では、販売面をどうするのか、ということになりますが、これからの国産材時代には、限られた寸法の木材のみが大量に出てくるところに特徴があります。現在であれば、戦後植林した木の主伐木は、胸高直径一〇~二〇cmぐらいの程度のものです。用材になれば長さ四m、末口一〇~一六cmぐらいまでといったところが大部分を占めています。今後五年間、桜前線のように九州から上がり始めて四国・中国・近畿と移っていくでしょうが、そのうちには、三m、四mの末口一〇~一六cmぐらいの、九cm角、一〇cm角、一〇・五cm角のとれる材ばかりが大量に出てくる時代に入ってくるのです。昭和三五年以前のように末口の細い小丸太から三〇cm以上の大径木丸太まで平均して出てくるまでには日時がかかります。と言うことは、柱角ばかりが出てきて板がない。根太および垂木の九丁取りのできる材がないので四丁取りしかできない。雛人形の天神さんの太刀のような大曲がりの製品ばかりでは使用が難しい、という問題にぶつかります。
過去を振り返ってみると、昭和三〇年代末までの間、国産材の柱も板も相対的に少なくなっていった段階で、柱は米栂で埋められ、板は合板で埋められ、垂木はソ連材で埋められてきました。今度は、柱は再び米栂と国産材との競争になってきます。では、合板によって埋められた板については、何によって取り戻すかと言うと、集成の技術が進歩してきたのですから、柱にならない曲がり材であるとか、柱にしたのでは歩止りが悪いやや太いものとかによって板を作ってゆくことが現実的な方向でありましょう。
柱ばかりが出てきて板になる木材がないという条件の中で、どのようにして板を作るかと言うと、幅はぎ板が一番いいのではないでしょうか。幅はぎ板によって、いままで最も侵食されていたラワン合板の九mm、一二mmの分野を取り戻すことになる。幅はぎ板と現在野地板に使われているラワン合板と比べてみますと、大工さんが作業中にすべらない、三尺×六尺のような大きさではなく一尺×六尺なので、屋根の上での作業に風にあおられるような危険性がない――といった特徴があげられ、使いやすさという点からも製品の性質のよさという点からも、幅はぎ板の方に軍配が上がると思います。問題は価格で、いまは合板の値段が一寸下がったら合板が勝つ、合板が一枚五〇円上がったら幅はぎ板が勝つという微妙な段階になっていますが、やや遠い将来までを展望してみると、合板の原木価格はやや強含みで上昇してゆくのに対して、国産材の原木価格は大量に出材してくるわけですから安定し、相対的に安くなる可能性を秘めています。とすると、軍配は明らかに国内産の幅はぎ板の側に上がるのではないでしょうか。