつ。がく裂片は瓦重ね状で離生、長さ不同で密生する毛がある。花弁は離生、長楕円形などで黄白色から淡紅色を呈する。雄ずいは15個あって長さ不同、3輪になって配列する。花糸は短く、葯は4室で長楕 円形、縁に沿って剛毛があり、葯隔に短いが付属体をもつ。雌ずいは1個で子房上位、がくと離生し球形で足体はない。密に綿毛を被むる。花柱は細長で子房の3倍以上の長さがあり、基部近くに綿毛を生じ、柱頭は小さく3裂する。
 果実は球形の堅果で種子1個を含む。果時に残存するがく裂片はほとんど基部から離生し、うち2個は大きくへら形などで鈍頭、3個は小さく鋭頭である。
 以上の形態はバチカ属VaticaSect.Sunapteaと本質的な区別が少ないように思われる。とくにあげれば葉縁に沿って側脉の先端が連結してループとなり葉縁内脉ができることと、次項に記すように材にシリカが認められることなどであるが、A.J.G.H.KO STERMANSがしているように、CotylelobiumとVaticaSect.Sunapteaとをいっしょにして別属Sunapteaとするのが妥当かと思われる。しかしここでは一応従来の多くの取扱に従っておく。  
2.コチレロビューム属の材の組織
 散孔材。辺心材の境界は明瞭で、辺材は淡黄褐色、心材は黄褐色から紅褐色で、時日の経過とともに濃色となる。木理は通直または浅く交走し、リボン杢(もく)が現われるものがある。肌目はふつう精で均質である。生長輪は不明瞭。リップルマーク は見られない。
 材の顕微鏡的構成要素は道管、繊維状仮道管、軸方向柔組織、垂直樹脂道と放射組織とである。道管はほとんどが単独で一様に散在し分布数はふつう5~18/mm2、断面形は円形、径は0.05~0.18mmである。単せん孔をもつ。接続道管は稀であるが、存在す ればその相互間の有縁壁孔はルーズな交互配列をしベスチャード壁孔である。一般にチロースが多い。材の基礎組織を構成するのは繊維状仮道管で、長さ0.9~1.5mm、径0.01~0.03mm、壁厚0.0045~0.009mm、有縁壁孔はかなり顕著である。
 軸方向柔組織には次のものがある。
 (1)周囲柔組織は0~3細胞層の薄く不完全なものが多いが、ときには短い翼状柔組織となる。
 (2)短接線柔組織と単独で散在する柔細胞とは移行する形で存在するが一般に少ない。
 (3)垂直樹脂道の周囲に1~4細胞 層の柔組織があり、道管の周囲のものより厚いことが多い。柔細胞の径は0.02~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmである。垂直樹脂道はほとんど単独で散在するが、ときに2個が対になって接線方向に並び、稀にそれ以上が短いアーチになって存在することが ある。分布数は0~7/mm2、径は0.04~0.12mmで通常チョーク状の白い樹脂物質がつまっている。
 放射組織は1~6、ときに12細胞幅までで、2~80細胞高、構成はやや不明確なものも出現する異性で、単列部および多列部の周縁の1部は方形細胞または直立細胞、他は平状細胞からなる。すべての種類にシリカを含んでいる。また結晶が存在することが ある。  
3.コチレロビューム属の材の性質と利用
 材の気乾比重には0.65~1.16の間の報告があるが、ふつう0.80以上で重硬ないしきわめて重硬である。材質数値は比重に対応して高い値を示すがこれらは各項に記載する。
 製材については材にシリカが含まれるがそれほど困難でない。乾燥はかなり遅く、乾燥割れや変形が出る多少の危険がある。鉋削、穿孔、旋削は大きい困難はなく仕上げ面は平滑となる。心材の耐朽性はきわめて高く白蟻・海虫にも強い。防腐薬剤によ る注入処理はきわめて困難であるが、多くの場合その処理を必要としない。
 材の利用はresakとして、重硬なバチカ属Vaticaのものと同様に扱われる。すなわち家屋建築(柱、梁、たる木、側板、フローリング、ドアー、窓わくなど)、キャビネット、船舶(木造船の竜骨、肋材)、車両、土木材(鉄道枕木、抗、橋梁など)、 旋削物その他で、また燃材にも用いられる。シリカを含んでいるのでとくに水中のパイリング、造船に適しているとされる。
 樹皮はときにボードのコーキングと灯用に用いられるが市場性はない。樹皮の抽出物は地方的に甘蔗の煮出す際の泡立ち防止と、ヤシ酒の醗酵抑制に用いられる。  
4.Cotylelobium burckii HEIMの概要
 Cotylelobium burckii HEIM(異名Cotylelobium flavum PIERRE、Cotylelobium asperum VAN SLOOTEN、Sunaptea burckii KOSTERMANS)はボルネオ産で、マレーでresak durian、resak badang、ブルネイ・サラワクでresak durian、インドネシアでgiam durian、resak bukit tembaga、resak babalokという。
 高さ40m、直径65cmまでになる中~大高木である。樹幹はしばしば曲がっている。板根は低くて円頂を呈する。樹皮は淡黄褐色などで平滑または渦紋があるが、また部分的に裂片化する。小枝などには淡黄褐色の軟毛がある。
 葉は長楕円状皮針形で長さ8~15cm、幅3~5cm、先端は短い尾状部になり基部は広い楔形または鈍形、側脉の先端は連結し葉縁のすぐ内側を走るループとなる。花は腋生または頂生の長さ1.5cmまでの円錐花序につき黄白色を呈する。果実は球形で径は0. 6cmほど、これを囲むがく裂片5個のうち外側の2個はへら形などの大きいものになり長さ6.5cmまで、内側の3個は長さ2cmほどまでである。  
5.Cotylelobium burckii HEIMの材の組織、性質と利用
 散孔材。心材は紅褐色などである。材の顕微鏡写.真で組織の要点をあげる。道管はほぼ単独で散在し、分布数は、10~15/mm2、径は0.05~0.14mm、せん孔板は水平か僅かに傾斜し、単せん孔である。この標本ではチロースが少ない。材の基礎組織を構成 する繊維状仮道管の径は0.015~0.03mm、壁厚は0.005~0.008mmである。
 軸方向柔組織では、(1)周囲柔組織はバチカ属Vaticaのものより発達していて1~2、ときに3細胞層が道管をとり囲み、またやや翼状に接線方向にのびるものがある。このものは接線方向に4細胞まで連なり、道管孔を外れて放射方向に2~6細胞層ある。
 (2)短接線柔組織および単独で散在する柔細胞はほとんど見られない。
 (3)垂直樹脂道を囲む柔組織は比較的よく発達し、道孔の上下の放射方向で2~3、ときに4細胞層あり、道孔が横断面で見て同心円状に並ぶものではこれらを包んで帯状となり放射 方向に8細胞層まである。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。垂直樹脂道はやや同心円状に並ぶ傾向があるが、また全く散在孤立のものがある。分布数は3~6/mm2で径は0.04~0.09mmである。
 放射組織は単列と多列の2型にややわかれる傾向がある。構成は異性。単列のものは2細胞幅の部分を含み5~15細胞高で、おおむね直立細胞、方形細胞または高さの大きい平伏細胞からなる。多列の3~12細胞幅のものは15~80細胞高で、上下両端の単列 部2~8層と周縁の少ない1部、まれに内部でも大型細胞層(直立細胞、方形細胞または高さの大きい平伏細胞層)、他は高さの小さい小型の平伏細胞層からなる。細胞内にはシリカが含まれている。
 材の気乾比重に0.87~1.16の記載があり、重硬ないしきわめて重硬である。材は市場でresakとして扱われ、その利用は属の記載にあげたことと同様である。  
6.Cotylelobium scabriusculum BRANDIS
 Cotylelobium scabriusculum BRANDIS(異名Sunaptea scabriuscula TRIMEN)はスリランカの国有種である。
 高さ35m、直径50cmまでになる高木であるが、ふつうはそれより小さい。小枝などに淡褐色の短毛を布く。葉は狭い長楕円形~皮針形で長さ7.5~22cm)幅2.5~8cm、鋭尖頭、基部は広い楔形~鈍形、側脉は17~23対あり、短い中間側脉および網状の3 次脉が出る。花は頂生または腋生の円錐花序につく。果実はほぼ球形で径は1cmまで、瘤状の突起がある。これを囲むがく裂片のうち2個は大きくへら形で長さ5.5cmまであり鈍頭、他の3個は小さく皮針形、長さ2.5cmまでで鋭頭である。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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