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木材流通

第10章 時代の流れを見る―60年代はデザインの時代、感覚の時代であり、木材業界にとっては連合の時代である

連合体をうまく組んだところが成功する

木材はこれから過剰生産、過剰流通になってくると述べましたが、いままででしたら、秋田の杉とか、青森のひばとか、木曽の桧というように、天然林を中心として有名林業地というものが形成されていて大きな影響力を与えていたのですが、これからは戦後に植栽した造林木の主伐期に一日一日と近ずいてゆき、いわゆる国産材時代が到来するにしたがって、北海道は唐松とか、内地は杉、桧とかいうように産地によって主要樹種は異なるにせよ、全国一斉に同じ時期に植えた山の木が伐り出されるようになり、しかも、林業の場合には、山で木が一日ごとにどんどん大きくなってきていて、生産を停めるというわけにはゆかない、木を伐らねばならないというわけですから、どうしても生産は過剰になり、しかもその競争場裡が一定地域に限定されずに、隣りの県、隣りの村と競争しなければならないようになることは、目に見えてきています。

 繰返すと、それだけに、産地、メーカー、流通の連合体をよほどうまく組まないと、失敗することになります。例えば、A県では、A県の県産材をA県で加工して、A県出身の建築業者に大阪で売らし、その建築にA県の県費による補助を出しています。また、B県では、県産材の物流費に対して補助を県費で出しています。このように、それぞれの県によって、県産材の流通・消費に対してとっている施策の方向が異なっています。どのような施策が的を射ていたかの勝負はおそらくこれから五~六年の間に出てくるでありましょう。

 流通を担当している者の眼からA県の施策を見ますと、これまで積極的な取り組みによりいくつかの成果を上げており、目をみはるものがあり敬服していました。けれども、県産材の大阪での売り込みを同じ県の大工さんにやらせることがいいことか悪いことかとなると、首をかしげざるを得ません。と言うのは、現在のように、A県の大工さん二〇軒ほどがまかなう程度の小量の県産材しか出てこない間はいいけれども、あと二年~三年と経過して同県の県産材が大量になってきた時に、A県の大工さんだけでまかなえるだろうか。このA県のやり方は、表面的にはよく見えるのですけれども、A県の県産材はA県の者だけが売るというのなら、「もうA県の材は扱わんとこやないか」と、そういう極論をする人も大阪の仲買さんの中にはいます。そういう心理的な動きがある中で、A県以外にB県からも、C県からも、それぞれ大量の県産材が出てくる時に「あすこの県の材はもう扱わんとこやないか」、しかも、「あすこの大工さんには、急の、突発の材の注文があっても売らんとこやないか」ということになると、A県の大工さんは、追加工事の細かい材の注文のたびに、A県から材をトラックで運んでこなければならなくなるわけです。だが、そんな細かなことが現実にできるはずがない。そうすると、大阪の小売屋さんは「あんたとこ、主な材をA県から買うのであれば、うちはよう売らんで」「あんたとこ、なにもかも構造材全部をうちから買うてくれるんなら、売りまっさ」と言うことになるわけです。はたしてそういう実態と事態の予測を踏まえて、あの施策が出されたのかどうか。県の担当者は、試行錯誤ということで、ともかく県産材売り込みの突破口を開くためにこれはいいことだと信じてやっているのでしょうから、その熱意には感心しますが、しかし、直接産地が消費地に出てきた時に、どのような影響を商流に与えるか、それから商売の中においては一般の小売屋さんの感覚というものがいかに大切であるか、そういった書物には書いていないことを考えてみる必要があるだろうと思います。

 ここで再び冒頭に述べた、「流通は川の流れと同じである」「流通には物流と商流とがある」「商流の一部分でも欠落すると、企業は破綻することになる」という出発点=原点に立って、心新たにこれからの取り組みをなさねばならないということになるでありましょう。

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