冷静になって色々な問題を抱えた、私たち林業界の現状と今後のあり方を考えたとき、余りにも中川さんを失った痛手の大きさをつくづく感ずるのであります。
中川さんの御生前の御活躍は、今更申し上げるまでもございませんが、私達川上の森林経営者に取りましては、長びく苦境からの脱却に思い悩む毎日の中にあって最大の難関であります。
○間伐材の需要拡大。
○国産材の需要拡大に対応する内地材の流通問題。
などについて常に豊富な学識と経験から、広い視野に立った御意見を頂いてまいりました。
しかしながら、私は中川さんを思うとき、今一つ、どのような逆境にも耐え抜く卓越した精神力の強さを感ずるのであります。
決して挫けることがない自信と精神力こそ、今の林業界の建て直しに必要な唯一のものではないでしょうか。
中川さんは、何時も笑顔を絶やさない人でありました。
お会いしたとき、「ヤアー」と笑顔で挨拶されるお姿が今でも私の脳裏を去ることがございません。
そして決して苦しいお話はされず笑顔で理論整然と前向きのお話しをされ、聞いているうちにいつしか自分の体内に力が湧き出てきたものであります。
このような事がどれだけ私たちの励ましになった事でしょうきっと中川さんは、私たち以上に苦しく悩んでおられた事と思います。
この笑顔こそ中川さんが、私たちに残された貴重な遺産ではないでしょうか。
今こそ私たちがこの大きな遺産を生かして、不況からの脱出に真正面から取り組むことが、中川さんに対する何よりの餞であると信じ、明日からの険しい山道を力強く前進することをお誓いするものであります。