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平井信二先生の樹木、木材研究

インドカリン属の樹木(その3)
10.オオミカリンの名称、分布と形態
 オオミカリンPterocarpus macrocarpus KURZはビルマ、タイに分布し、ときに植栽されている。この地域の南部・半島部にはインドカリンPterocarpus indicus WILLDENOWがあるが、オオミカリンはこれよりも北方、ことに常緑・落葉混交林といわれる地域に広く分布している。ビルマでpadauk、Burma padauk、タイでpradooという。わが国に古くから輸入された唐木のカリン(花櫚、花梨)の原植物はこの種とインドカリンとを含むが、この方がむしろ主体になっていたものと思われる。それゆえカリンの和名をこの種のみに当てている著書もある。
 高さ25m、直径1.5mまでになる落葉の中~大高木で樹幹は比較的通直、円柱状で枚下8mという記載もあるが、しばしば低い処から大枝を分岐するものや、曲がりがあって形質がよくないものもある。樹皮は灰色、灰褐色から褐色で、浅い縦溝が疎に入るか 、不規則な鱗片状になって剥げる。葉は奇数羽状複葉で、ふつう7~9個の小葉がやや不規則に互生して着き卵形、卵状長楕円形など、長さ5~12cm、先端は急に短い尖頭になり基部は円形、華質で下面と短い小葉柄に軟細毛がある。花は4~5月に開花し、 腋生の総状花序または円錐花序につく黄色の蝶形花である。豆果は薄い円板状でほぼ円形、径3.5~7cm、側方の1個処に嘴状の短い突出部がある。中央部分はふつう1個の種子を含んでふくらんでいる。その周縁を膜状の翼が取り囲む。未熟時にはビロード 毛を布いている。
11.オオミカリンの材の組織
 環孔材で生長輸は明瞭である。辺材は狭く灰白色から淡黄褐色、心材は橙褐色から紅褐色でときに暗色の条線が見られる。木理は比較的狭い間隔で交走し肌目はやや粗、縦断面に波状紋が現われる。材の水浸出液は黄色から青色を帯びた螢光を発するこ とが著しい。材の顕微鏡写.真があるので、それによって記載する。道管は大部分が単独で円形~楕円形、ときに2個が放射方向などに接続する。おおよそ互いに離れて存在し、ときに環孔状態がやや不明瞭となる。早材部では径0.18~0.32mm、分布数3~9/m m2、晩材部で径0.08~0.22mm、分布数2~8/mm2である。多くのものは両側または片側が放射組織に接触する。単せん孔でせん孔板は水平またはそれに近い。チロースが見られる。
 基礎組織の真正木繊維または繊維状仮道管の径は、0.02~0.03mm、壁厚は0.002~0.006mmである。軸方向柔組織では周囲柔組織が管孔の上下放射方向に0~3細胞層、翼状になったものは接線方向に1~6細胞伸び、放射方向には1~8細胞層である。連合翼 状柔組織または帯状柔組織は放射方向に1~4細胞層で、ときに輪廓が波状となり、また分断するものも多い。基礎組織中にきわめて僅かであるが散在する単独の柔細胞も見られる。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~O.0015mmである。縦断面で1個 の隔壁をもつ隔壁柔細胞が多く存在し、これらが放射組織とともに階段状配列をなしている。放射組織はほとんど単列であるが、ときに部分的2列を示す。高さは2~10細胞高、大部分5~8細胞高である。構成は平状細胞のみからなる同性である。
12.オオミカリンの材の性質と利用
 材の気乾比重に0.72~0.96の範囲の報告があるが、インドカリンにくらべてばらつきの範囲が狭く、その平均的な値は0.85ほどでインドカリンより大きい。材質数値の例をあげる。生材から全乾までの全収縮率は接線方向5.1%、放射方向3.4%、ビルマ産 の気乾比重0.86のもので縦圧縮強さ769kg/cm2、曲げ強さ1,451kg/cm2、曲げヤング係数14.6×10(4)kg/cm2、せん断強さ121kg/cm2、タイ産のもので縦圧縮強さ642~660kg/cm2、曲げ強さ1,199~1,431kg/cm2、曲げヤング係数12.4~13.0×10(4)kg/cm2、せん 断強さ162~224kg/cm2、ブリネル硬さは横断面8.5kg/mm2、縦断面4.5kg/mm2、ヤンカ硬さは横断面725kgの数値が得られている。これらの結果をインドカリンと比較すると、比重も大きいが強度的数値もさらに大きいものと判断される。
 製材、切削などの機械加工はやや困難であるが、仕上げ面は良好で磨けばよく光沢が出て美しい。乾燥はやや遅いが、著しい狂いや割れの出ることが少ない。目止めを適当にすれば塗装は良好で接着性も可。釘の保持力もよい。心材の耐朽性は高いが防 腐材の注入は困難である。
 材は紅色で美しく、寸法安定性が良いので家具材として最も良いものの1つであるが、また重硬で耐朽性が高いことから構造材としての用途もある。素材のままで、またスライスドベニアにして各種用途に用いられる。それらを列記すると高級家具、と くにキャビネット、建築のパネル・フローリング・装飾材および構造材、船舶・車両の内装材および底板、荷車の車輪中軸、各種器具・機器の部材、農機具、銃床、玉突台、彫刻・寄木細工などの工芸品、額縁その他がある。原産地のビルマ、タイで供給 力が比較的高く、各方面に広く使われている。わが国に輸入される唐木のカリンの用途についてはインドカリンの項にあげた。
13.マラバルキノカリン
 マラバルキノカリンPterocarpus marsupium ROXBURGHはインド中部~南部、スリランカに分布し、ときに植栽される。インドでbijasal、vengai、kino tree、Malabar kino treeなどという。落葉の中~大高木で樹皮は灰黄色、灰褐色。葉は大形の奇数羽状複葉で互生する5~7個の小葉からなる。小葉は卵形、楕円形などで長さ7~10cm、ふつう鈍頭、微凹端であるが、ときに短い鋭尖頭をなすものがある。広楔脚、7~20対の側 脉がよく目立つ。花は頂生または腋生の円錐花序につき黄色ときに白色。豆果は薄い円板状で、ほぼ円形に近く径3~6cm、若い時はビロード毛を布き中央に1個、ときに2個の種子を含む。
 辺心材の区別は明瞭で心材は黄褐色、褐色などを呈し、しばしば暗色の縞が出る。木理は交走する。重硬で気乾比重の値に0.75~1.01の報告があり、0.80程度が普通と思われる。気乾比重0.80のもので縦圧縮強さ695kg/cm2、曲げ強さ1,347kg/cm2、曲げ ヤング係数13.3×10(4)kg/cm2、せん断強さ124kg/cm2の材質数値がある。耐朽性は高い。
 材の用途は柱・梁などの建築構造材、扉、窓枠などの造作および内装材、家具、各種の器具、農器具、ボート、車両、楽器の部品、工芸品その他で、舗木、枕木という記載もある。樹幹面で傷口から滲出してかたまった樹脂は暗紅色で、いわゆるEast Indian Kinoの主なものである。歯痛、収斂、胸やけなどの薬用になり、また染料にも使われる。
14.コウキ
 コウキ(紅木)Pterocarpus santalinus LINNAEUS FIL.はインド南部のマドラス州付近が原産地である。現地名にlalchandan、chandnamがあるが、一般に英名でred sanders、red sanders tree、red sandalwood、East Indian sandalwood、独名でCaliaturholzといわれる。和名にはほかにコウキシタン、ミツバシタン、サンタルシタンがあり、また植物学関係の多くの著書では唐木の紫檀の原植物とみなして単にシタンとしているが、これは誤りである。
 高さ10m、直径50cmまでになる常緑の小~中高木で、樹皮は暗褐色、幹面に傷口から紅色の樹脂を滲出する。葉は奇数羽状複葉で、小葉は多くは3個ときに5個、楕円形などで長さ3.5~9cm、円頭で僅かに凹む。円脚、下面に細軟毛がある。総状花序は腋 生または頂生し、葉より長く花は黄色。豆果は薄い円板状でほぼ円形、径約5cmで若いときはビロード毛を布く。翼は幅がやや狭く、脚部は細まって流れ、側方の嘴状突出部は比較的大きい。
 辺心材の区別はきわめて明瞭で、心材は新しいときは橙紅色であるが、後に濃紅色か濃紅紫色になり、さらに暗色の縞が出る。木理は間隔狭く交走し材面で波状紋が見られる。材の水浸出液は螢光を示す。
 きわめて重硬で気乾比重に0.75~1.26の範囲の記載があるが、ふつう1.00~1.10程度が多い。強度数値の1例をあげると、気乾比重1.01のもので縦圧縮強さ999kg/cm2、曲げ強さ985kg/cm2、曲げヤング係数12.7×10(4)kg/cm2、せん断強さ262kg/cm2である 。
 高級家具、建物内部の装飾材、器具、楽器の部材、工芸品などに用いられるが、わが国に輸入される紅木は三味線の棹として最高の評価を得ている。インドでは、かつて心材の粉から紅色染料を作リヨーロッパに輸出されたことがあるが、日光、石けん での洗浄などで退色しやすいので現在はあまり用いられない。また額につけるカーストマークに使われた。成分は水に不溶、アルコール・エーテル・アルカリに可溶のサンタリンで、また利尿などの薬用にされるという。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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