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平井信二先生の樹木、木材研究

テレンタン属の樹木(その1)
1.テレンタン属の概要
 テレンタン属(キャンプノスペルマ属)Campnospermaはウルシ科Anacardiaceaeに属し、東南アジア、スリランカ、マダガスカル、セイシェル、太平洋地域、中米・南米の熱帯地域に10種ないし15種が分布している。沼沢地およびその周辺の低地に生ずる ものが多い。英名にはterentang、orey、orey、wood、cedrolが用いられ、タイでnangpron、huasum、マレーシア・インドネシア地域で広くterentang、serentang、インドネシアでdalipo、doloepo、emboriranga、パプア・ニューギニア地域でcampnosperma 、ソロモン諸島でkete keteなどという。
 常緑の高木ときに低木で、最大高さ50m、直径2.2mほどまでになるが、通常はもっと小さいものが多い。若令木では枝が輪生状に出て、シクンシ科Combretaceaeのモモタマナ属Terminaliaの型に似るが、それと違って枝は水平に近く開出することはなくて 斜上する。板根は小さいかまたはない。沼沢地に生ずるものはときにたこ足状の支柱根、ループ膝根または直立の呼吸根をもつ。樹皮は灰色、黄褐色、褐色などを呈し、平滑または浅い縦の割れ目を生じ、または鱗片化あるいは紙質の裂片化するものもあ る。葉は互生しらせん状に枝端に蔟生してつき、単葉、全縁、通常倒皮針形などを呈して大きく、とくに幼令木で著しく大きくなるものがある。先端は円形などで、茎部は次第に狭くなり、葉柄部に狭翼になって流れるものがありその底部に耳状の小片1 対をつけるものがある。有柄またはやや無柄で、托葉はない。
 花は単性花まれに両性花で、雌雄異株ときに同株である。花序は枝端付近の葉腋に出る円錐花序または分枝が少ない総状花序様を呈し、花は小く通常黄緑色などを呈する。がくは4ときに3、5裂、花弁は4ときに3、5個、瓦重ね状に並ぶ。無毛または外面 に鱗片がある。雄ずいは花弁の2倍数で、花盤の縁近くに挿入する。花弁に対生するものは、花弁に互生するものよりやや短い。花糸は錐状で無毛、葯は2室で背面底着する。雌ずいは1個で、子房上位、ほぼ球形で1室である。花柱は短いか不明瞭で、柱頭 は平盤状を呈する。雌花に退化雄ずいをもつ。果実は球形ないし卵形の石果で、熟して紅色から黒色を呈し、縦の隔壁で不完全な2室になり、種子1個を含む。外種皮は内果皮(核)から離生し、やや屈曲した胚と子葉とがある。鳥が果実を食べて種子を散 布する。  
2.テレンタン属の材の組織
 散孔材。辺心材の区別は不明瞭で、紅色を帯びた淡灰褐色、淡紅褐色などを呈し、辺材と見られる部分はいくらか淡色である。生長輪はふつう認められない。木理は通直または交走し、肌目はやや精である。接線断面で水平細胞間道が黒点として認めら れる。しばしば小さい脆心材が現れ、また微細なもめ(compression failure)をもつものがある。生材に青変色が出やすいが、ピンホールは少ない。
 道管は単独およびおもに放射方向に2ときに3個、または以上が団塊状などに接続し、分布数は12~40/mm2である。単独道管の断面形は楕円形などで輪郭がやや角ばる。道管の径は0.03~0.22mmである。せん孔板は水平近くから傾斜するものまでがあり、 単せん孔と階段せん孔を併せもつ。階段数は6~48である。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列または対列配列をなし、その径は0.006~0.010mmである。道管と放射組織の間の壁孔は単壁孔で大きく、水平または斜め、縦に長く伸び柵状、階段状などを呈 する。
 材の基礎組織をなすのは真正木繊維か、微小な壁孔縁の有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、長さは1.0~1.5cm、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.002~0.003mmで薄い。少数の隔壁をもつものと、ないものとがある。
 軸方向柔組織は著しく少なく、道管の周辺にきわめて不完全にある周囲柔組織とまれに単独散圧の柔細胞がある。
 放射組織は1~3細胞幅、2~35細胞高であるが、水平細胞間道を中に含むものは紡鍾形となり、中央付近で5~10細胞幅となる。構成は異性で、単列放射組織および多列放射組織の軸方向端部1~3層の単列部の大部分は、直立細胞、方形細胞またはこれと 同様の高さで放射方向の長さが短い大型の平伏細胞、他は高さの低い小型の通常の平伏細胞の層からなる。細胞内には着色した樹脂様物質を含むが、結晶とシリカは見られない。
 水平細胞間道は放射組織の中央に含まれ、その存在は疎らで分布数は1mm2当り数個から1個以下である。接線断面で見られる断面形は楕円形などで、長さ0.09~0.22mm、幅0.05~0.13mmで、黒色の樹脂を含む。  
3.テレンタン属の材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.24~0.60の範囲の記載があり、平均的に0.43ほどでやや軽軟である。生材から気乾までの収縮率は、接線方向3.2~5.5%、放射方向1.6~2.1%で、比重の割にはやや大きい。強度的数値の代表的な例をあげると、縦圧縮強さ204~265kg/cm 2、横圧縮強さ20~31kg/cm2、曲げ強さ428~530kg/cm2、曲げヤング係数6.6~9.2×10(4)・kg/cm2、せん断強さ61~92kg/cm2、ヤンカ硬さは縦断面150~157kgである。
 乾燥はふつう速く品質低下は一般に少ない。ただし薄板の場合は堆積に重量物をのせて反りを抑える要がある。人工乾燥スケジュールには、レッドメランチShorea spp.またはクワガタノキ(ジェルトン)Dyera costulata HOOK ERFIL.のものを用いるとよいとされる。鋸断はとくに容易ということはなく、しばしばひき材面がけば立ち、また鋸歯をやや鈍化させる。交走木理と鋸歯に樹脂質ののこ屑がつまることによると思われる。鉋削は面がやや粗くなることがあるがほぼ容易で 、穿孔、旋削、型削、研削などに多少の問題があることもある。釘打ちでは割れることなく、釘の保持も良い。木ねじ、接着、塗装もふつう問題は少ない。ロータリー単板切削は前処理なしで行うことができるが、ときにけば立ちが現れ、接着は良好であ る。材の耐久性はきわめて低く、また湿気が高い条件では辺材変色菌におかされる。キクイムシの食害があるとも、また少ないともとの記載があり、白蟻、海虫には抵抗性がない。防腐薬剤の注入はほぼ容易であるが、不明瞭な辺材部のあり方によって薬 剤注入量の差が現れる。製材、切削加工、単板切削などで、ときに皮膚の炎症を起こす例が知られている。
 テレンタン、キャプノスペルマおよびオレイはそれぞれ東南アジア、パプア・ニューギニア地域および中・南米熱帯地域で、かなりふうにあって量的にまとまって出材するものがあり、軽軟材の代表的なものの一つとしてかなり利用されている。すなわ ち建築造作材、ときに軽構造材、一般家具とくに板物のコアー、箱・包装用材、雑器具材その他、合板とくにコアー材、パーティクルボード、パルプで、マレーなどではマッチ箱に広く用いられるが、マッチ軸木には用いられない。わが国ヘはおもにソロ モン諸島からかなり輸出された。
 パプア・ニューギニアで材から得られる"tigaso oil"は皮膚にすりこんで寄生虫防止に用い、また馬の鞍おきの傷を治すのに使われる。現地では装飾用のボディオイルや頭髪油にもなる。種子油が料理用または灯火用に用いられる処もある。  
4.Campnosperma coriacea HALLIER FIL.ex VAN STEENIS
 Campnosperma coriacea HALLIER FIL.ex VAN STEENIS(異名Campnosperma macrophylla HOOKER FIL.、Campnosperma griffithii MARCHAND)はマレー半島、リンガ諸島、バンカ島、スマトラ、ボルネオ、ニューギニアに分布し、沼沢林に多い。マレーでterentang simpoh、terentang kelintang、terentang、serentang、poke kelinting、サバ、ブルネイでterentang、インドネシアでterentang、terentang rawang、terentang abang、ambacang rawang、meranti lebar daunという。
 高さ40m、直径90cmまでの大高木となるが、ふつうはずっと小さい。沼沢地に生ずるものはたこ足状の支柱根、ループ膝根または呼吸根を出す。若枝に細軟毛をもつ。葉は楕円形、長楕円形、まれに倒卵形できわめて大きく、長さ15~40cm、幅8~20cm、 鈍頭、円頭でときに微凸端、基部は鋭形、楔形であるが葉柄に翼状に流れることがなく、また翼があってもきわめて狭く、耳状片をもたない。革質で、側脉は16~36対あって下面で隆起し、上面は無毛、下面は細軟毛を密布するか、またはやや無毛である 。葉柄の長さは2.5~6.3cmで、細軟毛をもつ。
 円錐花序は分枝が多く、長さは雄株では30cm、雌株ではこれより小さい。花序軸に細軟毛を布く。花は蔟生して小さく、緑白色を呈し、花梗はほとんどない。果実は斜卵形で長さ10mmほど、中空の隔室があり、熟して黒色を呈する。
 散孔材。辺心材の区別は不明瞭で、灰紅色、淡紅褐色などを呈する。道管は単独およびおもに放射方向に2個が接続、ときに小径道管を伴い4個ほどまでが団塊状となる。単独のものは比較的少ない。分布数は15~25/mm2である。単独道管の断面形は楕円 形などで、道管の径は0.03~0.20mm、せん孔板は傾斜する。材の基礎組織を形成するのは真正木繊維または繊維状仮道管で、隔壁あるものが少数現れる。長さは1.2~1.4mm、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.002~0.003mmである。軸方向柔組織はきわめて少な くほとんど認められない。放射組織は1~3細胞幅で単列のものは少ない。8~35細胞高である。その構成は異性で、単列放射組織および多列放射組織の軸方向両端の単列部1~3層の大部分は方形細胞またはこれと同高で放射方向の長さが短い大型の平伏細胞 、他は高さが低い小型の通常の平伏細胞の層である。細胞中には着色した樹脂様物質の含有が多い。
 材の気乾比重は0.44~0.53、生材から気乾までの収縮率は接線方向5.0%、放射方向3.4%の記載がある。
 乾燥はテレンタンCampnosperma auriculata HOOKER FIL.にくらべると遅い。鋸断、鉋削などの切削加工はほぼ容易であるが、加工面が粗くけば立つ傾向がある。
 材はマレーシア・インドネシア地域ではterentang、パプア・ニューギニア地域ではcampnospermaとして利用される。その用途は属について記載したことと同様である。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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