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温顔今も鮮やかに

彫刻家  川合敏久
染織工芸家の多田吐志先生から突然のお知らせを受けたのは、昨秋、個展のための制作に明け暮れていた九月のはじめでした。

思いも掛けないことでした。

私が、梅田の駅前第2ビルにあるギャラリータナカで彫刻展を開くようになって昨年は通算十六回になりますが、前年迄は、中川さんは御夫人共々必ず毎回観に来て下さっていました。

私の生家はもともと東京の深川で木材に携わっていたのでしたが、関東大震災で潰滅し、家業を再興する機会に恵まれないまま父はサラリーマンとなって、私の出生の頃には木材業の片鱗すら家庭の中に遺ってはいなかったのですが、このような出自の由来もあって私自身は親しみを感じていたのですが、以心伝心か、中川さんは何かにつけて私の彫刻の仕事に関心を持たれ、お心を配っていて下さいました。

大木連主催の木材文化展が創設されるや、第一回展から彫刻の部門の審査員としてお招き頂き、お役を努めさせて頂きました。

ウッドリーム大阪を計画され、建設の頃は私自身の多忙もあってしばらくお目に掛らない時期がありましたが、多田先生から、中川さんは今ウッドリームに専念されていると伺い、ひそかに喜んでおりました。

やがて、木材文化展は会場を美原のウッドリーム大阪に移し、地元の方々の参加もあって盛大に再開されたのは一昨年の秋のことでした。

その折+-この新しい会場の特性を生かし、もっと多くの人々に木の仕事に親んで貰えるために、「木」を素材やモチーフとした造形美術や工芸の分野での現代的な作品を広く公募して、評価を高め、未来を先取した開かれたイベントとして展覧会を育てて行けるならば、その母体である木材業界の真の文化向上につながるのではないか+-といったことをお話ししましたら、中川さんは、いい考えだ、できる所からやってみよう、とおっしゃり、美術の世界の一人として多いに期待をもったものでした。

告別式の折、御夫人と御子息方にごあいさつする時、万感の想いがこみあげて来て言葉にならず、只、深々と頭を下げるのが精一杯でした。

教会の北側の公園に迄あふれる程の大勢の方々が別れを惜みにみえ、中川さんが生前いかに多くの方々から敬愛されていらしたかを肌に感じました。

それにつけても、一寸付合わないかといわれて夕べの一刻を御一緒させて頂いたのは一度や二度ではなかったことを思うと、如何に貴重なお時間を割いていて下さったのかとしみじみと感じます。

そして興が乗るとマイクを手に、御自分で作詞された「マイウェイ」をしっとりとした声で聞せて下さるのでした。

まことに御自身「我が道を行く」御生涯であったと、つくづく思い返されます。

どうか安らかにおやすみ下さい。

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