規格の統一、数量のまとめ、納期の確実、長期契約の実行ということが行われなければ、現在の流通には乗らないことを、国産材関係業者は知らなくてはなりません。木材流通全般について考えるならば、かつての国産材の流通パイプが長く、細かったのは、国産材の供給と需要の入口と出口が小口であったことからきているので止むを得ないことでしたが、その後、外材が全木材供給量の五〇%以上のシェアを占めるようになった昭和四〇年頃から、急速に流通パイプは短く、太くなりだしたことは、第四章で見たとおりです。今後、国産材(とくに杉、桧、落葉松)が外材(とくに米栂、米松)にとって変わろうとしても、需要サイド及び木材流通分野は変化することなく、いままでどおりの太い、短いパイプを望み、実行をせまってくるわけですから、国産材供給側もこれに合わせていかなければ、流通の波に乗ってゆけないのです。
現在は、国産材の流通機構は、その流通量に応じた小さなものになっています。しかし、もうすぐそこに大量の国産材が自分の出番を今や遅しと待ち構えているのです。とすれば、現在の流通の小川を改修して大河にするための河川改修を早急にしなければならないでしょう。堤を作り、ダムを作らなければ、水はうまく流れません。大海の需要者まで流れつかなければ、その木材の価値は消滅してしまうのです。
それでは、堤とはなんなのか、ダムとはなんなのか。 堤やダムはおのずと川の流量、山の高さ、海までの距離、高低、雨量、付近の住民の有無などによって異なるように、木材の流れもその地域の出材量、消費地までの遠近、その地域の人々の考え方、リーダーの有無などによって、その手順なり、方法も違ってきますが、少なくともどこかで太いパイプに変える手だてがなされなければならない。これがダムです。素材でまとめるか、製品でまとめるか、現物でまとめるかは、それぞれの地域性によります。それを早く整備し、実行に移すことができた地域が、ほんとうの整備された銘柄産地といえるのではないでしょうか。ダムを貯めて、太くしたパイプをどこへ引っ張ってゆくか。どこの誰を通じて売却して行くかを考えることが堤防作りなのです。
昔の高名な木材産地だからと言って、決してこれからの木材産地とはなり得ません。山に立派な木がどれだけ沢山生育していても、流通に乗らない地域の木材は宝の持ちぐされなのです。国産材の関係者は、山の木の生長、保育を考えるのと同時に、新しく国産杉、桧、落葉松のための河川改修を早目にしなければならないのです。 ついでながら言うと、地域林業とか産地銘柄化はいかにすればよいかということが全国いたるところで論議され、花盛りという感があります。その中で、産地銘柄化とは製品価格を安くすることである、と書かれたものを見ることがあります。その意味は、原価を引き下げることが大事であるということでしょうが、根本的な考え方として、私は銘柄化とは、いかにすれば高く売ることができるかを考えることであると思います。恒久的に他地域よりも高価に売ることができたら、その地域は産地銘柄化が完成した地域と考えてよいのではないでしょうか。
従来のように節のないものだけが優良材ではないわけです。市場価格のあるものが優良材であるというような考え方にならなければいけない。松阪あたりでは、すでに人工乾燥をして乾燥材の柱を売りに出そうという動きがありますが、これらも「市場価格を上げたものが優良材である、それは並材であっても優良材である」という考え方のあらわれだということです。