さて、いま間伐材問題を中心に考えてみましたが、すでに間伐材問題はそれだけで切りはなされてあるわけではなく、国産材の問題のなかに間伐材の問題があるというように考えてゆくことが、重要です。四~五年前までは、間伐材の問題だけを、それとして論議しておればよかったのですけれども、現時点では、国産材の中にある間伐材という目で考えてゆかなければならない。 と言うのは、すでに九州では戦後の植林木の主伐が始まっているわけですから、あまり間伐材、間伐材ということが先に立ってしまうと、間伐材対策が遅れたように主伐期を迎える国産材対策全体が遅れてしまうおそれがあるからです。いまから間伐材、そして若干径の太い材として出てくる主伐材との両方を考えながら、対策を講じてゆかなければならないと考えられます。
その場合に、国産材の供給量が増加するからと言って、外材の供給量がたちまち減ってゆくものではないということを、再確認しておかねばなりません。一〇年~一五年前には、木材業界の大半の人は、当時アメリカで木材輸出禁止の法案が国会へ何回も提出されていた状況があったことも原因して、もうすぐ米材輸入はストップしてしまうのではないかとか、ソ連材は過熟林が多くしかも中から腐っているから、やがてなくなってしまうであろうとか、あるいはフィリピンのラワン材はなくなってきているので、南洋材の輸入も激減するであろうとかいう推測が流されていたために、しばらく辛棒していたら、国産材は物凄く貴重品となり高騰するに違いない、とひそかに考えていた、そんな時代があったわけです。しかし、その後、世界の森林資源に関する統計調査が進み、アメリカの森林も伐採量より成長量が上回っているとか、カナダの森林も伐採量より成長量が上回っているとか、あるいはソ連材をみてもシベリアの第二鉄道敷設によってその周辺に無尽蔵と言えるほどの森林の蓄積があるのだとか、そういうことが明らかになって、日本を取りまく環境は、広葉樹に関しては過少物資であるけれども、針葉樹については明らかに過剰物資であるということはハッキリしてきたと思います。 そのように針葉樹については過剰物資であることが間違いないとすると、国産材と外材との競争関係は、今後とも続くと考えなければならない。すると、根本的には、国産材が外材と価格面で勝てるかどうかが問題になり続けます。
すでに第六章で述べたように、米材について見ると、米材は規格が統一されているとか、大量に揃うとか、長期的な契約ができるとかいったいい面があるかわりに、短いものは高いとか、全国一率に同じものが入っているとか、あるいは日本の景気に関係なく価格が上下するとかいった悪い面ももっています。そうした米材のいい面と悪い面双方を理解したうえで、同時に国産材のいい面と悪い面との両面を理解した上で、価格面で外材と本格的に競争のできる力を国産材につけることが必要です。価格面で外材と競争のできる力を国産材につけねばならないということは、みんな観念的には分かっているのですが、では伐採から流通にいたるまでにおいて、具体的にどういうことをなし、どういうシステムを作らねばならないのか。それを官民力を合わせて真剣に考え、外材に勝てるシステムを実際に作り出さなければならないのでしょう。 そこで、私なりに、山の方から流通に至る各段階で、具体的にどういうことが課題になるのかを考えてみることにしましょう。