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平井信二先生の樹木、木材研究

バオバブ属の樹木
1.バオバブ属
 バオバブAdansoniaパンヤ科(キワタ科)Bombacaceaeに属し、アフリカ大陸に1種、マダガスカルにアフリカ大陸と共通の1種と固有の7種、オーストラリアに1種が分布している。この特異な分布は1億数千年前にこれら3地域がゴンドワナ大陸とし た陸続きだったことの証拠であるとの説があるが、この説は無理があるとされている。一般にbaobabの名が広く用いられている。
 乾燥期に落葉する高木または低木で、樹幹は著しく肥大して太い円筒形、壷形などを呈する。小枝に刺はない。葉は互生する掌状複葉で、小葉は3~9個、小葉柄は短いかまたはほとんどない。総葉柄は長い。
 花は葉腋に単生して大きく、がくは3~5裂し、花弁は5個ある。雄ずいはきわめて多数であるが、中部以下は合着してかなり長い筒状部となる。落花のときにはがく、花弁、雄ずいがいっしょになって脱落する。雌ずいは1個で、子房は5または10、まれ に15室、花柱は長く挺出する。果実は木質のさく(蒴)果で裂開しない。種子は粉質のパルプの中に埋まっていて、綿毛に包まれることはない。
 散孔材。材は軽軟で弱く、耐朽性がないので、通常の目的の木材として利用されることは少ない。しかし樹の各部分はそれぞれ各種の用途に用いられる。すなわち樹皮は家屋の屋根、壁体、また繊維でロープ、マットなどを作り、鞣皮に使われることも ある。果実のパルプは酸味があるので調味料に用い、とかして清涼飲料にし、種子は食用と搾油に、果実の殻は容器に、若葉は野菜、家畜の飼料にし、また樹体の各部を種々の民間薬として用いる。  
2.バオバブの概要
 バオバブ(バオバブノキ、アフリカバオバブ、サルノパンノキAdansonia digitata LINNAEUSは熱帯アフリカから南方のサバンナ、マダガスカル、コロモ諸島に生じ、また古くからインドその他に導入され植栽されているものもある。マダガスカルそのものも多分導入由来のものと考えられている。一般名としてbaobab、英名a baobab tree、African baobab、bottle tree、monkey bread tree、sour gourd、monkey tamarind、savanna tree、African calabash、cream of tartar tree、dead rat tree、Juda's bag tree、独名にAffenbrotbaumがあり、ナイジェリアでkuka、muchi、ose、ケニアでmbuyu、mwambo、jah、ol-imisera、インドでgorak amli、gorak chinchiなどという。
 高さ10~20m、直径10mに達する落葉高木で、樹幹は通常太い円筒形になり、世界で最も大径となる樹種にあげられる。樹幹の頂部付近から太く短い大枝、小枝を密につけ、きわめて特異な様子を呈す。落葉期の樹形は巨人が大木を引き抜いて逆様に置い たとたとえられている。寿命が長く3,000年を越すものが知られている。樹皮は灰色または帯紫色でほぼ平滑である。
 葉は互生する掌状複葉で、小葉は3~9、ふつう5~7個で長楕円形、倒皮針形など、長さ9~20cm、幅4~8cm、鋭尖頭、基部は狭い楔形を呈し、全縁、ときに僅かに鋸歯があり、ほとんど無毛または下面に星状毛がある。小葉柄はほとんど無く、総葉柄 は長さ7.5~25cmで有毛である。幼植物では単葉である。
 開葉の前に花を葉腋に単生し、長さ5~30cmの長い花梗で下垂する。夜開花して強い匂いを放ち、コウモリが花粉を媒介する。がくは緑色で深く5裂し、長さ約9cm、内外両面に密毛がある。花弁は5個で白色を呈し、倒卵形、長さ約5cm、基部で合着する 。花弁は開帳して反りかえり、がくの上にかぶさる。雄ずいはきわめて多く1,000個ほどもあり、下方の半分以上は合着して筒状となる。葯は1室、線形で捩れる。雌ずいは1個で雄ずい筒の中から挺出し、先は片方に曲がる。柱頭は5~10裂する。果実は楕 円形、卵形または球形で、長さ12~40cm、果皮は木質の殻となり、外面に黄褐色の絨毛がある。種子は30個ほど含まれていて腎臓形で褐色、乾質で酸っぱいパルプの中に埋まっている。
 バオバブはフランスのサテングジュペリの童話「星の王子さま」の中に、芽をつまないと伸びてきて星を壊してしまう悪者として登場するので、その名はよく知られている。  
3.バオバブの材その他の利用
 バオバブの材は軽質で弱く、耐朽性がないので、通常の木材の用途に使われることが少い。現地民が丸木舟、コルク代用その他の雑用材、ときにパルプが用いられる程度である。
 材の他の各部分はそれぞれ現地民の生活にきわめて密接な有用な用途に用いられている。樹皮は繊維が強いのでロープ、マットなどを作るのに用い、また紙料ともなる。タンニンを含むので鞣皮にも使う。果実の中の種子を包む粉質のパルプは酒石酸な どを含んで酸っぱく、食用、また飲料にする。種子は煮食し、また油を搾ることがある。若葉は野菜となる。根から紅色染料が得られ、果実の殻は水くみその他の容器に用いる。そのほか各部分はそれぞれ各種の民間薬とされる。大径木の樹幹を穿って物 品の貯蔵所や一般的な住所にしたり、また死者の埋葬所とする処もある。  
4.Adansonia gregorii F.MUELLER
   Adansonia gregorii F.MUEELLER(異名Adansonia stanburyana HOCHREUTINER)はオーストラリア北部に産し、boab、baobab、bottle tree、dead rat tree、gouty treeといい、現地民アボリジニ名でgadwonという。
 高さ9~12mの小~中高木で、冬の乾期に落葉する。樹幹は通常下方が肥大して樽形から壷形を呈し、直径5.2mまでになる。若齢木の樹冠は広い円錐形で枝葉が密につくが、年を経ると樹冠は傘形となり枝葉は疎となる。樹皮はほぼ平滑であるが小皺が出 る。葉は互生する掌状複葉で、小葉はふつう7個あり、長楕円状皮針形、鋭尖頭、基部は楔形、全縁、小葉柄はきわめて短く、総葉柄は長い。
 花は頂生で大きく、白色を呈する。果実は球形に近く長さ6~8cmで、種子は白色、粉質のパルプの中に埋まっている。
 散孔材。道管は単独および放射方向に2~4個が接続し、分布数は1~4/m㎡である。単独道管の断面形は円形~広楕円形で、道管の径は0.10~0.23mm、せん孔板は水平に近く、単せん孔をもつ。材の基礎知識を形成するのは、放射方向に交互に並んだ積層 する繊維(繊維状仮道管または真正木繊維)と、帯状柔組織または幅の広い短接線柔組織とで、放射方向に前者は1~3、ときに4細胞層、後者は1~4、ときに8細胞層まである。両者ともかなり不規則で、ときに接線方向で断絶し、また波状をなす。繊維の 径は0.01~0.025mm、壁厚は0.002~0.003mmで、隔壁が存在する。
 軸方向柔組織では上記帯状組織のほかに、1~2ときに0細胞層の周囲柔組織と、あいまいな放射方向に4~8細胞層までのターミナル柔組織と思われるものがある。柔細胞ストランドは軸方向に2~4細胞からなり、やや端を揃えて配列する傾向がある。柔細 胞の径は0.015~0.035mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~8細胞幅、70細胞高以上で、幅が広く高さが大きい。その構成は異性で、低い直立細胞、方形細胞および放射方向の長さが短い平状細胞の層が入り混じって存在し、これらの細胞種は移行的であり、また水平方向の同一層の中でも細胞 種の変化がある。
 材は軽軟で弱く、耐朽性がない。通常の木材の用途に使われることは少ない。
 種子を包むパルプは酸味があり、パンのようにして食料とし、また飲料に作る。種子も粉にして食べるという。若葉は干ばつ時の家畜の飼料となる。現地民アボリジニは果実の殻に彩色を施したり、彫刻したりして装飾に用いる。  
5.マダガスカル産のバオバブ属の樹木
 マダガスカルにはアフリカ大陸からの導入かと考えられるバオバブ Adansonia digitata LINNAEUS と、次の7種の固有種がある。
 (1)Adansonia grandidieri BAILLON:西部・南部産の高木で、高さ20m以上、直径は4mにも達する。樹幹は太い円柱状で、上端部で枝を水平に近く出し、樹冠の厚さは薄く扁平で、特異な姿を呈する。葉は有毛、花は白色である。現地民は樹皮を家屋の屋根、壁に用い、ロープなどを 作る。果実のパルプ、種子を食用にし、また種子から油をとることもある。
 (2)Adansonia madagascariensis BAILLON:西北部に生ずる高さ5mくらいまでの高木である。樹幹は肥大して円筒形を呈し、掌状複葉は5~7個の小葉からなり、その長さ9~10cm、幅3~4cmである。花は直生して径が10~18cmで紅色を呈し、花弁の長さは13cmほどである。果実は細長い。
 (3)Adansonia fony BAILLON:南部・中部に生ずる高木で、樹幹は下部が太く上部にやや細くなる壷形に近いが、肥大は樹幹頂部から水平に近く出る大枝にまで及んでいる。葉に鋸歯があり、花は橙色を呈する。果実は細長い。
 (4)Adansonia za BAILLON:南部・中西部に生ずる高木で、樹幹は肥大した円柱形、上方にやや細くなり、上端近くから大枝が出て斜上する。掌状複葉をなす小葉の小葉柄は長く、小葉は垂れる。花の径は20cm以上で大きく、がく裂片は紅褐色を呈して下方に反巻し、花弁は 細い線形で橙色、平開せずユリのような形が広がる。雄ずいは多数であるが、同属の多種より少く80~120個である。果実は細長い。
 (5)Adansonia suarezensis H.PERRIER:北端部に生ずる高木である。高さは10m前後で、樹幹はやや細目である。頂部から大枝を水平に近く出す。樹皮はやや紅褐色を帯びる。果実は球形である。
 (6)Adansonia perrieri CAPRON:北部に生ずる高木。果実は細長い。
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