壇木
宗教行事の護摩供に欠かせないものに、檀木があります。
檀と言う字は、まゆみ と読みます。初夏に白くて可愛い花をつける小高木です。
他に、紫檀、黒檀、白檀、せんだん、等高級な銘木もあります。
しかしながら、檀木と言えば私を忘れてもらっては困ります。
天空高くゆらぐ、護摩供の真っ赤な炎の熱風に、長時間耐えてこの一大イベントの星まつりを
ぐっと支える裏方さんは、なにを隠そう私こと、北洋からまつです。
私、生まれも育ちもロシアはイルクーツク州でございます。日本へ寒気団を派遣する、バイカル湖
の西北の山から、トレーラー、集荷用の支線鉄道、シベリヤ鉄道、と乗り継ぎ、ナホトカを経て
異国日本の舞鶴へとやってまいりました。200年生きてきた証しとて、人類の幸せと供養のため
に燃え尽きることは、至上のよろこびでございます。
今日はふるさとロシアの木材事情についてお話します。
ロシアの森林面積は日本の国土の20倍、世界の森林面積の20%を締めています。
森林の立木量は820億M3あり、この内の80%が、タイガ(針葉樹林帯)を形成し、内訳は、唐松、
エゾ松、アカ松、ベニ松等の針葉樹です。なかでも唐松は針葉樹全体の50%を締めています。
広葉樹は全体の20%(160億M3)あり内訳は、白樺、楢、ブナ、タモ、ニレ、その他になります。
森林の殆んどが、ウラル山脈より東側のシベリア、極東に密生してタイガを形成しています。
因みに日本へのロシア材の入荷量は、昨年まで年間500万M3~600万M3ですから、立木量を
対日量に換算すると、16400年~13600年分に匹敵します。
檀木用の唐松はイルクーツク州北部からナホトカ港まで5000キロの道のりを1ヶ月以上かけて
異動し、ナホトカ港から木材専用船で2日間かけて舞鶴港へはいります。
植物検査、通関の後に日本検数協会による検量が行われます。その際によく伸びた素性の良
い、檀木適材品を選別し保管します。その後改めて檀木検査をうけ合格したものをカットして仕上
げます。
立木を伐採して玉切り(定尺にカット)をする場合、全長20M以上の素材を、生え際から切ると根元
の部分が太くて檀木には不向きで、2番木が最も適しています。検査の際は、目通り(眼の高さの
直径)を揃えるように厳しくご指導を受けております。組み立てる方々のこと、燃え尽きる前後の
危険性をいつも考えながら、より良質の檀木の製作を心がけております。(製作担当者)
気候はなんと年間の8ヶ月が冬です。
イルクーツク州北部の真冬は-40℃~-55℃まで下がり、真夏は+35℃~40℃まで気温が上がり
ます。この極限に近い自然の中で200年間生きてきた唐松は、年輪の細かさ、油脂分、素直さ
強度においては群を抜いています。
他の国の木材と比較してみますと次のとおりです。
サイズ 長さ 4M 直径 30~32センチ |
|
北洋唐松(ラーチウッド) | 200年 |
米松 (ダグラスファー) | 50~70年 |
ニュウジランド松(ラジェーターパイン) | 35年 |
日本の杉 | 80年 |
日本の桧 | 120年 |
シベリア地方では山火事が発生すると、2-3ヶ月燃え続けることはザラです。原因は風による木と
木の摩擦と、山林労務者のタバコの火の不始末があげられています。
焼け跡には、種子が飛んでいつのまにか森林をつくり自然のサイクルが営まれている。