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平井信二先生の樹木、木材研究

バチカ属の樹木(その3)
14.Vatica odorata SYMINGTONの概要
 Vatica odorata SYMINGTONSect.Sunapteaに属し、異名にVatica astrotricha HANCE、Vatica grandiflora DEYR、Vatica faginea DEYRがある。ビルマ・テナセリウム、タイ、インドシナ、マレー、ボルネオに分布する。地域によって3つの亜種にわけられる。Vatica odorata SYMINGTON subsp.odorataはビルマからボルネオにわたって分布、Vatica odorata SYMINGTON subsp.mindanensis ASHTON(異名Vatica mindanensis FOXWORTHY)はフィリピンとボルネオ北部に分布、Vatica odorata SYMINGTON subsp.brevipetiolata P.H.HOはベトナム北部に分布する。
 名称はタイでphan cham、cham、yang-nu、khi-mot、ベトナムでtu trng、lu tu、ラオスでsi、si dan、カンボジアでchramas thma、tralak mosau、サワラクでresak kesat、resak biabas、ブルネイでresak kesat、resak runting kesat、インドネシアでdamar kunyit、resak guming、cangal-padi、フィリピンでMindanao narig、binango、liloanなどという。
 この属の中では大高木になる種類で、高さ40m、直径70cmまでになり、樹幹は円柱状で枝下高20mまであり、板根は小さい。葉は楕円形~卵形で、長さ7~18cm、幅2.5~9cm、側脉は9~15対、短い中間側脉があり、ほとんど無毛。葉柄の長さは0.6 ~2cmである。
 花序の長さは7cmまでで、花弁は黄白色を呈する。果実は堅果で球形、径0.8cmまであり黄褐色の細綿毛を布く。がく裂片のうち2個が大型の翅になって、へら形で長さ6cmまである。3個は皮針形で小さく長さ1.5cmまでとなる。これらは基部で合着し て深さ5mmまでのカップになって果実と合着する。  
15.Vatica odorata SYMINGTONの材の組織、性質と利用
 心材は通常帯黄褐色で、ときに緑色、紅色のくもりがあり、また黒色の条が出るものもある。顕微鏡写.真によって材の組織について記載する。
 道管はほとんど単独であるが、ときに2個が各方向に接続し、分布教は25~40/mm2である。径は0.04~0.13mm、せん孔板は傾斜し単せん孔で、チロースは見られない。基礎組織を形成する繊維状仮道官は径0.015~0.03mm、壁厚0.004~0.008mmである。
 軸方向柔組織のうち、周囲柔組織は発達が少なく、横断面でみて道管の放射方向片側に帽状になり0~2細胞層、次記のタイプに移行する形のものがある。短接線柔組織は少なく、接線方向に2~4細胞連なり、放射方向に通常1、ときに2細胞層である。単 独で散在する柔細胞も少ない。垂直樹脂道を囲む柔組織は0~2細胞層で必ずしも完全に樹脂道を包んでいない。ときに放射方向に2~3細胞層で接線方向に数細胞が帯状に接続してのびる傾向のものがある。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.002m mである。垂直樹脂道は少なく散在している。分布数は2~4/mm2で、径は0.03~0.05mmである。
 放射組織は1~4細胞幅で、単列のものは3~15細胞高、多列のものは20~60細胞高ある。構成は異性で、単列のものおよび多列のものの上下両端の単列部~14層の大部分と周縁の1部は直立細胞、方形細胞または高さの高い平伏細胞の層であり、その他は 小型の高さの低い平伏細胞の層である。この小型のものは単列放射組織の大型細胞層の間にも介在する。放射柔細胞の中には内容物が見られる。
 材は重硬、ときにきわめて重硬で、気乾比重0.74~1.06を示す。フィリピン産Vatica odorata SYMINGTON subsp.mindanensis ASHTONでは0.77~0.86の報告がある。材の強度は大きく耐朽性は高い。
 マレーシア地域では市場材として出され、resakとして扱われる。樹脂はときに低品質の"damar rasak"として扱われていると思われる。  
16.Vatica lowii KINGの概要
 Vatica lowii KINGSect.Sunapteaに属し、タイ半島部、マレーに産する。タイでphan cham dong、マレーでresak pupit、resak hitamという。
 高さ25m、直径60cmまでになる小~中高木である。葉は楕円状皮針形などで長さ5~14cm、幅2~5cm、側脉は11~15対でほぼ無毛、葉柄の長さは0.6~1.6cmである。
 花序は短く長さ4cmまでで、短い分枝があって花を多くつける。花は白色などを呈する。果実はほぼ球形で径は0.6cmまである。がく裂片のうち2個は長い翅になって長さ7.5cmまで、3個は小さく長さ1.5cmまでで、これらは基部まで離生する。  
17.Vatica lowii KINGの材の組織、性質と利用
 材の顕微鏡写.真によって組織の記載をする。道管は単独で散在し接続するものは見られない。分布数は15~20/mm2、径は0.08~0.17mm、せん孔板は水平に近く単せん孔をもつ。チロースは見られない。材の基礎組織をなす繊維状仮道管の材中の占有 割合が多く、径は0.015~0.03mm、壁厚は0.005~0.008mmである。
 軸方向柔組織のうち、周囲柔組織は発達が少なく、横断面で見て道管の放射方向片側にあることが多く0~1細胞層、ときに3細胞層までである。短接線柔組織はほとんど見られず、単独で散在する柔細胞も少ない。以上のものとくらべて垂直樹脂道周辺の 柔組織は顕著で、道孔をほとんど全周にわたって1~3細胞層が囲み、やや翼状から帯状の形に接線方向に4細胞までのびるものがあり、このものは道孔を外れた部分で放射方向に2~6細胞層である。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである 。垂直樹脂道はおおよそ単独で散在するが、同心円状に接線方向に配列する傾向のものがある。分布数は2~5/mm2、径は0.05~0.10mmである。
 放射組織は単列のものはときに小型細胞での2列の部分を介在し、2~10細胞高、多列のものは3~6細胞幅、15~80細胞高である。構成は異性で、単列のものの大部分および多列のものの上下両端1~2列部の1~6層と周縁の1部は直立細胞、方形細胞また は高さの大きい大型平伏細胞の層で、他は高さの小さい小型の平伏細胞である。
 材は重硬で気乾比重に0.84~1.03の記載がある。マレーでresakの1つとして扱われ、その利用は他の重硬なバチカ属のものと同様に、家屋構造材、土木材、器具その他である。
18.Vatica pauciflora BLUME
 Vatica pauciflora BLUMESect.Pachynocarpusに属する考えられる。Vatica wallichii DYER、Vatica sumatrana VAN SLOOTEN、Vatica lamponga BURCKはその異名である。インドシナ南部、タイ、マレー、スマトラ、バンカに分布する。ベトナムでtu t hoa、タイでsak、sak nam、klusi、マレーでresak laru、resak ayer、resak paya、インドネシアでresak padung、resak rawangという。
 小~中高木で高さ32m、直径50cmまでのものがある。樹幹は円柱状で通直、枝下高20mまでのものがあり、板根は小さい。葉は楕円形、皮針形で、長さ6.5~20cm、幅2~8cm、側脉は6~9対あって、ほとんど無毛である。葉柄の長さは0.7~1.8cmある。
 花序は不規則に分枝する。果実は卵形で長さ3cmまで、がく裂片5個は同形で木質に肥厚し、果実の底部に圧着する。
 材の気乾比重に0.55~0.96の記載があり、この属の中ではやや軽軟な方に入る。材はresakとして扱われ、家屋建築などに用いられるが重要でない。また燃材となる。樹皮はresak laruで、ヤシ酒の醗酵を抑制するのに最もよく用いられるものの1つである。樹脂はダマールとして使われることがある。  
19.Vatica stapfiana VAN SLOOTEN
 Vatica stapfiana VAN SLOOTENSect.Pachynocarpusに属し、カンボジア、タイ半島部、マレー、スマトラに分布する。タイでsak、マレーでresak mempening、resak laruという。
 ふつう小~中高木で、高さ20m、直径35cmを越えるものは稀である。葉は楕円状倒卵形などで長さ12~25cm、幅5~12cm、側脉は7~15対ある。厚い革質で、下面に薄く毛があるかほとんど無毛である。葉柄の長さは1.7~3cm。花序はやや集まって 生じ、不規則に分岐して長さ10cmまで、花弁は淡黄色で底部に紅斑がある。果は卵形で大きく長さ4cmまで、がくの5裂片はほとんど合着していぼ状突起をもつコルク質のカップとなる。
 材の気乾比重に0.55~0.88の記載があって、やや重硬という程度であり、バチカ属のうちでは軽軟な方である。生材から全乾までの全収縮率は接線方向9.6%、放射方向5.4%、また生材での強度数値に、縦圧縮強さ423kg/cm2、曲げ強さ826kgf/cm2、曲げヤ ング係数14.7×10(4)kgf/cm2が報告されている。鋸断性、切削性はあまり良くない。材は市場でresakの中に扱われる。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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