従来デパートでの写真展と云えば外国で撮影したものばかりでしたが、ニュース性もない樹木の写真展は日本で最初であったのです。
しかし大丸からの企画費だけでは一千万円近くかかる制作費に不足し、協力者を求めました。
幸い大阪府農林部の後援を得ることができ、井上部長のご好意から府下の木材関係団体、会社に呼びかけて頂くことができました。
そして昭和六十年二月「四季百樹の詩写真展」は無事開催され、そのオープニングの日に中川様との出会いとなりました。
そして私の作品を非常に気に入って下さり早速大形作品をご購入下さいました。
予算さえあれば何点も欲しいと列記した作品名を見せて下さり、六月には美原町にウッドリームが完成するので、その節色々購入したいとお話し頂きました。
写真展は幸い皆様のご厚情を得で成功裡に終了し、展後お礼を申し上げるため西区の会社をお訪ねしたのですが、親しくお話をお聞きすると単なる経営者だけでなく、学識豊かで、木材業界の現状や前途にも深い造詣をお持ちの方と知りましたが、それよりも私が感じたのは温顔を通してのお人柄の温かさでした。
すべてを包み込むような温かさが印象に残りました。
それがご縁となり、数々の私の作品がウッドリームを飾らせて頂くことになり、その後新年会のご招待や、文化祭の審査員などご厚情をいただきました。
そして昨年八月「水の詩写真展」が再び大丸ミュージアムで開催されました。
今回は制作費の心配もなく中川様のご来場をお待ちしてましたが、遂に温顔に接することができなかったのです。
そして九月云日中川様逝去の報が突然届きました。
思ってもいなかっただけに、その時の驚きは今も鮮烈です。
私の人生で中川様とのお付合はたった三年余に過ぎません。
然し深さは時間を超えたものでその強い存在感は忘れ得ぬものです。
木がとりもってくれた関係でしたが、その木のぬくもりを何時も感じさせて下さった方、あまりにも早い召され方に心が痛みます。
しかし、中川様のことは私の終生から決して消えることはないでしょう。
そして更めて頂いたご厚情に心から御礼を申し上げます。