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平井信二先生の樹木、木材研究

メルサワ属の樹木(その1)
1.メルサワ属の名称と分布
 メルサワ属(パロサピス属)AnisopteraフタバガキDipterocarpaceaeのうちであまり大きくない属で、15種程度が知られているが、木材としてはやや重要なものが含まれている。属としての分布は西はバングラデシュのチッタゴン付近からビルマ、 タイ、インドシナ、マレー、スマトラ、ジャバ、ボルネオ、フィリピン、ハルマヘラ、モルッカ、ニューギニアを経て西はルイジァード諸島に至っている。ふつう海抜900mぐらいまでの低山地、ことに150~450mの間に多いが、また1,000~1,200mに生立す るものもある。各種類間では樹木としての形質が比較的似ており、ことに木材の利用上では区別して扱われることが少ない。
 一般的な名称をあげるとビルマでRaungmu、タイでkrabak、カンボジアでphdiek、ベトナムでven- ven、マレーシア・インドネシア地域を通じてmersawa、マレー半島でsanai、サバでpengiran、ブルネイでbenhaloi、フィリピンでpalosapis、ニューギニアの取引名にanisopteraなどがある。わが国でつき板(スライスドベニア)業者がスピナールと称し ていたことがあったがこれは誤用である。
 
2.メルサワ属の区分
 植物学的分類でこの属を次の2節にわけることが行われている。
 (1)Sect.Anisoptera:異名にSect.Pilosaeがある。花芽は皮針形で鋭尖頭を示す。雄ずい葯隔の付属体は糸状で長い。雌ずいの足体(stylopodium)の幅は子房と同じく、球形から卵状長楕円形でビロード毛があり花柱は短い。枝の若い部分と葉の下面に は通常著しい鱗状毛があり、またしばしばビロード毛をもつ。Anisoptera costata KORTHALSのほか大部分の種類はこの節に含まれる。
  (2)Sect.Glabrae:花芽は球形に近い。雄ずい葯隔の付属体は短く突起状を示す。雌ずいの足体は子房をとりまく平たい円板状となっている。花柱は糸状で長い。枝の若い部分と葉の下面には鱗状毛が少ないかまたは無毛である。Anisoptera laevis RIDLEYほか数種がこの節に属する。
3.メルサワ属の概要
 常緑の中~大高木で大きいものは高さ65m、直径1.5mにもなり、最大3.4mの直径が記録されている。樹幹はふつう真っ直ぐな円柱状で枝下は長く板根は大きい。樹冠の形は不規則な半円形から長楕円形である。樹皮は灰褐色、黄褐色などでやや浅い不規則 な割れ目があり、高令になるとフレーク状に剥げて落ちる。内樹皮はふつう淡黄色と橙黄色の層が交互に重なってできている。樹幹面の傷口などから白色~黄白色、ときに緑色を帯びた樹脂が滲出する。小枝の先などの若い部分に鱗状毛を布くものが多い 。葉は互生する革質の単葉でふつう中ぐらいの大きさ、倒卵形や長楕円形など、先端は通常短い鋭尖頭、基部は鈍形または円形で鋸歯はない。側脉は10~25対あってその先端は葉縁近くで弯曲して上のものに連結する。側脉間の細脉は密または疎な階段状 を示す。下面に鱗状毛を布いて黄褐色などを呈するものが多い。葉柄は上端近くで僅かにふくらんで少し曲がるのが見られる。
 やや長い総状花序または円錐花序を頂生または腋生し、おもに下垂して疎らに花をつける。花序軸にはふつう密にビロード毛を布く。花の大きさは中ぐらい、萼は5裂、花弁は5個で黄白色のものが多い。雄ずいは15個または20~55個が3環をなすかまた は不規則に並ぶ。花糸はやや短く細い糸状で基部が合着し、葯室は4個で楕円形または長楕円形、そのうち内側の2個は外側の2個より短い。雌ずいは1個で子房は明瞭な足体に接続し、花柱は多くは短い。先端が不明瞭に3岐する。堅果に短い柄があって球 形に近く、先端を除く大部分が癒着した萼筒中に包まれている。萼裂片5個のうち外側の2個が細く長いへら形の翅に発達し鈍頭で3脉がある。内側の3個の萼裂片は短い線形でふうつ鋭尖頭である。2個の翅が発達することはフタバガキDipterocarpusに似 ているが一般にそれよりずっと小さい。
4.メルサワ属の材の組織
 散孔材。辺材・心材の境界はふつうあまり明瞭でない。辺材は黄白色~淡黄褐色、心材は淡黄褐色~黄褐色で淡紅色~淡紅褐色の縞が出ることがこの属の材の特徴であるが、材色は時日の経過とともに暗色になり縞も不明瞭になってくる。生長輪は認め られない。木理は交走するものが多く肌目はやや粗~粗で光沢がない。
 材の顕微鏡的構成要素の割合を測定した1例をあげる(タイ産krabakについて)。道管34.7%、繊維状仮道管(道管状仮道管を含む)29.8%、軸方向柔組織6.4%、垂直樹脂道3.4%、放射組織25.7%。道管はほとんど単独であるがときに2~3個がおもに放射方 向に接続する。分布数は3~14/mm2で6~9/mm2のものが多い。径は0.05~0.3mm、単せん孔、せん孔板はふつう水平に近い。接続道管の間の相互壁孔は交互配列をするベスチャード壁孔で径0.004~0.01mm。ときにチロースがみられる。道管の周辺に道管状仮 道管が認められるものがあるがきわめて少ない。繊維状仮道管は材の基礎組織を構成するが量はやや少なく、長さ1.0~2.7mm、径0.015~0.04mm、壁厚はやや大きく0.005~0.01mm、有縁壁孔が不明瞭のため真正木繊維としている記載もある。軸方向柔組織 に次のものがある。
 (1)周囲柔組織は一般にきわめて薄く0~2層、またときには僅かに翼状に発達するものがある。
 (2)垂直樹脂道周辺に帯状柔組織の断片(兼次忠蔵氏の溝周柔細胞)があり眼窩状または翼状となすことが多い。ただし接線方向に長く 連なるものは少い。
 (3)短接線柔組織と散在柔細胞との移行する形のものが一般に多いことが特徴的である。柔細胞の径は0.015~0.03mm、壁厚は、0.001~0.0015mmで結晶は見られずシリカを含むものがある。垂直樹脂道は多くは単独で散在するがまた接 線方向にやや並列する傾向のものもあり帯状柔組織の断片に包まれる。分布数は小さく0~4/mm2、径は0.04~0.17mm、多く白色の樹脂を含む。放射組織は1~9細胞幅で単列はきわめて少なく4~6細胞幅のものが多い。1~120細胞高。構成は異性で、単列部 および多列のものの周縁は高さの大きい方形細胞に近い形のものが多く内部を埋めるのは平伏細胞である。着色物質および結晶を含むことが少なくシリカの存在するものがふつうに見られる。
5.メルサワ属の材の性質と利用
 材の気乾比重は0.50~0.75、ときにこれらより軽いものも重いものもあるが一般に0.55~0.70の範囲のものが多い。樹種名を明らかにした材質数値はそれぞれの項で記載するが、ここには樹種名の明記のないタイ産の気乾比重0.74のものについての1例を あげる。縦圧縮強さ295kg/cm2、曲げ強さ1,104kg/cm2、曲げヤング係数10.5×10(4)kg/cm2、せん断強さ80kg/cm2。概して材はやや軽軟からやや重硬の範囲にあり、強度の値はレッドセラヤ類Shorea spp.とおおよそ同等か、または僅かに大きいと思われる。収縮率についてはタイ産材の報告で生材から含水率12%までで接線方向6.5%、放射方向3.0%があげられかなり大きいことを示している。
 加工的性質では放射組織中にシリカを含むため鋸断・鉋削の際の刃物の鈍化がかなり著しいことがあげられる。従って乾燥材の切断加工にはチップソーを使うことが普通でまた鋸歯のピッチ(歯距)を長くすることが行われる。乾燥は一般に遅く人工乾 燥もやや困難で含水率むらが出やすいが、乾燥による欠点は捩れが出ることぐらいで他に著しい品質低下はあまり見られない。鉋削の結果の仕上げ面はふつう良好である。釘と木ねじの保持力は大きい。ロータリー単板切削は困難でないという。耐朽性は 接地条件では良好でない。伐倒後の丸太を林地に放置すると辺材にアンブロシアの食害によるピンホールが多くできる。防腐剤の注入はあまり容易でないとされている。
 この属の材はマレーシア・インドネシア地域ではとくに重要ということはないが、タイなどの大陸地域とフィリピンではかなり重要である。一般的な用途をあげると軽構造材、建築ではドアー・窓枠その他の内装材・フローリング・天井板など、一般の 家具・器具材、包装箱、棺、現地の茶箱用などの合板その他がある。わが国にはおもにフィリピンのpalosapisが輸入されスライスされたものがスピナールと称してテレビ・ラジオのキャビネットの化粧張りにかなり多く使われたことがある。樹幹上に滲出 する樹脂は上質でなく市場価値はあまりない。
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