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第2章 木の文化のルーツ

2.材料の遠心的な配列

これまで私たちは、材料の優劣を論ずるとき、物理的、化学的な方法で試験を行って、その成績を数値であらわし、それによってよいわるいを判断していた。しかしここで考え方を変えて、まず中心に人間をおき、人間との親しみやすさを評価の軸にして、材料を順次遠心的に並べていったら、どんなパターンができるであろうか。
 人間工学的にいえば、体に近いところほど親しみやすい材料をおき、遠くに離れるに従って、馴染みの薄い材料をおいてもかまわない、という理論が成り立つ。その考え方で評価したとき、いろいろな材料がどのような位置づけになるかを調べてみようというわけである。
 さて、人間に一番近いところに来るのは、なんといっても生物材料である。生物材料の代表は木綿と木だ。人間はもともと生き物だから、そうした生物材料が肌に合うし、心も安まるはずである。ナイロンがこれだけ普及したにもかかわらず、肌着にはやっぱり木綿がよい、というリバイバルがおこったのも、それがわれわれの生物的本能と肌が合うからである。皮革とレザー、鼈甲とセルロイド、木とメラミン化粧板、ちょっと見た目は同じでも、自然と人工のテクスチュアの違いを、われわれは微妙にかぎ分けるのである。
 それなら木綿と木の次に来るものはなんであろうか。それは自然材料だ。自然材料の代表は土だが、土もまた生きている。われわれがなに気なく踏む足の下には、何千何万という小動物や微生物がすんでいて、土を生き物にしている。だから夕立が降ったくらいでは谷川の水は濁らない。本物の自然は気の遠くなるほどの長い時間をかけてできた生き物だから、水の汚れを吸い取る。公園やゴルフ場の芝は、緑に映えて美しいが、雨が降るとまっ赤な濁り水が出る。まがいものの自然だからである。 土が死ぬと砂漠になる。だが死んだ土も、火という生き物の手をくぐると、もう一度生命を帯びた焼き物になって、われわれに近づいてくる。陶器の最大の魅力は人間くささにあるといえよう。だから土の次に来るのは陶器である。陶器の次は石であろう。石もまた不思議な魅力をもっている。だが考えてみると、石は地球という大きな窯の焼き物である。そう考えれば、石のもつ魅力の秘密はなんとなく理解できそうな気がする。それなら石の向こう側に位置するものはなんだろうか。それは鉄とガラスとコンクリートだ。これらはいずれも、もともと自然の中にあった素材であった。だからわれわれの肌にそれほどさからうものをもっていない。それにぴったり接して、そのまま長くいるのは困るが、ある距離をへだててならかまわないというのが、多くの人の共通した感じ方であろう。
 ところで、その次に来るものはなんであろうか。私はかなりの距離をおいてプラスチックがあると思う。それはもはや生物的嗅覚という大きな谷間を隔てた、向こう側にある材料といったほうが当たっているかも知れない。なんとなく肌になじまない何かがあるからである。 天然の材料はやがて朽ちて自然に戻るが、プラスチックは、作ったときと同じエネルギーをかけないかぎり、あの生々しい色を永久にさらす。これが限りある生命をもつわれわれに、なんとなく抵抗を感じさせるのかも知れない。
 以上は、地球の表面上にある材料を、人間との親しみやすさを軸にして論じたものであった。ところで、地球の中に埋まっていて、距離の遠いところにあるものほど、人間に合わないという説がある。石油化学系の材料しかり、重金属しかりである。考えてみると、生物はその発生以来、何十万年もの間、地球の表皮上に存在する物質とは何らかの関係を持っていた。しかし垂直方向の深部にある物質とは、これまで出合ったことがなかった。そう考えてくると、水平方向で距離の近いものほど、親しみやすさを感ずるということは、なんとなく納得できる。だが垂直方向にある物質とは、科学技術が進歩した最近になってはじめて、関係をもったにすぎない。そうだとすれば、肌になじまないなにかがあっても不思議ではない。石油化学系の薬品は人体によくないというが、恐らくすべての生物にとってよくないのであろう。私たちは材料を選ぶとき、そういうグローバルな立場からの考察も必要ではないだろうか。
 以上は材料を人-物系の考え方でとらえ、人間を中心において太陽系のように配列してみたものであるが、実際の建物について調べてみると、私たちは無意識のうちに、こうした遠心的な材料の選択をしながら住まいの環境づくりをしていることに気がつく。木綿の肌着を着て、たたみや障子に囲まれ、庭のある木の家に住みたい。昼はコンクリートのビルでもよいが、夜は木の家でないと落ち着かない、といったようなことである。もしそうだとすれば、材料学の中にも人間工学からの発想は役立ちそうである。そして一番近いのは生物材料、その次は工芸材料、次は工業材料という位置づけや、人間とのかかわり合いの深さについても、おぼろげながらその関係は理解できるように思う。
 いま一例をあげよう。コンクリートの建造物を打ち放しの仕上げにすることが日本人は好きである。コンクリートの打ち放しの肌は白木ともよく合うがなぜだろう。コンクリートをそのまま凝固させたものは土が乾いて固まったのと同じだから、鉱物質の死んだ肌をしている。だから魅力を感じない。ところが打ち放しの肌は、木の板を押しつけて表面に木目のめ型をつけたものだから、生物材料に一歩近づく。それが魅力を生むのであろう。先に述べた材料の太陽系的配列でいうなら、一度死んだ土が火という生き物の手をくぐって、焼き物になるのと同じプロセスだと考えればわかりやすい。
 打ち放しのコンクリートをきれいに仕上げるコツは、当て板を根気よく叩くことだというが、それは木のめ型を忠実につくることでもある。だから白木の肌ともよく合うのであろう。
 陶器は窯から出してみないと、どんな出来上がりかわからない。そこが魅力だが、同じようにコンクリート打ち放しの肌も、当て板をはがしてみないとわからない。そこに惹かれるという人もいる。鉱物質のコンクリートに生命感を吹き込むのが打ち放しである。それが焼き物を愛する日本人の好みに合っているのかも知れない。
 これまでコンクリート建造物は石造りのように永久的なものだと、私たちは信じていた。だが意外に弱いことがいまようやく話題になり始めた。特に打ち放しコンクリートにおいてそうである。「コンクリート建築は、果たして歴史的建造物となり得るか」といったような論議さえ出てきている。木には千数百年の歴史をもつ法隆寺があるから、この点は実証済みで安心である。

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