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樹から木までの散歩道

中国原産で、我が国には奈良時代に伝わり、現在でも植栽されている。
柳とはシダレヤナギ・ネコヤナギ・カワヤナギ・コリヤナギなど、ヤナギ科ヤナギ属に属する樹木の総称。楊の字もあてられるが、中国では、シダレヤナギに代表されるヤナギ科ヤナギ属のものを柳、ポプラの仲間のドロノキ・ヤマナラシなどのヤナギ科ハコヤナギ属ものを楊と区別して使われことが多い。ともに水辺を好む落葉性の木である。
 日本では柳という字はシダレヤナギに当てられるもので、万葉集のヤナギはシダレヤナギと解釈してさしつかえないと聞いたことがある。そのためか日本では柳はシダレヤナギをさすことが多く、今回もシダレヤナギについて述べたい。雌雄異株だが日本では雌株は少ない。
柳の名の由来はいくつかあるが、「梁(やな)に使った木」からの転化というのが有力。梁とは川の瀬に木を並べ、水が一箇所から流れるようにした魚をとる仕掛けをいい、材料としてヤナギが多く用いられた。
街路樹に多く利用されていてスズカケノキ、イチョウにつぐ三大街路樹のひとつといわれてきたが、量的には10番目くらいで人気は少し低下しているようだ。
私の住んでいる富田林市では通りに応じて街路樹が異なり、私達の目を楽しませてくれる。内田元市長の考えだ。明治池公園や小金台小学校前などの街路樹がシダレヤナギだ。遠回をしての通勤時にここを通る。シダレヤナギであるのに、刈り込んでいるため、遠目には柳と気がつかないかもしれない。金剛駅のタクシー乗り場には地面に届くぐらいシダれているシダレヤナギがある。駅のエスカレータで下りてきて柳が視界の中に入ると、タクシーの乗り場が船着場に見えてくる。
世界各地には100種を越える柳があるが、木材そのものに関しては大きな差はない。色調は淡く、肌目は非常に精であり、特別な杢をもたない。重さはポプラとほぼ同じだが、生長のよいものはいくらか軽い。乾燥は早く、良好で、一度乾燥すると、利用の際は安定している。加工は容易で仕上がりもよいが、特定の条件下では腐りやすい。気乾比重は0.50~0.60。 軽く、軟らかくて強靭性があるため、変わった用途がある。まな板、裁縫の裁ち板、義足や義手に用いられてきた。ささくれがおきにくいため、床板にも利用される。




柳の炭は絵画用に適している。炭の濃淡で表現する木炭画は、その木炭にはクワ、トチ、ハンノキなども利用するが、全体の70%が柳だという。やわらかくて伸ばしやすく、また手に入りやすいからだという。
また炭は漆器、うるしのとぎ出しや、火薬の原料にも適している。摩擦を受けても簡単に発火しにくいのでトンネルでの巻揚げギアのブレーキブロックに使われる。
とくに強度があるわけではないが、エネルギーを吸収する性質があるため、クリケットのバットには最良の木材とされている。クリケットのバットは、硬く均一に生長するよう植栽された特殊なヤナギから作られる。

また卓球のラケットとしても性質を生かして特殊な用途を持っている。卓球のラケットはヒノキが有名だが、利用者は少ないけれど柳のラケットには存在感がある。私も購入し利用したことがある。反発力はないので攻撃には向かず、必然的に守備のカットマンタイプのラケットとなる。打球感としては、相手の強打を一瞬吸収するようなところがある。相手からの圧力を上手に避けることを言う「柳風にしなう」、「柳で暮らせ」、「柳に雪折なし」、「柳に風折なし」、「柳に風」、などの諺どおりのラケットである。
諺といえば、ちょっと調べても50以上ある。「WEB木の情報発信基地」のことわざデーターベースをご覧いただきたい。印象的なものをピックアップすると、「いつも柳の下に泥鰌はおらぬ」、「柳絮の才」、「柳が歩めば花が物言う」、「柳は弱いが他の木を縛る」、「柳は緑花は紅」、また四文字熟語でも「柳眉倒豎」、「敗柳残花」、「問柳尋花」、「折花攀柳」、「柳巷花街」、「柳暗花明」などがある。それぞれの意味があり面白いが、花柳界・遊郭に関係するものが多い。
ふるさと切手「柳とカエル」には、柳に飛びつくカエルを見つめる小野道風が描かれている。「何度も失敗するが、ついに柳の枝に飛びついたカエルを見て、努力の大切さを悟った」の話は有名で、何事も努力すれば成し遂げることができる教訓として、戦前の国定教科書にも載せられていた。努力や我慢することをあまり教えない学校教育を考えるとこの話を復活して欲しいと願うものだ。
ヤナギは木材業界の最近の厳しい情勢でも、あきらめずにさまざまな努力・工夫をして生き残らねばならないと説いているように思う。

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