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常緑の高木または低木。分布は北海道から屋久島にまで。世界でも約100種あるが、日本では6種が自生する。人工造林としても、スギ、ヒノキ、カラマツに次いで多い。葉が二葉の黒松(クロマツ)、赤松(アカマツ)、琉球松(リュウキュウ(アカ)マツ)、五葉の五葉松(ゴヨウマツ)、這松(ハイマツ)、朝鮮五葉(チョウセンゴヨウ)、ヤクタネゴヨウがある。一般にはこれらすべてをマツと称しているが、多くはクロマツ、アカマツの事を指すこともある。木材、林業、造園、盆栽などの業界人はきっちり分けている。オマツ、メマツとも呼ぶ事もあるが、雌雄の区別ではなく、葉はやや太めで葉先が痛いほど尖っている男性的なものを雄松(オマツ)、葉が細く葉先がそれほど痛くない、やわらかいので雌松(メマツ)と呼ばれたのが定着した。日本の松は長寿と言われているが、実際は800年ぐらいらしい、しかし世界最高長寿の木は米国のブリスコンパインで松である。 クロマツは、海岸の防風林として広く造林されたことや、荒地にも根付く先駆的な樹種のため、一般に海辺に近い処で見られ、アカマツは、内陸部に多い。両者の間の雑種もあり、アイグロマツと呼ばれている。これらの松の性質は、一般的には比較的よく似ていて、特別でないかぎり、同じものと思ってさしつかえない。 日本を代表する木としては、先のスギや桜があるが、松を代表としても恥ずかしくないものだ。昔から絵や歌、文学などに一番多く利用されてきている。 松の語源は非常に多く、またはっきりしない。日本国語大辞典にはなんと20以上の説をあげている。調べてみると大きく二つに分類される。「待つ」に代表される動詞の言葉につながるものと葉の色や形に関するものとである。 万葉集に詠われている高木の中では、さくら 47首、やなぎ 36首、まき 21首、ヒノキ 10首、スギ 8首、けやき 8首あるが、松が77首もあり、一番多い。それだけ万葉の人たちの中で、身近な木であったのだろうが、歌は松の長寿や緑が変わらないことを褒め称え、永遠に「待つ」を松にかけたものが多い。 神が木に降りてくるのを待つ、生末(おいさき)を待つ、あたらしい葉が出るのを待って、古い葉が落ちることから、待つの意味などがある。 松の葉の形からは、その末広がりから繁栄を願い、分岐する2つの葉は、人の股(また)の形から「マタの木」と言われ、ここからマツに転化したという。さらに街、町(マチ)という言葉も生まれ。また、巷(ちまた)も同じ派生と言われている。 つい最近のプレカットによる在来建築の家では、見ることが出来なくなったが、古来より、最近の家までの天井の上には、曲がった松の丸太が梁に使われていた。曲がっている丸太は重さを分散するのに都合がよく、また粘りもあるので、利用されてきた。最近古い民家を改良して喫茶店やレストランなどに改装するのがはやってして、とても雰囲気がいい。こういう空間では黒光りした曲がった力強い松丸太を見ることができる。 |
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植木屋にとっては松は特別なものであるようだ。特にアカマツにかなう木はないと言う。気品、優美さ、やさしさは庭木の王者の風格といっていいらしい。特に幹のよさはすばらしく、座敷前に植えて幹だけを眺められるようにすることもあるという。しかしアカマツは大気汚染に弱いため、都市部ではクロマツを使わざるを得ないが、アカマツがダメならクロマツがあるとは言いたくないと聞いたことがある。 松竹梅の3点セットはよく考えられたものと思う。植物学的には松が裸子植物(らししょくぶつ)の代表で、竹が単子葉植物(たんしようしょくぶつ)の代表、梅が双子葉植物(そうしようしょくぶつ)の代表で、植物界の三界を表している。そして驚くことには、正月のしめ縄飾りに使う、ウラジロは隠花植物の代表になるので、、正月の4点セットで、植物界全体の代表が揃うという事になる。先人の賢さにはいつも敬服するばかりである。 |
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私の祖父が大阪に店を出し、父が実質経営者で仕事を始めたのが杭丸太の仕事であった。田舎からの世間知らずだったため、何回か人に騙されたりして苦労したようだが、それなりに発展し、私たちの会社の基礎を作った。 戦後の経済復興と高度成長のおかげでビルの基礎に、地下鉄工事、トンネル、埋め立てなどの工事に松や杭丸太矢が相当量使われた。矢板は地下鉄やトンネルの土留め用に利用された。松杭は当時のビルの基礎に利用されて、そのまま地中に残っているものも多い。 私たちの会社の仕事の中で、時々ビル解体時に引き抜いた松杭を引き取る事がある。五十年間、地中でビルを支えてきた松杭だが、水をかけて、洗ってやると、みずみずしい松丸太に生まれ変わる。新品の松丸太としてまた利用できるのである。地中、特に水の中に入っている時は非常に耐久性がある木だ。他の木についてもいえることだが、酸素の供給がない場所では腐朽菌は活動できないのである。今の時代では数少ないエコロジーな産業資材だが、今はコンクリートの杭にとって変わられた。 住宅用としては松は木材が真っ直ぐでなく、また変色したりするので、特殊な銘木的利用以外は構造用に利用されてきた。赤松皮付丸太は、茶室、数寄屋造りの床柱などに好んで用いられます。 |
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それ以外の用途としては松共通として、車両材,船舶材,梱包材家具、器具、マッチの-軸木、つけ木、経木、木毛(もくもう)、薪、パルプ材、盆栽などが知られています。かつて、パルプ用材として、は本来はエゾマツやトドマツなのだが、大量にあったマツ類をパルプ用材として推奨した結果、本州のマツの多い地域で重要な原料になった。 赤松は松茸の取れる木としても有名です。焼物の薪としても用いられる。 良材で有名なのは、南部松(岩手県)・津島松(福島県)・日向松(宮崎県)。 黒松は根株を不完全燃焼させて作ったススを松煙といい、墨、墨汁、黒色の印刷インク、靴墨などの原料として用いる。樹皮の甘皮は「赤龍皮」として血止薬に、根に出来るキノコ(マツホド)「茯苓」は漢方で利尿剤や水腫、淋疾の治療に用いられる。 アカマツより重硬な良材でより樹脂分が多く、均質に含まれている。面材として使用する場合、長い年月、空ぶきして磨くと重厚な光沢のあるものに仕上がる。 水戸松、道了松、沼津松、三河松、山陰松などが有名ですが 五葉松はアカマツなどに比重交すると木材は均一で、年輪は明らかではない。肌目は精で、木理は通直である。狂いは少なく、切削加工しやすい。保存性は低いが、製品に狂いが少ないので、木型用材としてすぐれている。現在では蓄積が少なくなり、ロシアから輸入されるベニマツ(チョウセンゴヨウマツ)が代用されている。。 肥え松、肥松(こえまつ)はもともとは樹脂名ではなく、アカマツ、クロマツの老木の根に近い部分からとれる脂の多い材の事である。材木屋の中でも、肥松という木があると思っている人もいる。 肥え松はあかまつよりもクロマツの方がよいものが取れると言われている。 これで作った器などは、太陽にかざすと真っ赤に透ける。これで作った器やお盆は特有のベタつきがあり、若い人の中では嫌がることもあるが、自然の不思議なとこころで、2-3カ月使うとべたつきがなくなり、拭き込めば、拭き込むほど色艶が出てくる。10年も使い込めば、漆器のようになってくる。普通の漆器などはそんなに使うと艶が無くなったり、剥げたりするのに、肥え松の器はそんな新倍はいらなくて、長持ちする。 同様に昔から家の床の間の地板、棚板、床框に利用されてきた。樹脂分の多い杢板は、黒松の大径木から得られるが、最近は脂松の得られる大径杢板が希少になってきたため、ほとんどの場合本物ではないのが残念だ。ツキ板を張った合板や米松、ラオス松などがその役目になっている。 昔の農家には松脂の塊がよくあった。火にあぶりやわらかくして、足のひび割れに詰め込み、上から熱い火箸で埋め込んでしまう。田んぼ仕事に裸足で入るのに、傷口があると、水が触れ痛かったり、ばい菌が入ったりするのを、これで防いでいた。松の樹脂には、テレピン油、松脂、タールなどが含まれてして、木が傷ついた時に、その傷口を多い守る働きがあるが、人の助けにもなっていたのである。 全国規模の盆栽展を見学したことがある。それ以前に東京駅構内での展示があり、心を少し奪われたことがあったからである。すごいとしかいいようがないもので、圧倒されてしまった。よくもまあ、あの小さな空間に、大きな樹木を詰め込んだのだろうか。じっと見ていると、本物の樹木を見ている錯覚に陥る。海外の作品のパネル出品も見た。若い人も結構きいてる。Bonsai が世界の共通語になっていて、日本ではミニ盆栽も若者の人気が集まってきている。 その盆栽の中で、松は欠かせないもので、クロマツ、アカマツ、ゴヨウマツが数多く出展されていた。触れてはいけないので、見るだけだが、クロマツとアカマツは葉が異なるのがわかる。 盆栽に詳しくない人でも、きっと興味を持って見ることができるだろう。 このような盆栽を創り上げるには、並大抵の努力では、あるいは主人一人の力では出来ないだろう。 永井荷風の短編で以前読んだ「一月一日」というのを思い出した。 明治時代の米国で駐在する将来を嘱望された銀行員の正月でのひとときの会話を短編にしたもの。一人の若者が日本食や日本酒を一切口にせず、日本人との宴会にも合流しない事が、話題になるが、ある人物がその理由を話す。 父が購入した松の盆栽を急に振り出した大雪から守るために、母がそれを取り込みに行き、そ時に風邪にかかり、亡くなってしまう。何の楽しみもなく、逝ってしまった母に対する不憫さが重く彼の心に残り、その後縁日なので、植木を買い求める人を見ると、身震いをするようになってしまっていた。 一方米国での生活は、米国での男女分け隔て無く愉しむ理想の社会で、日本の封建社会を思い出したくないため、日本の食べ物などには口にしないというのであった。 今の日本では考えられないことであるが、当時の家長の関白ぶりがよくわかる。また盆栽を守るのも命がけの仕事であった。 樹木に興味のある人なら、一度は考えて見たことがあるのではないだけろうか、日本の城には必ずといっていいほど松の老木がある。また多くの松がある。 松の根は昔から松明(たいまつ)として使われてきた。アメ色の松根は、肥松(こえまつ)といい、テレピン油を含んでいて、よく燃え、風や雨でも消えない。2次大戦末期には、飛行機の燃料にするため各地で松根油(しょうこんゆ)を集めるため、松根堀がされたという。年配の方では経験のある人も多いと思う。 また、私は自宅に小さな暖炉があるが、冬には様々な木を燃やしては愉しんでいる。松の松笠はピンポン玉のセルロイドのように燃える。とにかく火力がある。 このように、発火しやすい松を植えるのは、城としてはなはだ危険すぎる。火矢でも射られたら、ひとたまりもなく炎上するだろうに。 ある本にこの答えが載っていた。日本の城は、戦(いくさ)を考えていなかった、あるいはいつしか忘れ果ててしまっていたというのだ。戦よりも儒教思想のある教養人化した武士は、主人への変わらぬ忠誠の象徴として、せっせと城の周りに松を植えたというのだ。 なるほどそのようなものかと思っていたが、これを書いているときに気が付いた事がある。 松の甘皮は食べることができるのである。天保の飢饉では、農村部では松の甘皮などを食して飢えを凌[しの]いでいた記録がある。明かりにもなり、非常時の食料にもなり、用材にもなる。 大阪・堺市の産業廃棄物埋立地に森を創るという「共生の森プロジェクト」のワークショツプに参加したとき土が50センチしかなく、それでクロマツなどが育つか心配でいろいろ調べたが、結果は問題ないことがわかった。もともと松は土壌が荒地でも根づく先駆樹種で、岩などの上でも育つ。城などを人工的に作った土地では、十分な土は入れられない。他の樹木は根づきにくいだろう。このようなことから城で植える木としては松が選ばれたのだろう。 日本のアンデルセンといわれる浜田広介(ひろすけ)は童話作家として50余年、児童文学ひとすじに1000編余りの作品を残した。処女作「黄金の稲束」をはじめ「むくどりのゆめ」「泣いた赤おに」「りゅうの目のなみだ」などが有名だが、「砂山の松」というのがある。人間といすかの物語である。 神は人間といすかを作り、「最後のひとつは残しておけ」と言って地上にやる。いすかの嘴は松笠の実を食べるのに好都合で、松林に住み着いた。人間は生活に困って、松林の切ってゆく、おろおろと飛び回るイスカを見て、一本の松だけは残す。いすかはひとつの松の実を食べ残して死ぬ。10年数年の歳月が過ぎ、実は松となり、海を渡るツバメがその木で翼を休める場所になるのである。 広介は当時の発展する世界と比較して、古来からの習慣にある、全部収穫せずに、ひとつは残す先祖から受け告げられてきた知恵がなくなることに、危機を感じたのではないか。 森林を切る場合でもこのように、全部切り倒すのではなく、いくつかの母樹(ぼじゅ)を残すやり方もある。 そこから新しい森林が再生される。全部切り倒して、そこに苗木を植える方法もあるが、どちらがより自然かは明らかである。 バーなどで注文するミックスナッツの中には、松の実が入っている事がある。 マツカサ(まつぼっくり)は種鱗(うろこ)に覆われているが、熟すると割れ、外側に反り返えってくる。そのうろこの下に一対の種子(実)が入っている。種子は翼があるものとないものがある。アカマツ、クロマツは長い翼がある。 そして種子は小さい。遠くに飛ぶためだろう。ハイマツ、チョウセンゴヨウなどは翼がなく、種子は大きい。これは動物に運んでもらうためだろう。ゴヨウマツは中間で、小さな翼をつけている。アカマツ、クロマツは食するには小さすぎ、ヤニ臭さがある。ハイマツ、チョウセンゴヨウは大きさも適当にあるが、地域的に限られる。 それで市販されている実は、ほとんど中国からのものである。 松の実はマツカサの中にある種子の胚乳で、その70%が脂質(ししつ)のため、滋養強壮効果がある。中国では「長生果(ちょうせいか)」と言われている。 脂質の約60%が不飽和脂肪酸なので「血液さらさら効果」もあり、新陳代謝を高めるビダミンB2も豊富。栄養価が高くも、癖のない味だからだろうか、和洋の菓子や料理に使われている。オーブンで140度で12分ほど焼くと、香ばしくなって、より美味しくなる。 |
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●日本の各県で松を指定しているところ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●松のエッセイ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
木偏百樹 83.まつ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
●松に関することわざ (WOOD databaseより抜粋) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●その他万葉集にあるの松関係のもの (WOOD databaseより抜粋) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●万葉集の松 | ||||||||||||||||||||||||||
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