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住宅のインテリアはなぜ和風回帰に向かうのか

直線文化と曲線文化を考える

完全性の美と不完全性の美

パルテノン
さてここで、私は和風と洋風を比べていただくために、2組のイラストを準備した。一つは神の宮居についての比較であり、もう一つは、インテリアについての比較である。インテリアは、ベルサイユ宮殿とほぼ同じ時代に建てられた桂離宮のほうが適当であろうが、それは容易に想像していただけるであろうと思ったので、ここには、京都御所を取りあげてみた。

くだくだしい説明よりも、この図の比較のほうがはるかに雄弁にその違いを語ってくれる。一方は、すべて直線で構成されているのに対し、他方は、ほとんどが曲線で構成されている。また、前者は自然材料の木の肌の美しさを訴えているのに対し、他方は、人工材料の美を誇っている。私たちの戦前までの住まいの室内は、前者に属するものであった。

だが、戦後は急速に後者に移り変わった。直線から曲線への変身である。ところで今、話題になっている木造の家の人気というのは、つきつめると曲線から直線への回帰の問題といえそうである。さらにまた、人工材料から自然材料への回帰といってもよいであろう。

私は、そうした住み手の嗜好の変化を京人形と、いずくら人形を例にして、人気の移動する理由を説明してみたいと思う。

京人形は、美人をモデルにして生きている美人よりももっと美しい彫刻を創ることをねらいとして、江戸末期に完成したものであった。ところが、そのころ全く異質のいずくらとよばれる人形が生まれて人気を奪った。

いずくら人形というのは、頭でっかちで体の小さいデフォルムされた人形のことである。京人形は、完全性の美をねらったものだが、いずくら人形は、あえて不完全性の美によって見る人の愛情に訴えようとした。対象に欠けたところがあると、それを見た人は欠けたところを補ってやりたいという愛情が生まれる。それをねらいとすれば、形は変わってくることになる。

あまりよい例ではないが、偏差値100%の優等生は立派だが、ちょっと抜けたところのある子供もまた可愛いい、といった話と似ている。美しさは、完全なものだけに存在するわけではない。不完全なものにもそれなりに魅力があり、それが美しさに変わるのである。

工業化住宅は、100点満点のものをさらに120点にレベルを上げようと努力した。一方、地元の木を使った木造住宅は不完全性の美と自然材料のもつ魅力とによって住み手の心をひきつけたのだ、と私は思う。

工業製品は、一般に均質だから使いやすいし、見た目にも美しい。しかし、いずれの軸を取っても満点だから個性に欠ける。だから、使っているうちに飽きてくる。

ところが、木は一本一本に癖があり、狂ったりあばれたりする。そこに、理屈では説明がつかない心をひきつける何かがある。その特性を、よく理解し欠点を補って来たのが日本の木匠たちの知恵であった。

今、住宅に最も求められているものは、そうした自然材料のよさを生かして使う技(わざ)であろう。そうした事情は、紙についても布についても同様である。

なお、ここで付記しておきたいことがある。それは「木の家はよい家だ」という言葉の乱用についてである。よい設計とよい施工が伴ったときにこの言葉は正しいが、それが欠けたら、最悪の掘っ建て小屋になってしまう。その区別をはっきり使い分けて欲しいと思う。

もう一つは、地元の木がよいという俗説についてである。これを科学的に証明することは現段階では難しいが、次のことを考えると納得がいくであろう。地球上のある地域で環境の変化がおこると、動物は移動できるから、棲息に有利なところへ逃げていく。しかし、植物は動けないから長時間をかけて自分の体質を変える。そして、環境に適応できるよう体質を変えたものだけが生き残る。現在、生えている植物はそれなのである。

宮大工の故西岡常一棟梁(文化功労者)は、私に「木曽のヒノキは最高だというが、奈良の建物には奈良のヒノキが合っている」と教えてくれた。貴重な教訓だと私はそれを信じている。

【パルテノン宮殿】神の住まいは不滅の材料を使い、永久にその姿を伝えるものでなくてはならない。森や林のような自然とは無関係である

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