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中川さんの「オオキニ」

日本生命保険相互会社  栗本正文
中川さんとお近ずきになったのは、昭和40年代の後半、私が阪急日生ニュータウン開発の仕事をしていた時のことです。

ニュータウンの住環境を高めるため、町角に石の彫刻をおこうということで、中川さんから彫刻家の鈴木政夫先生を紹介していただいたのが始まりです。

その後、ご一緒に鈴木先生の仕事場に行ったり、作品集の出版記念会に出たりしました。

ご自宅に招んでいただいて、鈴木先生と一緒に一献傾けながら、彫刻の話や絵の話や或は文章を書く話などで、楽しく一夜を過したこともありました。

その日、私の描いた拙い絵を居間に掛けておいて下さって嬉しいような恥しいような思いをしたことを思い出します。

後になって阪急日生ニュータウンに、中川木材の出先をつくられて、住宅建築の材木を供給していただくことになりますが、先程申し上げたようなお付合いでしたので、「商売」の話は一切と言っていい位したことがありませんでした。

お会いした時の挨拶も、「儲かりまっか」の代りに「近頃何か文化活動してますか」「これから木の本、書こうと思てますねん。

所で、絵描いてますか」というような調子でした。

所が、電話でお話しする時はちょっとだけニュアンスがちがいました。

「ニュータウンに石彫がいくらいくら入りました。

一度見に来て下さい。

」とか「PLの花火見に行きませんか。

」などの後、少し世間話をする所までは同じなのですが、どんな話の時でも最後はいつも「オオキニ」と言って、電話をお切りになりました。

礼を言っていただくような話でもなかったし、いつも中川木材から木を買っている人間でもないのですが、「いずれまた」とか「ではごめん」ではなく、「オオキニ」です。

それもわざとらしくなく、かといって口ぐせでつい出てしまっしたというようなオザナリな感じでは勿論なくて、ごく自然な心のこもった「オオキニ」でした。

中川さんは色々な役職についたり、大学の講師までされたことのある人なのに、やはり物を売る仕事をいつも大切に思っておられるのだなと電話の度に感じたものです。

感謝の気持、などと立前としてはよく言いますが、中川さんはそれを身をもって示しておられたのだと思います。

良い勉強をさせていただいたと思っております。

最後にお会いしたのはいつであったか、定かには思い出しませんが、あの時のお別れの言葉は、あの人なつこい笑顔と一緒になった「オオキニ」であったと確信しております。

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