佐藤春夫の小説に出てくる樹木(元資料)

元樹種	箇所計
バラ	48
マツ	20
カキ	12
サクラ	9
スギ	8
ウメ	4
ヤナギ	4
クワ	4
ツバキ	4
アジサイ	3
サザンカ	3
ハクモクレン	2
キリ	2
フジ	2
マキ	2
カシ	1
コウヤマキ	1
アスナロ	1
ザクロ	1
キョウチクトウ	1
サルスベリ	1
シイ	1
チンチョウゲ	1
ツツジ	1
ナツメ	1
ハギ	1
ヒノキ	1
フヨウ	1
ミカン	1
ヤドリギ	1
ジンチョウゲ	1

元樹種	小説名	ページ	掲載樹種	掲載言葉
キリ	田園の憂鬱	9	桐	桐畑や片隅ににぽつかり大きな百合や葵(あふひ)を咲かせた農家の庭の前などを通つて。
カキ	田園の憂鬱	9	柿	雑木山の裾や、柿の樹の傍や厩の横手や、
アジサイ	田園の憂鬱	11	紫陽花	その頭の上の紫陽花色に
アジサイ	田園の憂鬱	11	紫陽花	紫陽花の刺繍のある
カキ	田園の憂鬱	15	柿	入口の左手には大きな柿の樹があった
ヤドリギ	田園の憂鬱	16	ヤドリギ	脇の下に寄生木が生えていた
キリ	田園の憂鬱	16	桐	地つづきである桐畑とを区限つて細い溝があつた。
ツバキ	田園の憂鬱	17	椿	竹のなかには素晴しく大きな丈の高い椿が、この清楚な竹藪のなかの異端者のやうに、重苦しく立つて居た。
マツ	田園の憂鬱	18	松	松の樹の根元の濃い樹かげを択んだ二疋の犬どもは、
カキ	田園の憂鬱	22	黒柿	黒柿の床柱と座敷の欄間に嵌込だ麻の葉つなぎの桟のある障子の細工の細かさは、
ツバキ	田園の憂鬱	25	玉椿	大木の白木蓮、玉椿、槇、秋海棠、
ハクモクレン	田園の憂鬱	25	白木蓮	大木の白木蓮、玉椿、槇、秋海棠、
マキ	田園の憂鬱	26	まき	大木の白木蓮、玉椿、槇、秋海棠、
キョウチクトウ	田園の憂鬱	26	夾竹桃	枝垂れ桜、大きな花柘榴、梅、夾竹桃
ザクロ	田園の憂鬱	26	遠柘榴	枝垂れ桜、大きな花柘榴、梅、夾竹桃
サクラ	田園の憂鬱	26	枝垂桜	枝垂れ桜、大きな花柘榴、梅、夾竹桃
ウメ	田園の憂鬱	26	梅	枝垂れ桜、大きな花柘榴、梅、夾竹桃
マツ	田園の憂鬱	27	松	いぶり勝ちな松薪が、めちやめちやに投込まれて、
マキ	田園の憂鬱	29	まき	松は松として生き、桜は桜として、槇は槇として生きた
マツ	田園の憂鬱	29	松	松は松として生き、桜は桜として、槇は槇として生きた。
サクラ	田園の憂鬱	29	桜	松は松として生き、桜は桜として、槇は槇として生きた。
マツ	田園の憂鬱	30	松	その松よりも一際高い桜の木へ這ひ渡つて、
マツ	田園の憂鬱	30	松	一本の小さな松は、杉の下で赤く枯れて居た。
スギ	田園の憂鬱	30	杉	杉の下で赤く枯れていた
マツ	田園の憂鬱	30	松	丁度その生垣に沿うて植えられた大樹の松に覆い隠されて
マツ	田園の憂鬱	30	松	その大樹の松の幹を、恰も虜を捕へた綱のやうに、
マツ	田園の憂鬱	30	松	。その巻蔓のうちの一つは松の隣りのその松よりも一際高い桜の木へ這ひ渡つて、
サクラ	田園の憂鬱	31	桜	その巻蔓のうちの一つは松の隣りのその松よりも一際高い桜の木へ這い渡って、
ウメ	田園の憂鬱	31	梅	梅の新しい枝が
ツバキ	田園の憂鬱	32	玉椿	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
サザンカ	田園の憂鬱	32	山茶花	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
ハクモクレン	田園の憂鬱	32	白木蓮	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
コウヤマキ	田園の憂鬱	32	こうやまき	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
ハギ	田園の憂鬱	32	はぎ	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
フヨウ	田園の憂鬱	32	ふよう	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
チンチョウゲ	田園の憂鬱	32	沈丁花	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
アジサイ	田園の憂鬱	32	紫陽花	年経た紫陽花がある
ツツジ	田園の憂鬱	32	躑躅	形に造った霧島躑躅の幾株かがある
ジンチョウゲ	田園の憂鬱	32	沈丁花	それの下かげの沈丁花がある
サザンカ	田園の憂鬱	32	山茶花	厠を隠した山茶花がある
アスナロ	田園の憂鬱	32	羅漢柏	もとはこんもりと棗形に刈り込まれて居たであらうと思へる白斑入りの羅漢柏(アスナロ)である
ナツメ	田園の憂鬱	32	なつめ	こんもりと棗形に刈り込まれていた
ウメ	田園の憂鬱	32	梅	白木蓮、沈丁花、玉椿、秋海棠、梅、芙蓉、古木の高野槇、山茶花、萩
マツ	田園の憂鬱	33	松	この次にはその松を売ろうと考えて
マツ	田園の憂鬱	33	松	この松だけはこん度の借家人が植木屋を呼ぶときには、
マツ	田園の憂鬱	33	松	門口にかぶさりかかつた一幹の松の枝ぶりからでも
カシ	田園の憂鬱	34	樫	家の側面にある白樫の下には
バラ	田園の憂鬱	38	薔薇	幾株かの薔薇がこの庭の隅にあつた。
スギ	田園の憂鬱	38	杉	さえぎっては杉の木立があった
カキ	田園の憂鬱	38	柿の樹	そうして正午の前後には、柿の樹や梅の枝がこの薔薇の木から日の光を奪うた。
バラ	田園の憂鬱	38	薔薇	柿の樹や梅の枝がこの薔薇の木から日の光を奪うた。
バラ	田園の憂鬱	38	薔薇	それ等の薔薇の木の上へのさばつて屋根のやうになつて居た。
バラ	田園の憂鬱	38	薔薇	かうしてこれ等の薔薇の木は、その茎はいたいたしくも蔓草のやうに細つて、尺にもあまるほどの雑草のなかでよろよろと立上つて居た。
カキ	田園の憂鬱	38	柿	そうしてそれ等杉や梅や柿の茂るがままの枝は、それ等の薔薇の木の上へのさばって屋根のやうになっていた。
バラ	田園の憂鬱	39	薔薇	薔薇はこうしてまでその生存を未まだつづけて居なければならなかつた。
バラ	田園の憂鬱	39	薔薇	ゲエテが彼に遺して置いてくれたではないか――「薔薇ならば花開かん」と。
バラ	田園の憂鬱	39	薔薇	薔薇は、彼の深くも愛したものの一つであつた。
バラ	田園の憂鬱	40	薔薇	大食国の「薔薇露」を珍重し、この「換骨香(くわんこつかう)」を得るために
バラ	田園の憂鬱	40	薔薇	誰しも到るところで薔薇の噂を聞くほど
バラ	田園の憂鬱	40	薔薇	さうして、薔薇の色と香と、さては葉も刺とげも、それらの優秀な無数の詩句の一つ一つを肥料として己のなかに汲み上げ吸ひ込んで―
バラ	田園の憂鬱	41	薔薇	この日かげの薔薇の木、忍辱の薔薇の木の上に日光の恩恵を浴びせてやりたい。
バラ	田園の憂鬱	41	薔薇	忍辱の薔薇の木の上に日光の恩恵を浴びせてやりたい。
バラ	田園の憂鬱	41	薔薇	これらの薔薇の木はその哀れな点では曾てのあの莟の花の比ではない。
バラ	田園の憂鬱	41	薔薇	南国とても寒中は薔薇に寒すぎたに違いない。
バラ	田園の憂鬱	41	薔薇	彼は「薔薇」という文字そのものにさへ愛を感じた。
バラ	田園の憂鬱	42	薔薇	にこにこしながら薔薇の傍らに立った
カキ	田園の憂鬱	42	柿	最ものさぼり出た柿の太い枝を引き初めた。
クワ	田園の憂鬱	42	桑	錆びた鋸と桑剪り鋏とを
バラ	田園の憂鬱	43	薔薇	あの枯木に等しい薔薇の枝に降り濺いだ。
バラ	田園の憂鬱	43	薔薇	薔薇を抱擁する日向(ひなた)は追々と広くなつた。
ウメ	田園の憂鬱	43	梅	押しかぶさった梅や杉や柿の枝葉が
クワ	田園の憂鬱	43	桑	彼は桑剪り鋏で
バラ	田園の憂鬱	43	薔薇	薔薇の木の上の蜘蛛の巣を払うた
バラ	田園の憂鬱	43	薔薇	薔薇の木の上の蜘蛛の巣を払うた
スギ	田園の憂鬱	43	杉	押しかぶさった梅や杉や柿の枝葉が
カキ	田園の憂鬱	43	柿	押しかぶさった梅や杉や柿の枝葉が、追々に刈られたからである。
サクラ	田園の憂鬱	44	桜	隣の桜の木へまでも纏(まつ)はりついた藤蔓は引つぱられて、た
サクラ	田園の憂鬱	44	桜	又桜の枝にひっついていた
マツ	田園の憂鬱	44	松	ただの松の枝と桜の枝とをたわめて
フジ	田園の憂鬱	44	藤	纏りついた藤の蔓は
マツ	田園の憂鬱	44	松	松の小枝から梢へそれから更に隣りの桜の木へまでも
マツ	田園の憂鬱	44	松	引き分けると、松は其時ほつと深い吐息をしてみせたやうに彼には感ぜられた。
マツ	田園の憂鬱	44	松	その蔓を縒(より)をもどすやうにくるくる廻しながら松の幹から引き分けると、
クワ	田園の憂鬱	44	桑	桑剪り鋏で一息に断ち切った
フジ	田園の憂鬱	44	藤	あの藤の太い蔓を
マツ	田園の憂鬱	44	松	彼は松に絡みついているあの藤の太い蔓を、根元から、
サクラ	田園の憂鬱	44	桜	ただの松の枝と桜の枝とをたわめて強く揺ぶらせ、
マツ	田園の憂鬱	45	松	植木屋は松の樹の上から話しかけた
ヤナギ	田園の憂鬱	45	楊	彼はその序にあの渠の上へ冠さっている猫楊の枝ぶりを繕うても見た。
マツ	田園の憂鬱	45	松	あの松と桜とにああまで執念深く絡みついて居た藤蔓は、
サクラ	田園の憂鬱	45	桜	あの松と桜とにああまで執念深く絡みついて居た藤蔓は、
マツ	田園の憂鬱	45	松	松の樹の上で植木屋が切り虐(さいな)む太い藤蔓を、軒の下にしやがんで見上げて居た。
バラ	田園の憂鬱	46	薔薇	薔薇のことは忘れられた
バラ	田園の憂鬱	62	薔薇	それらの薔薇の木のことは
バラ	田園の憂鬱	62	薔薇	日かげの薔薇ではない
バラ	田園の憂鬱	62	薔薇	日かげの薔薇の木は
バラ	田園の憂鬱	63	薔薇	薔薇の花
バラ	田園の憂鬱	63	薔薇	薔薇ならば花開かん
サクラ	田園の憂鬱	63	山桜	花びらは山桜のそれよりももつと小さかつた。
バラ	田園の憂鬱	63	薔薇	やはり薔薇特有の
バラ	田園の憂鬱	64	薔薇	小さな薔薇は急にぼやけて
バラ	田園の憂鬱	76	薔薇	あの薔薇の木の生活だ
バラ	田園の憂鬱	76	薔薇	彼は再び薔薇のことを考えた
バラ	田園の憂鬱	76	薔薇	日かげの薔薇の憂悶を
バラ	田園の憂鬱	77	薔薇	薔薇といえば
バラ	田園の憂鬱	77	薔薇	その薔薇は
マツ	田園の憂鬱	86	松	庭の松の枝と桜の枝とは互に両方から突き出して交り合つて、
サクラ	田園の憂鬱	86	桜	桜の枝とは互に両方から突き出して交り合つて、
スギ	田園の憂鬱	88	杉	杉か
ヒノキ	田園の憂鬱	88	檜	檜か何かの
カキ	田園の憂鬱	103	柿	柿の樹の幹のかげから、追々に刈られたからである。
クワ	田園の憂鬱	106	桑	お桑が薪を盗みに来た
カキ	田園の憂鬱	106	柿	ひょくり柿の幹から現はれた人影としてのお桑が、彼の心に残った。
ヤナギ	田園の憂鬱	119	楊	渠の土手にある猫楊から剪り落したその太い枝が、今でも、その渠のなかに流れ去らずに沈んで居て、
ヤナギ	田園の憂鬱	119	楊	今まで猫楊の枝の笧(しがらみ)にからんで居た木の葉やら、紙片やら、藁くづやら、女の髪の毛やらの流れて行く間に雑つて、
ヤナギ	田園の憂鬱	124	柳	柳であろう街樹の並木がある。しんとした、その癖何処にとも言へない騒がしさを湛へて居ることは、その明るい窓から感じられる
スギ	田園の憂鬱	134	杉	黒い杉林のなかで
スギ	田園の憂鬱	134	杉	大きな杉の林があって
スギ	田園の憂鬱	134	杉	かさなった杉の幹のごく少しの
スギ	田園の憂鬱	134	杉	そうして杉の森に特有の
サルスベリ	田園の憂鬱	136	百日紅	百合と百日紅とが咲いていた
サザンカ	田園の憂鬱	137	山茶花	ぼやけた山茶花の枝ぶりと
バラ	田園の憂鬱	153	薔薇	薔薇の葉をこぼれた露は転びながら輝いて蜘蛛の網にかかると、手にはとる術もない、
バラ	田園の憂鬱	153	薔薇	咲かなくなっていた薔薇が
カキ	田園の憂鬱	153	柿	その柿の枝には別の名も知らぬ白い顔の小鳥も居た。
カキ	田園の憂鬱	153	柿	光を透して紫の羅のように柿の枝にまつわった
バラ	田園の憂鬱	154	薔薇	或る薔薇の莟の事を思い出した
バラ	田園の憂鬱	158	薔薇	薔薇の刺で突いたのであろう
バラ	田園の憂鬱	161	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	162	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	163	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
カキ	田園の憂鬱	163	柿	柿の病葉(わくらば)が一枚、ひらひらと舞ひ落ちて、ぼつりとそこに浮ぶ。
バラ	田園の憂鬱	163	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	164	薔薇	薔薇の叢には
バラ	田園の憂鬱	165	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	165	薔薇	その薔薇は
バラ	田園の憂鬱	165	薔薇	蝕いの薔薇は煙がっている
バラ	田園の憂鬱	165	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	166	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
バラ	田園の憂鬱	166	薔薇	おお、薔薇、汝病めり
ツバキ	田園の憂鬱	172	椿	椿の葉々と、
シイ	田園の憂鬱	172	椎の木	おぐらい椎の木蔭と
ミカン	田園の憂鬱	172	蜜柑	蜜柑畑と