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追悼の言葉

日本合名会社 日豊モータープール 代表社員 日本隆造
想いおこせば私と亡き藤一君との最初の出会いは敗戦の色も濃い昭和十九年暮の御坊中川家宅に於てでありました。

当時藤一君は堺野砲射隊に於て兵器係将校として重責の任務について居り、私は大阪の歩兵第二十二部隊の築城主任兼副官として、御坊に在籍して居りました。

その時藤一君は二十四才私は二十九才の血気旺盛な時でありました。

これは当時私が寄宿させて頂いて居た塩路敬三様に御連れ頂いたのです。

これが切っ掛けとなり、終戦の翌年愚昧輝子との縁談が成立し、今日に至った次第です。

御両親、姉君達を交えて夕食の御馳走を受けた後二人だけで種々と戦況について会談を重ねました。

今も全々昨日の事の様に思われ万感胸を打つものを感じて居ります。

其時の印象は率直に云って良家の後継者としては適任であると感じましたが、其後約一年結婚に至る迄数回にわたって拙宅に於て面談の機会を持ったのでありますが、其の度毎に、如才がなく明朗そのもので、軍隊経験からと申しましょうか、統率力のある人柄と拝察致しました。

現在に於いてもそれが間違って居なかったなと確信して居ります。

昭和二十一年の結婚後、縁あって義弟となり、其後四拾有年種々と生活上の変遷のあった事は否めませんが、年と共に一層の精進努力をされて完璧に近づいた事は、万人の認める所と信じます。

周囲の人達の為には、その労を惜まず最善の努力をして最後迄遂行する事は云うは易く私共凡人には容易に出来るものではありません。

藤一君はそれを実践されたのです。

藤一君の信条とする所は第一に家門を尊重する事併せて家族の一致団結を重点として世の為、人の為に定められた人生を模範的に生き抜く事ではないでしょうか。

そして其の目的を立派に果したのではないでしょうか、中川木材店を立派に継承し、それを優秀なる三人の子息たちにより一層大なるものにしてゆずる事が出来たのです。

藤一君の精神は三人の子弟に依って益々大きく育まれて行く事は間違いありません。

ただ思いますに、あと十年、いや五年でも此の世にあって欲しかったのにと悔まれてなりません。

併しこれもクリスチャンである藤一君は神のおぼし召しと満足して昇天したのだと信じて疑いません。

冥土にある藤一君をより一層満足させるには御遺族の諸氏が生存中の藤一君の精神を遵奉して一致団結し博愛の心を以って邁進される事を祈ると共に、必ずや成就されると信ずるのであります。

終りに臨んで哀心より藤一君の御冥福を祈る次第であります。

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