本社が木材会館より美原町に移転されてからは、お顔を拝見するのも年に一・二度でございましたが、社員の方々からお元気でご活躍されているご様子と伺っておりましたし、平素からご自分のお身体には充分気を付けられ、定期的に検査も受けておられましたので、まさかと疑った程でございます。
しかし現実は夢ではありませんでした。
今から二十数年前、当時西区九条の小さな私の店へ突然入ってこられ、奇麗な版画の絵ハガキに文章を印刷して欲しいと云われたのが最初の出会いでございます。
当時から大青協さんとお取引願っておりました関係で、お名前だけは知っておりましたが、この人があの中川さんかと思った遠い記憶がございます。
以来今日まで、永い間お付き合いしていただき、種々ご薫陶を受け、場末の焼肉屋で酒を汲み交し、カラオケバーで歌を唄い乍らも、中川さんの一言一句に耳を傾けたものでございます。
又、ご母堂さまの追憶集「日々新たなり」の出版に参画させていただき、叱声されながら共に苦労した日々が懐しく想い出されますが、今日、私が中川さんの追憶集に寄稿するようになるとは夢にも思われず、人生の儚なさが身に泌みます。
庶民性の中にも崇高な精神と先見性でご指導賜わりましたことは、私の今日の糧となり、生涯忘れることのできないものであります。
ありがとうございました。
まだまだ壮大な夢がおありになったことと思いますが、ご子息も夫々立派に成長され、三本の矢は固く結ばれ、新社長のもと役員、社員の皆さんが一致団結、社業の発展に邁進されておられます、どうか安らかにお眠り下さい。
何のご恩返しもできず、又近いうちに「てっちり」のお美味しい店へご案内する約束を果すことができなかったことが残念でなりません。
お許し下さい。
最後になりましたが、中川家の今後益々のご隆盛と株中川木材店のご発展を祈念いたします。
合掌