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神谷のインドネシア点描

先住民 焼き畑で森林荒廃の裏

さる大手企業のキャンペーン・コマーシャル、・・・・『森を焼かなければ生きて行けない人がいる』・・・・
多くの方々の胸を打つ名文句でした。
カリマンタンやアマゾンに住む原住民は焼き畑をして命を繋いる。
森林火災も生きんが為に止むに止まれず行う行為の結果であり、誰が彼等を責められようか! 写真のような純粋無垢な原住民は現金収入の道さへあれば何もこのようなことはしまい。
我々は植林をする事により彼等に仕事の場を提供し、現金収入をもたらし、同時に自然環境を守っているのだ。
(…どうだ!) ・・・凄いアピール度ですね。
・・・でも、本当の話でしょうか??????
小職の駐在しておりました東カリマンタンの山にはダヤック族が多く住んでおりました。
首狩りの習慣があり、以前ポンティアナックというところでジャワ島から国内移民してきたマドラ族と抗争してその首を狩った事 で有名となった民族です。
彼等は昔から焼き畑をやります。
でも彼等の焼き畑は今始まったことではなく、煙の被害が叫ばれるよりずーと昔からやっていることです。
そして彼等は自然鎮火する範囲を経験で知っており、その範囲内で焼き畑を行なっているのです。
彼等の焼き畑が無制限な広がりを持つことはありません。
今の森林火災とはいささか趣が異なるのです。
何も言えない現住民を保身の犠牲にして恥じない大手企業のまやかしに小職は嫌悪感さへも覚えます。

では、今の広範囲な森林火災は一体誰が起こしているのでしょうか? 森を焼くために火をつけて儲かる人。
それは農園経営者であり、開発請負会社です。
パーム椰子園などの大規模農園開発権利を取得しますと、その土地の上に元々生えている木々の正式な伐採権・ 販売権を政府から貰えます。
商業価値のある立木は伐採し、木材企業へ売って儲けられます。
この儲けが農園開発の資金の一部となるのです。
しかし森には商業価値のない木々も生えております。
これはどうしましょう? 残しておいたのでは農園開発は出来ません。
一本一本伐採しても有用樹種ではないのでコストに合いません。
一番安上がりな方法は・・・『火を掛けて燃やすことです。

森を燃やす意志を持って火を掛けますので、効率の良い乾期に行います。
雨期では折角火を掛けても雨で直ぐ鎮火してしまうからです。
営利企業ですので燃やすのにもコストパーフォーマンスが必要なのです。
しかし、乾期に火を掛けますとなかなか消えません・・・否、消せません。
どんどん燃え広がって手に負えなくなります。
結果・・・シンガポールが煙で被われる事となるのです。
これが話の裏です。

ことほど左様に世間で流布されている情報と実態とが合うとは限らないのです。

エコにも同じ事が言えましょう。
試験植林で木が育ったことと本当のエコと同じではありません。
本物のエコとはそれが持続的回転を持ち始めて初めて意義が 出てくるものです。
植林は植えることも大事ですがその木を使うことを視野に入れた上で、その用途も同時に開発してやる事が肝要なのです。
そうでないと折角二酸化炭素を吸収する工場として植林をしても植えて終わり、 ・伐り出しても儲からないから誰も伐らない、・伐らないから老木ばかりとなり二酸化炭素吸収力も落ちてくる。
と言った回転となってしまい、苦労して植えたことの意義が損なわれてしまいます。
使って儲かるビジネスモデルを用意した上で、事業として自己回転の出来る植林をなすべきだと思います。
そうでなければただ植えたことを誇る広告宣伝塔のような植林となってしまいます。
それでも満足される企業もあるのでしょうが・・・ 否、・・・それこそが狙いの企業があるのでしょう。
これも話の裏です。
木の良さを最大限に生かしてその利用方法を植林事業と併行して開発する必要があります。
小職はインドネシアでの植林事業に対して一抹の不安を拭えません。
その理由は成長の早いことを重視してその利用を製紙パルプ業界に任すと云った安易さを官主導の取り組みに感じるからです。
任すと言ってもパルプ工場や製紙工場があちこちにあるわけでもなし、にも拘わらずあちこちに植林をして事たれりとしても、工場より遠い 地域の木は横持ち経費に材価が喰われてしまうのです。
いくら木があっても商業的に使えなければ無いのと同じです。
紙パ以外の用途開発をもっと研究すべきと思います。
もっと小規模な投資での植林木使い込み工夫をして行かないとインドネシアでは『ファルカタばかり』、中国では『ポプラばかり』、 と言ったことになってしまいます。

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