その時、私は、氏が木材需要の拡大に大変な見識と卓抜なる行動力をもって取り組まれておられることに大変驚いた記憶があります。
私が林野庁に戻ってからも、中川さんには林野庁にお出になる度に顔を出していただいておりましたが、間伐材の需要拡大、ログハウスの普及等について全国的運動を積極的に推進されている姿を拝見するにつれ、いつしか氏を敬愛する気持に変って参りました。
中川さんは、私がいつも多忙であることに恐らく気を遣われたのでしょう。
要件のみを手短かに話されると、席を温たためる間もなくお帰りになってしまうのが常でありましたが、そうした氏の様子を見るにつけ、氏のお人柄についても、いつも心うたれていたものであります。
今回、このような追悼集が発刊されることになったのも、氏の人格、識見、そして熱情と行動力が多くの発起人各位を動かしたものと推察するところであります。
また、中川さんは、木材需要の拡大といった面ばかりでなく、樹木にも大変造詣が深く、「木の名の由来」を著わされるなど、執筆活動も旺盛で、生前多数の書物を出版されましたが、あのお忙しい方がいつ文章を書かれるのかと、いつも感心しておりました。
しかし、この超人的スケジュールが自らの生命を燃焼し尽し、あまりにも早いお別れにつながったのではないかとさえ思うところであります。
中川さんが蒔かれた趣旨は、それぞれの後継者によって大きく育てられ、立派な花を咲かせられるものと期待しております。
この追悼集の発刊を通して、中川さんの遺志でもある木材需要拡大が今後一層進展することを願ってやみません。
御遺徳を偲びつつ、中川さんの御冥福を心からお祈りします。