川はつねに蕩々と流れているわけではなく、ときには急 流になり、ときには大きなカーブを描く。
こうしたとき、 筏を操る梶棒が必要になる。
梶棒一本を頼りに筏を自在 に操り目的地へと向かう乗り師の姿は勇壮華麗このうえ ない。
梶棒について少しふれてみょう。
末口7、8センチの4メートル材の本のほうを切りと って取り付け台にし、残りを梶棒にする。
梶棒の末部 (握る部分)は削って握りやすく仕上げ、そして図のよ うに筏の先端、先床(さきとこ)に取りつける。
握りの高さ が腰あたりにくるのがもっともよい。
ふつう乗り師は竿で梶をとるが、急流やカーブにさし かかると梶棒で操作する。
とくに、急流から淵にさしか かる個所、私たちは落ち込みとよんでいたが、そこで梶 棒は重要な働きをなす。
というのは、落ち込みのとき先 床が波をすくって川底に入りこむおそれがあり、そうな ると二番床、三番床、すなわち後続の筏が突出して川底 や岩に衝突するからだ。
これを防ぐため落ち込みのさい 乗り師は先床が浮くように梶棒を押さえ込む必要がある。