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管理されぬ人工林

・朝日新聞 2010/12/9

2006年7月の集中豪雨は、人口約1500人の長野県岡谷市花岡区で発生した。この土石流災害は、森林ごと崩れ、死者7人を出した。崩れた森林は、主に戦後に農地をつぶして植林されたカラマツの人工林であった。災害復興に当たった小口瀇明区長は「森林の手入れをしてこなかったツケだ」と言い切る。人の手で管理することが前提だったのに、長年間伐がされず放置されていたのである。間伐されない森林の樹木は、もやしのように細く、根も十分に張らないのである。このように手入れがされなくなった人工林は各地にあり、岡谷市で起こったことは他の地域でも起こりうるのである。日本は、国土面積の3分の2を森林が占め、先進国ではトップクラスの森林国。その4割、約1千万ヘクタールは主に戦後に植えられたスギやヒノキなどの人工林である。荒れ地だけでなく天然林までも伐採して人工林に置き換えていったが、適切に管理されているのは3分の1ほどにすぎないのである。戦後復興、高度成長に伴い、木材需要が高まり国産材の価格は高騰したが、国は成長の速いスギ・ヒノキを中心に拡大造林と呼ばれる積極的な植林を進めたが、すぐには育たず、補完的な意味で外国産木材の輸入を広げざるを得なかったのである。1948年からフィリピン産材の輸入が始まり、当時は木材を直接使うというよりも、外貨獲得の手段として輸出する合板の原料としてだったという。しかし次第に、国内需要も高まり丸太の輸入が完全自由化されたのは、東京オリンピックが開かれた1964年のことであり、結果として地形の険しい日本では木材生産のコストは高く、価格の安い外材に押され、1969年には木材自給率は5割を切ってしまったのである。人工林づくりは、育てたい樹種の苗木を1ヘクタールあたりで3千本程度に密集させて植えることから始まる。成長に応じて間伐を繰り返し、太陽光を当てていくことで50年ほどかけて最終的に数百本程度の幹の太い樹木に育てていく。こうした管理には、人手も費用もかかる。一方で山村の人口減少は進み、木材価格はピーク時の3分の1まで下がり、低迷を続けている。再植林の費用も考えると、コスト的に割に合わず、次第に見捨てられていったのである。森林をいつまでも放置していれば人命にもかかわる。長野県では土石流をきっかけに有職者らによる検討委員会を立ち上げ、2008年に「災害に強い森林づくり」の指針を公表した。地形などから災害リスクの高い森林を特定し、守るべき森と利用する森を区別して管理していく。国も2009年からの整備計画に、森林に山崩れを防ぐ機能が確保されている集落の数を増やすことを盛り込んだ。そのために森林管理に精通した自治体職員らを「フォレスター」に育てていく方針だ。しかし、行政だけでは無数にある森林に目が届かない。その担い手として地域住民が果たすべき役割も大きいようだ。災害の経験を各地で講演し続けている岡谷市の小口区長も「次の世代が憩えるような森を残したい」と、区長を辞めて森づくりに専念していくつもりだと話す。

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