小生自身が、故中川藤一社長様と親しくお付会い賜わるようになりましたのは、経営や人材教育のことでご相談に預かるようになった昭和53年頃からであったと記憶しております。
私共がお付会いを頂いております企業経営者の方々は、一般に、経営に前向きで熱心な方が多いのでありますが、故中川社長様も例外ではなく、ご熱心な勉強家で企業家精神に溢れた素晴しい経営者でありました。
故社長様とのお付会いにおきましては、経営のアドバイザーと云うより、教わることの方が随分多かったのでありますが、氏が歩まれました経営人生におきまして、小生が、強く印象に残り、深い感銘を受けました三つのことを記してみたいと存じます。
一つは、故中川社長様は、1事業経営2業界リーダー3大学講師の三つの仕事をエネルギッシュに見事にこなされたということであります。
経営コンサルタント的立場から一般的な云い方をすれば、経営者が他の要職を兼務することは、力が分散して芳しくない、ということになる訳でありますが、氏は、われわれの常識(?)を見事破られたのであります。
それだけに心身共にご苦労も多くあられたことと察しますが、それを乗りこえ、人生を3倍に生きられたご努力に敬意を表したいと思います。
二つは、木材業を心から愛し、本業一筋に歩まれたことであります。
経営多角化と称して儲かることなら何でも手がけるといった風潮が昨今ありますが、氏は、過去の木材不況といわれた時期にも、いささかも動じることなく、じっと本流を見据えて、業界リーダーとしての道を歩まれました。
勿論、唯じっとしていただけではなく、木材業として生き抜くための新しい戦略や戦術を果敢に打たれたことは云うまでもありません。
三つは、ご子息の後継者教育に早くからご熱心に取組まれたことであります。
その点では私共に色々ご相談もありました。
昭和54年頃、「後継者育成に関する企業診断」のご依頼があり、当方からレポートを提出致しましたところ、「よく判った。
その通りやりましょう。
しかし、このレポートだけでは95点だよ。
勧告通りやって立派に後継者が育った時は改めて一〇〇点を差し上げるから。
」と云われたことが、今も強く印象に残っております。
幸い後を継がれました勝弘社長様は、立派に経営者としての道を歩んでおられることは心強い限りです。
地下に眠る故社長様が、あのレポートに一〇〇点満点をつけて下さる日が近いものと確信致しますと共に、私共も微力ながら全力をあげてご支援申し上げますことをお誓い申し上げる次第です。
どうか安らかにお眠り下さい。
合掌。