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木材流通

第10章 時代の流れを見る―60年代はデザインの時代、感覚の時代であり、木材業界にとっては連合の時代である<

時代の振子は自然物志向へと動いている

このことに関連して、一般消費者の好みは、かつて高度経済成長期には工業産物を尊ぶ風潮にあったものが、昭和五三年頃を境にして再び天然物志向がみられる、ということを指摘しておきたいと思います。

 上の図のように、時代の振子が、昭和四〇年代から「大きいことはいいことだ」「消費は美徳だ」という高度経済成長の中で、鉄・セメント・化学繊維の方へ振っていたのが、ハタと心を失っていたことに気付いて、木材とか木綿とか麻とかいった自然により近いものに振り始めたのが昭和五二~五三年頃だと思います。その頃を、天然物を好むようになった朝の八時頃だとすると、現在は朝の一〇時半頃ということになりましょうか。その間に徐々に、豊かさとは消費することでも物を買うことでもなくて、自然にいかにわれわれの生活が近寄っていけるかということ、自然のものをどれだけ身につけているかということが豊かさであるというように変わってきているのです。

 ここに紹介するグラフは、中川木材店が昭和五七年の大阪国際見本市の際に会場を訪れた人のうち1100人から得た木のイメージを問うアンケート調査結果です。自然物志向へ振子がふり始めた朝の九時半頃のものであることを認識していただいたうえで、グラフを見ていただきたいのですが、私はこのアンケート調査結果を見た時に、木材のクラフト、あるいは木材に対して一般大衆がこれほど思っているのかということに気付いて、実はびっくりしたのです。

グラフ①でご覧のように、非常に大きな特徴は、木をファッション的であると見た人が、千人の中で四四七人もいること、それから木は未来商品であると見た人が一一九人もいることで、この結果に私は頭をドヅかれたような感じを覚えたわけです。ファッション的であるとか未来商品であるというようなことは千人のうちせいぜい一〇人くらいの、一寸変わった男が書く程度だろうと思っていたのだけれど、そうではなかった。その展覧会場で私達は"節"シリーズというのをやりました。節はオリジナリティがあってパンチがあっていいものであり、節のない無地のものはプリント合板のようなものだから、節のある木材に美しさを感じて欲しいという願いを込めて、これから出てくる木材は節物が多いのだからそれのよさを一般大衆にいまから植え付けておかなければ、これからの木材需要はなくなるし高いものになるであろうという理由から"節"シリーズに取り組んだのですが、それをやり得たということも、こういうファッション的であるとか、未来商品であるとかとする一般大衆の感覚が在ったことに支えられていたのだと思います。

もう一つは、グラフ②でご覧のように、女性の方が木に対するイメージが濃いということです。ファッション的であると見た人は、女性が二六・六%であるのに対して、男性二〇・三%にしか達していない、ということ。さらにもう一つは、木材を「あたたかい」「ファッション的だ」「生きもの」「未来商品」というようにプラスイメージでイメージした人が七〇%と圧倒的に多く、「古くさい」「弱い」「高価なもの」というマイナスイメージは非常に少なかった、ということにもビックリしました。マイナスイメージの方を一つでも書いてあるというのは、例えば「木材は物凄くいいけれど値段が高いんだ」、あるいは「木材は暖かいしファッション的だし未来商品だけれど腐りやすい」というように、プラスイメージの中で一つだけマイナスイメージのところに○印をしたという人が二四・九%ある。ということは、九五%の人が木はいいものだと言っているわけです。

 先ほど書いたように、この回答は、五七年という年がそうさせたと私は思います。いまは自然物志向へさらに振子が動き、ようやく曙光を見た時期であるというふうに理解していただいたらよいと思います。これがいつまで続くのか、ということは木材業界に課せられた問題であって、折角このように大衆が木の方へ自然物へと近ずいてきているのですから、それに応えてもっと木のことを知って貰う機会を作らなければならないし、「材木店というのは確かに木を売っている店なんだろうけど、表口の方に全部木を置いていて、入口がどこにあるか分からん」「いつもあいているわけではないし、そんな所へはよう入って行かん」などと一般大衆から言われるようでは駄目で、一般大衆が何時でも店に入って行けるようにしなければならない。

 第三章でもふれたように、木材業者は統計の上で小売の範疇に入らずに全部問屋の範疇に入っています。われわれが小売業と言い、仲買さんと言っている業者は、統計上は全部問屋に入っています。と言うことは、一般大衆を寄せつけない店構えをしているということでもあります。東京でも、大阪でも、名古屋でもそうでしょうが、小売業の二〇~三〇%は、工務店に材木を売るけれども、一般大衆にも材木を売るわけです。七〇~八〇%は工務店、大工にだけ売っていれば良いと思っています。さらに一般大衆に近ずこうとするならば、柱や板だけでなく、もっと一般大衆が欲しがっている丸太の切れっ端だとかを置くことが必要でしょう。「丸太の切ったものが欲しい」という人は物凄く多い。けれど、「それはどこへ行ったら買えるんかわからん」と言う。スーパーへ行っても売っていないし、日曜大工店へ行ってもないし、もち論材木屋さんにもない、と言うのです。「なら、私のとこへ来たら、幾らでもありまっせ」と言ったら、「しかし、中川さんのとこにあるちゅうのは、どこでも分からんやないか」と言われた時期が、少し前までありました。最近は、スーパーでも丸太の切れ端を売っているというように変わってきましたけれど、こうした時代の流れの中で、小売業の店をもっと一般大衆に開放することが大切だと思います。

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