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平井信二先生の樹木、木材研究

フサマメノキ属の樹木(その1)
1.フサマメノキ属の分布、名称と形態
 フサマメノキParkia はマメ科 Leguminosae のネムノキ亜科 Subfam.Mimosoideae,または3亜科を科に独立させた場合のネムノキ科 Mimosaceae に属する。
 アジア東南部、ミクロネシア、アフリカおよび南米の熱帯に約40種または約60種が分布する。ただしセレベス、モルッカ諸島には自生しない。
 英名でlocust bean,African locust,中国名は球花豆、マレーで petai,kerayong, フィリピンで kupang,ブラジルで faveiro,visgueiro などという。
 高さ30m、直径1mまで、またはときにそれ以上となる高木で板根が出る。樹皮は平滑または縦の割れ目が入って鱗片化する。刺はない。
 葉は互生まれに対生する2回偶数羽状複葉で、通常葉軸に腺体を備え、羽片と小葉は多数でそれぞれ対生し、托葉は単一で小さく早落性である。
 花は小さく黄白色、黄色、紅色などで、きわめて多数が棍棒状あるいは扁球状の頭状花序に密接してつき、その花序柄は長く、 葉腋に単生または数個が分岐の枝端に生ずる。頭状花序の上部に両性花、下部に雄花または発育しない中性花をつける。各々の花はさじ形の苞の腋につく。
 花は5数性、放射相称である。がくは筒状で5個の裂片があるがきわめて短く覆瓦状に配列する。花弁は5個で線状さじ形など、離生または中部まで合着しすり合わせ状に配列する。
 雄ずいは10個あって花冠に着生する。葯は通常頂点に腺体をもつ。雄ずい1個で子房は有柄または無柄、中に多数の胚珠を含む。花柱は細長である。
 中性花は退化雄ずいのみをもつ。受粉はコウモリが行うので、花に大量の密を含み、また酸っぱい匂いをもつ。
 果実は豆果で、花序先端部の数花のみが結実して下垂する。ふつう長楕円形で大きく、直生または湾曲し扁平、遅くなって2弁に裂開する。種子は多数で大きい。
 果実の形態が特異なのでよく目立つ。  
2.フサマメノキ属の材の組織、性質と材その他の利用
 材は散孔材。通常辺・心材の区別はほとんどなく、黄白色から淡黄褐色を呈する。ただし高齢木では中心部の小さい部分が暗色を示すものがある。
 生長輪は一般に不明瞭である。木理は通直または浅く交走し、肌目は粗である。新しく伐採した材には不快なニンニク様の匂いがあるが、 乾燥すると消失し、また材に味はない。ときにピスフレックが現れる。脆心材は見られない。
 道管は単独のものが多いが、また放射方向に2~3個が接続するものがある。分布数は1~4/m㎡、径は0.15~0.30㎜、せん孔板は水平またはやや傾斜し、 単せん孔をもつ。道管相互間の有縁壁孔は交互配列をし、径は0.007~0.008㎜で、べスチャード壁孔である。チロースは発達しない。
 材の基礎組織は繊維状仮道管または真正木繊維で、長さは1.3(1.1~1.6)㎜、径は0.015~0.03㎜、壁厚は0.002~0.003㎜である。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織が顕著で、ほとんどが翼状柔組織から道管2~数個を内包する連合翼状組織となる。
 ときに接線方向に著しく長く伸びて帯状柔組織となるものがある。また放射方向に4細胞層までのターミナル柔組織が見られるものがあり、 さらに基礎組織中に単独で散在する柔細胞もある。隔室になって鎖状に結晶を含む多室結晶細胞が多く現れ、全体的に散在しているが、とくに翼状柔組織の下縁に分布が多い。
 放射組織は1~5細胞幅、2~35細胞高である。その構成はほとんど平伏細胞からなる同性せある。シリカは含まれない。
 材の気乾比重に0.21~0.81の広い範囲の報告があるが、0.40~0.55程度の軽軟な材の種類が多く、重い方では0.55~0.75程度のものがある。
 製材は一般にきわめて容易であるが、けば立ちが出るものがある。各種の切削加工も容易である。ロータリー単板切削は容易であるという。
 伐採された材は放置すると青変色が入りやすい。材の耐朽性は低く、ことに外気・接地条件ではきわめて速く腐朽する。
 一般に用材として用いられるのはペタイ・メランチ Parkia singularis MIQUEL とロ・ヨン Parkia stenocarpa HANCE くらいで、 他は軽軟で多少が連築造作・内装材、家具部材のねり心、箱などの包装用材、雑用材に用いられよう。
 わが国へはM.L.H.(軽軟雑広葉樹材)として輸入されることがある。
 豆果は食用となる。種子は果肉にニンニクのような匂いがあり、現地民は各種の料理の味付けに用いる。そのため伐り残され、 また植栽されていることもある。種子と樹皮は薬用とされ、樹皮にタンニンを多く含むものがある。  
3.フサマメノキの分布、名称と形態
 フサマメノキ Parkia javanica MERRILL (異名 Parkia roxburghii G.DON,Parkia timoriana MERRILL,Parkia intermedia HASSKARL,Gleditsia javanica LINNAEUS)はインド東北部、バングラディシュ、ビルマ、支那西南部、インドシナ、フィリピンに分布し、ときに植栽される。インドで sapota,中国で球花豆、マレーで petai kerayong,kerayong,kedawong,サバで kupang,フィリピンで kupang,baginなどという。
 高さはときに50mまで、直径は1.8mまでになる大高木で、乾季には落葉する。樹幹はふつう円柱状であるが、ときに形の悪いものがあり、著しく板根が出る。
 樹皮は灰白色などでほぼ平滑である。
 葉は互生する2回偶数羽状複葉で長さ20~45cm、羽片は20~30対あって対生またはほぼ対生し、長さ4~12cmである。各羽片に小葉は40~80対あり、小さく線状皮針形などでやや鎌状に湾曲し、長さ7~10㎜、幅1~3㎜である。先端は狭くなって突出し て内側に曲がり、下側基部が耳状になって円脚、左右不同で中肋は上側に片寄る。
 頭状花序は倒卵形、棍棒形などで下部でややくびれ、長さ6~9cm、その柄は長さ20~30cmである。花は黄白色を呈する。
 豆果は長い果柄の先端から数個ぶら下がり、線状長楕円形で長さ20~35cm、幅3~4cm、扁平でほとんど捩れない。熟して黒褐色となり平滑で、通常十数個の種子を含む。種子は卵形などで扁平である。
 
4.フサマメノキの材の組織、性質と材その他の利用
 材は散孔材。辺・心材の区別はおおよそ不明瞭で、辺材は灰褐色で幅が広く、心材は高齢木に現れ淡褐色など、また淡色部分と濃色部分とが交互に帯状になって現れたりする。
 生長輪はやや不明瞭である。木理は通常僅かに交走し、肌目はやや粗である。伐採直後は不快な匂いがあるが乾燥して消失する。材の水浸出液は著しい蛍光を発する。
 道管は多くは単独、断面形は円形に近く、分布数1.5/m㎡できわめて少ない。径は0.1~0.27㎜、多くは0.22㎜ほどで、せん孔板は僅かに傾斜するかまたはほとんど水平で、単せん孔をもつ。
 心材に当る部分ではときにきらきらする樹脂様物質を含む。基礎組織は真正木繊維または繊維状仮道管である。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織の発達が著しく、一般に翼状組織から連合翼状柔組織となって2~3個の道管を内包する。これらは晩材末端近くで接線方向にいくらか長く伸び、 帯状柔組織の様になるものがある。またターミナル柔組織と単独散在の柔細胞も認められる。
 放射組織は1~3細胞幅で、2細胞幅のものが多い。ふつうその高さは低い。L.J.REYES は構成は異性と記載している。
 材の気乾比重に0.28~0.50の範囲の記載があるが、一般に0.42程度で軽軟である。製材、切削加工、乾燥は容易である。材の耐朽性はきわめて低く、またキクイムシ、白蟻の食害を受けやすい。
 材の用途は建築雑用材、箱、マッチ、木靴、浮子などの器具材その他で、市場材となることはほとんどない。丸木舟に用いられたことがある。
 種子を食用とする。果実と種子をすりつぶして醗酵させたものには異臭があるが、現地民はこれを料理の味付けに用いる。樹皮と種子は薬用となる。枝葉を家畜の飼料、莢を洗髪用、 樹皮を網の染料にするとの記載がある。樹は庇陰樹、行道樹に植栽される。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る

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